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新型コロナウイルス感染症に関する専門医へのインタビュー:濱田篤郎先生


東京医科大学病院の濱田先生に、新型コロナウイルス感染症の特長や収束までのプロセスについてお伺いしました。
取材日:2020年5月25日

新型コロナウイルス感染症の症状の特徴

今回の新型コロナウイルス感染症は、昨年の12月から中国・武漢を中心に流行が始まりました。

「コロナウイルス」には、風邪を引き起こすウイルスや、SARS・MERSといった感染症を引き起こすウイルスがありますが、今回の新型コロナウイルスはSARSのコロナウイルスと似ています。

新型コロナウイルス感染症の初期症状としては、発熱・喉の痛み・軽いせき等、風邪のような症状が見受けられます。感染者の8割程度は軽症にとどまり、そのまま治ります。一方、およそ2割の感染者は感染から4~5日経った段階で肺炎を発症します。肺炎を発症すると重症化することがあり、酸素の吸入や人工呼吸器が必要となるケースも出てきます。

インフルエンザとの違い

(季節性)インフルエンザを発症した方の致死率は0.05%程度です。これに対し、新型コロナウイルスを発症した方の致死率は2%以上であり、インフルエンザの約40倍です。いかに怖い病気であるかがわかります。

新型コロナウイルス感染症の患者が多く発生すると医療崩壊が起こり、医療機関へ行っても治療が受けられない状況となる危険性があります。イタリア・スペイン・フランス等では一時そのような状況になったものと思われます。そうすると、亡くなる方の割合が増えてしまいます。

中東を中心に広がったMERSの致死率は約30%と高いですが、ヒトからヒトへは感染しにくく、「かかりにくい病気」といえます。一方、新型コロナウイルスの怖いところは、感染力がある程度強いことです。インフルエンザは1人から2~3人へ感染しますが、新型コロナウイルスも同等の感染力を持っています。加えて、インフルエンザは発症した方でないと周囲の人に感染させませんが、新型コロナウイルスは発症する2日前から他人に感染させてしまい、かつその時期における感染力が強いことが分かってきました。新型コロナウイルスはインフルエンザに比べて感染力が強く、致死率も高い、と言えます。

マスクの着用について

マスクを着用することで、自分が既に感染していた場合に他人を感染させないことができます。自分が感染しないための予防効果もある程度はありますが、完全に予防できるわけではありません。

なぜ日本は他国と比べて感染者数が少ないのか

日本では2月末頃から「第一波」の流行が起こり、4月初旬にピークに達しましたが、5月末にはだいぶ収まり、緊急事態宣言も解除されました。日本における「第一波」の感染者は、欧米と比較するとかなり少ないです。

その理由としては、マスク着用に抵抗がない、清潔な環境が整っている、手洗いやうがいが日頃から定着している、などといった「文化的背景」があると思われます。緊急事態宣言の際などに国や自治体が決めたルールには特に罰則等を設けなくても皆が従うといった「国民性」によるものとも考えられます。また、黄色人種は感染しにくく、重篤化しにくいと言う説もあります。

流行終息までのプロセスは

やっと感染の「第一波」が終わったということではありますが、私はむしろ「流行が始まった」と思っています。最終的な終息はワクチンができるまで望めそうもありません。ワクチンが完成し、世界中で接種が終わる段階までは、おそらくこれから1年以上かかると思われます。それまでの間には、さらに3回程度「流行の危機」が訪れると考えています。

「第1の危機」としては、緊急事態宣言が解除された直後の6月頃に、流行の「残り火」のようなものを起点として再度感染が広がることが考えられます。今、アメリカの一部で流行が再燃していますが、日本でも同様のことが起こる可能性があります。 「第2の危機」は、7月くらいにあるかもしれないと予測しています。渡航制限が解除、緩和された後に、海外からの渡航客の入国により再び流行するという可能性です。ただ、第1・第2の危機は乗り越えられ、感染はそれほど大きく広がらないと思います。

「第3の危機」は、寒くなってきた11月頃、いわゆる「第二波」が到来し、第一波よりも大きな流行になる可能性です。コロナウイルスは一般的には寒い時期に流行拡大します。日本では第一波における感染者が少なく、したがってウイルスに対する免疫を持っている方もまだまだ少ないため、第二波における感染者は逆に増大すると予測できます。

ただ、あまり悲観的に考えなくても大丈夫です。第二波が始まる前に、PCR検査などの検査体制が整備され、医療機関の受入れ準備が整うでしょう。アビガンやレムデシビルといった治療薬の使用方法が確立することも期待できます。感染者が多くなっても、重症者や死亡者が増えることは免れるのではないかと思います。さらに、第二波の流行期間中にワクチンができてくれば、流行自体も終息するものと考えられます。

緊急事態宣言解除後に気をつけるべきこと

今まで皆さんが実践してきた「マスクの着用・手洗い・ 3密を避ける」などの予防策を継続して実施していただきたいです。「新しい生活様式」は永遠に続くわけではないですが、感染症の流行が終息する(※終わる)までは皆で続けることが、予測される危機を乗り越えるために重要なことだと思います。

事業者の休業要請を一気に解除するのではなく、感染リスクの低い事業者から段階的に解除するのは良いと思います。これに関しては、国や自治体がコントロールし対処すると思いますので、皆さんにはそれに応じて行動していただきたいです。

メッセージ

この新型コロナウイルス感染症は未知のウイルスによるものであり、最初に流行が拡大した段階ではあまり有効な手段が取れず、世界中で多くの方が感染してしまいました。しかし、病原体や感染症に関する様々な情報が集まってきており、有効な対応が取れるようにもなっています。皆さんにおかれては、必要な予防対策を講じながら、少し窮屈な生活が続くかもしれませんが、この流行を乗り越えていただきたいと思います。

濱田篤郎先生プロフィール

現職
東京医科大学 教授
東京医科大学病院 渡航者医療センター部長
専門
渡航医学
熱帯感染症/職業感染症
略歴
1981年 東京慈恵会医科大学 卒業
1984年〜86年 Case Western Reserve大学(米国)留学
1986年 東京慈恵会医科大学 熱帯医学教室講師
2005年 労働者健康福祉機構 海外勤務健康管理センター所長代理
2010年~ 現職
著書
「旅と病の三千年史」(文春新書)
「世界一病気に狙われている日本人」(講談社+α新書)
「歴史を変えた旅と病」(講談社+α文庫)
「新疫病流行記」(バジリコ)
「海外健康生活Q&A」(経団連出版) 等多数
7月に朝日新書から「パンデミックを生き抜く~中世ペストに学ぶ新型コロナ対策」出版予定