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研究報告 「気候変動と保険−国際議論への貢献」の発表について
 世界の主要保険会社の経営者(会長、社長、CEO)で構成されるジュネーブ協会(本部:スイス・ジュネーブ 会長:ニコラス・フォン・ボンハルド Munich Re 会長)は、7月2日にロンドン・ロイズ本社で記者会見を開催し、「気候変動と保険」に関する研究報告書を公表いたしました。
 記者会見には、研究プロジェクトチームの共同議長を務めた石原邦夫副会長(東京海上日動火災保険会長)、マイケル・バット氏(AXIS Capital会長)が出席し、また、気候変動リスクに対して保険業界が果たすべき役割について、ジュネーブ協会がまとめた保険業界初の宣言文「京都宣言」を研究報告書とあわせて公表いたしました。
1.研究報告書の要旨
(1)世界経済の持続的発展に関する潜在的脅威
気候変動への対策を怠れば、食料生産に必要な水の枯渇から熱帯性暴風雨の強度増大に至るまで、世界経済の持続的発展に重大な影響を与える可能性がある。とりわけ新興国は多くのリスクに晒されており、社会不安や民族間紛争のリスクに直面している。
気候変動緩和策の費用は、世界のGDPの最大4%と推定される。緩和策は国家間で共有することができるため、エネルギー効率の改善や低炭素技術の導入により、費用削減に成功 している例もある。緩和策に対するインセンティブとしては、税制優遇措置や排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード)なども考えられる。
新興国においては気候変動リスクに対して脆弱であるケースが多く、これは主として沿岸地域に人口が集中していることなどの地理的な問題や、経済活動が一極に集中していることが要因となっている。また、新興国の経済が、気候の影響を受けやすい生産物に大きく依存していることも要因として挙げられる。

(2)保険業界による気候変動の緩和および適応への支援策
保険業界は、低炭素経済への移行を積極的に推進しており、実効性を伴う形で支援することができる。例えば、エネルギー効率の高い技術の開発や運用を奨励する一方で、炭素排出を抑制する支援などが挙げられる。保険業界は保険金支払いやリスクの評価、資産管理に関する専門的な知識の提供を通じて、お客様、株主、さらには広く社会に支援策を提供していく。
現在、既に保険業界は気候変動リスクに対応する具体的なアプローチを行なっている。
科学的根拠のある損害モデルや方法論に基づいてリスクを適切に反映した料率設定が基本となるが、保険カバー範囲の調整、免責金額の設定、保険金支払い手続きの改善、再保険の手配、リスクを資本市場へ移転する保険リンク証券の開発、建築基準および洪水防御策の改善における官民一体となった活動、などの対策が挙げられる。温室効果ガス排出量の緩和と気候変動への適応の観点から、新興国でのマイクロ・インシュアランス・スキームの開発といった、新しい取り組みも進めている。さらに機関投資家として、気候変動による物理的影響に加え、関連する規制の導入により生じる、特定分野における新たなリスクと機会を考慮した投資判断を行なっている。

(3)協力して実施されるべき緩和と適応戦略
気候変動が与える経済的、社会的影響は計り知れない。そのため、政策立案者による強力なインセンティブに支えられた、温室効果ガス排出量を削減するための緊急かつ協調的な緩和策が必要である。しかしながら、緩和措置を実施したとしても、気候変動自体を止めることは困難であり、今後数十年間に亘って、気候変動リスクを一定程度覚悟しなければならない。したがって、緩和への取り組みを各国の協調による適応策で補うことで、気候変動がもたらす悪影響を最小限に抑え、リスクに晒されている人々を守る必要がある。

(4)緩和と適応の実施に伴う2つの難題
保険業界ならびに社会は保険金支払い額の増加につながる2つの難題に直面している。
1つ目は、経済成長、沿岸地域における人口密度の増加と富の集中といった社会的経済構造の変化であり、2つ目は、天候パターンの変化である。
これらの難題に直面したことは、変革の機会が訪れたとの見方もできる。保険金支払い額が増加している背景として、気候変動以前に、もともと社会に内在する要因があり、総合的なリスク管理とリスク低減策の実行が一層求められる。リスク低減に向けた取り組みを効果的に実施すれば、保険カバーの調達もしやすくなる。また、天候関連リスクによる災害発生の頻度や深刻度が高まっている地域や領域に対しては、保険を用いた解決策を開発する必要性が生じることから、それに応えるニッチプレイヤーの台頭を促すことが期待される。

(5)政府との緊密な協力関係を構築する必要性の高まり
保険業界は気候変動問題に取り組むにあたり、政府とのより緊密な協力関係を積極的に構築していく。実効性のある緩和・適応戦略には、政策立案者による適切なインセンティブの導入が必要である。緩和および適応面での課題が解決されなければ、保険料はさらに高額になるか、あるいは保険カバーの調達自体が困難とさえなる可能性がある。保険業界は、適切な規制の枠組みに基づいた、巨大自然災害ボンド、貧困層を対象としたマイクロ・インシュアランス、環境を意識した保険金支払い手続きなどの施策を実施することで、政府を積極的に支援していく。

<「研究報告書」(全文)につきましては、以下のリンクをご参照ください。>
http://www.genevaassociation.org/PDF/Geneva_Reports/Geneva_report[2].pdf


2.ジュネーブ協会の「京都宣言」について
研究報告をもとに、ジュネーブ協会の会員である保険会社の経営者は、気候変動とそれがもたらす影響を確認した上で、保険業界初の宣言文「京都宣言」をまとめ、先に京都で開催されたジュネーブ協会の年次総会(2009年5月27日〜30日)で採択いたしました。
「京都宣言」では、研究の推進、革新的な保険商品の設計、低炭素エネルギープロジェクトへの投資促進といった、気候変動に対する緩和および適応活動を通じてお客様をサポートするという、保険業界としての責任が再確認されています。
さらに、建築基準の改善、気候変動リスクに対する注意喚起、関連する研究への資金提供、といった分野においても積極的に協力することにより、政策立案者を支援していくことを宣言しています。
また、本年末に開催される国連気候変動枠組条約締約国会議(COP15)に向け、保険業界のリーダー達は、気候変動リスクに直面している国および事業に対し、保険業界が専門的なサービスを提供できる立場にあり、包括的な適応策を実施する中で、補完的な機能を発揮できることを強調しています。


3.研究プロジェクトチーム共同議長およびジュネーブ協会事務局長のコメント
(1)石原邦夫副会長(プロジェクト共同議長、東京海上日動火災保険会長)のコメント
「『京都宣言』の採択に際しては、世界の大手保険会社および再保険会社の経営者から、これまでにないほど多くの支持を得ることができました。この『京都宣言』は、社会が気候変動という難題に立ち向かうにあたって、保険業界が欠かせぬ推進力となることを、あらゆる関係者に対して明確に示しています。また、『京都宣言』が、気候変動の影響を直接的に受けやすい新興国の大手保険会社の経営者からの賛同を得ていることも、非常に嬉しく思っています。」

(2)マイケル・バット氏(プロジェクト共同議長、AXIS Capital 会長)のコメント
「気候変動は既に起こっており、協調的かつ有意義な緩和・適応策を必要としています。そのような状況下で、世界の保険業界のリーダー達は、持続可能な低炭素経済への移行を自分達がどのような形で支援できるのかについて、具体的にまとめた研究報告書をまとめました。」

(3)パトリック M.リートケ氏(ジュネーブ協会事務局長)のコメント
「ジュネーブ協会は、保険分野の知識と専門性を蓄積させるために、独自のプラットフォームを提供しています。それを基に、保険会社および再保険会社が、長期的な視点で経済的にも最大の脅威と位置付けられる気候変動リスクについて、協力して取り組む機会を作ってきました。ジュネーブ協会は、気候変動問題を保険業界の優先課題と位置付け、研究などの活動を通じて、保険業界と社会全体に資するよう、保険を用いた諸解決策、ならびにリスクの発見メカニズムの高度化に向け、取り組んでいきます。」


4.ご参考 (ジュネーブ協会について)
国際保険経済研究協会(「ジュネーブ協会」)は、世界の主要保険会社の経営者、約80名で構成される独立した国際組織で、本部をスイスのジュネーブに置く非営利団体です。
ジュネーブ協会は、経済の成長や社会の発展を目指し世界的に高まっている保険活動の重要性について研究を行うことを主な目的としています。また、ジュネーブ協会では、主要保険会社の経営者が意見交換や重要な戦略的課題についての国際色豊かな議論を行う場を提供しており、会員のためのフォーラムとしても機能しています。さらに、メンバー会社の財務責任者、リスク管理担当役員、首席エコノミスト、および首席広報担当役員向けの議論の場も提供しています。
以上
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