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カーボンニュートラル実現に向け、今あなたに求められること

「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガスの実質的な排出量がゼロとなった状態を指します。

二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが、地球温暖化の主な原因であることは皆さんもご存知の通りです。ただし、完全に温室効果ガスをゼロにまで減らすことは困難であるため、基本的には排出した分を吸収・除去して「差し引きゼロ」を目指した状態をカーボンニュートラルと定義します。

日本は2050年のカーボンニュートラル実現を目指しており、政府も企業も目標達成へ向けて舵を切ってきました。そしてこれは、私たち個人も向き合うべき問題なのです。

日本における、2050年カーボンニュートラルへの課題

日本が排出する温室効果ガスの約9割は二酸化炭素であり、二酸化炭素の約4割は電力部門から、約6割は産業・運輸・家庭といった非電力部門から生じています。

【第123-1-2】日本の部門別のCO2排出量(2019年度)
CO2排出量11.1億トン、エネルギー転換4.3億トン(エネルギー転換部門の9割が電力からの排出で残りは製油所等)、産業部門2.8億トン、業務部門0.6億トン、運輸部門2.0億トン、家庭部門0.5億トン、工業プロセス0.5億トン、その他0.3億トン

出典:国立環境研究所「温室効果ガスイベントリオフィス」より経済産業省作成

電力部門の課題

電力部門による二酸化炭素排出の多くは、火力発電によるものです。2020年時点では、化石燃料を用いた火力発電が全体の74.9%を占めており、とくに排出量の多い燃料である石炭の割合はLNG(液化天然ガス)に次いで27.6%となっています。

石炭27.6%、LNG35.4%、石油2.0%、その他火力9.9%、原子力4.3%、水力7.9%、太陽光8.5%、風力0.9%、地熱0.3%、バイオマス3.2%

出典:環境エネルギー政策研究所 「2020年の自然エネルギー電力の割合(暦年速報)」より作成

ただし「発電に二酸化炭素をともなう」という部分にのみ着目して、単に火力発電を減らすだけでは問題解決につながりません。

カーボンニュートラル実現のためには、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーによる電力供給の拡大が必須であるものの、これらの不安定な発電方式を支えるため現状では火力発電の存在が不可欠なのです。そのため、再生可能エネルギーの主力電源化とともに、火力発電に代わる安定的な代替技術の開発が課題となっています。

非電力部門の課題

非電力部門の二酸化炭素排出量は、2000年前後をピークとして減少傾向にあります。

【第123-1-7】非電力部門のCO2排出量の推移(2019年度)
単位:CO2 億トン 非エネルギー起源、家庭部門、運輸部門、業務他、産業部門があり、年毎に1990年8.1億トン、1995年8.8億トン、2000年8.9億トン、2005年8.8億トン、2010年8億トン、2015年7.6億トン、2019年6.8億トン

出典:国立環境研究所「温室効果ガスイベントリオフィス」より経済産業省作成

ただし、産業分野に含まれる鋼鉄・化学などいくつかの領域では、二酸化炭素の抑制が困難とされています。各分野には製造過程に二酸化炭素の発生をともなう生成物があり、現状これらの電化(電力利用で対応すること)はできないのです。

産業分野 二酸化炭素の主な排出理由
鋼鉄 鉄の精製時、還元反応により大量の二酸化炭素が発生する
化学 基礎化学品の製造時、原料を熱分解するために化石燃料を燃焼させる
セメント 主原料となる石灰石の焼成時、脱炭酸反応により二酸化炭素が生じる
パルプ・紙・紙加工品 紙をつくるためパルプ内にある水を蒸発させる際、化石燃料を燃焼させる

出典:資源エネルギー庁 「2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と取組」より作成

日本政府が掲げた、温室効果ガス大幅削減の方向性

日本政府は低炭素社会を実現させるために「大幅な社会変革が必要不可欠である」として、基本的な3つの方向性を掲げています。

温室効果ガス削減の方向性 取り組みの一例
エネルギー消費量の削減 エネルギー需要の削減や機器のエネルギー効率改善
エネルギーの低炭素化 再生可能エネルギーなど低炭素電源の利用拡大 再生可能エネルギーなど低炭素電源の利用拡大
利用エネルギーの転換 ガソリン車からEVへの移行、暖房や給油のヒートポンプ利用

参考:中央環境審議会地球環境部会「長期低炭素ビジョン」

たとえば、電力部門では化石燃料の利用を抑えて、再エネ・原子力などを用いた非化石電源の普及。非電力部門においては、電化や水素・合成燃料・バイオマスの利用による脱炭素化を主軸として、温室効果ガス削減が推し進められる見込みです。

2019年に10.3億トン 非電力では民生1.1億トン、産業2.8億トン、運輸2.0億トン。電力では4.4億トン。2030年にはGHG全体で2013年年度比マイナス46% ※更に50%の高みに向け挑戦を続ける。2050年には排出+吸収で実質0トン(マイナス100%)を目標とする。非電力では電化、水素(水素還元製鉄、FCV など)、メタネーション、合成燃料、バイオマス。電力では非化石電源、再エネ、原子力、火力+CCUS/カーボンリサイクル等の最大活用。炭素除去では植林、DACCS など ※数値はエネルギー起源CO2

出典:経済産業省「エネルギー基本計画の検討状況について」より作成

カーボンニュートラルに向けて、今あなたにできること

感染症流行による自粛のためか、直近では減少傾向にあった家庭部門の二酸化炭素排出量は2020年に上昇へ転じました。CO2排出実態統計調査によると、2020年度における世帯当たりの二酸化炭素排出量は年間2.91トンとのこと。これは前年度を約7%上回る数字です。

世帯当たり年間エネルギー種別 CO2排出量の推移(全国)
t-CO2/世帯・年 H29(2017)3.20トン(灯油0.43トン、LPガス0.18トン、都市ガス0.43トン、電気2.16トン)、H30(2018)2.90トン(灯油0.37トン、LPガス0.17トン、都市ガス0.40トン、電気1.95トン)、H31/R1(2019)2.72トン(灯油0.36トン、LPガス0.16トン、都市ガス0.40トン、電気1.80トン)、R2(2020)2.91トン(灯油0.39トン、LPガス0.17トン、都市ガス0.44トン、電気1.91トン)

出典:環境省「令和2年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 結果の概要(速報値)」より作成

なお、自家用乗用車による排出量は家庭部門に含まれず、自動車・航空・海運・鉄道から構成される運輸部門に分類されます。2019年度のデータによれば、運輸部門の排出量のうち45.9%(自動車全体の86.1%)は自家用乗用車から生じた二酸化炭素です。

運輸部門における二酸化炭素排出量
CO2総排出量11億800万トン(2019年度)、運輸部門(自動車、船舶等)2億600万トン(18.6%)、業務その他部門1億9,300万トン(17.4%)、家庭部門1億5,900万トン(14.4%)、産業部門3億8,400万トン(34.7%)、その他1億6,500万トン(14.9%)
  • 端数処理の関係上、合計の数値が一致しない場合がある。
  • 電気事業者の発電に伴う排出量、熱供給事業者の熱発生に伴う排出量は、それぞれの消費量に応じて最終需要部門に配分。
  • 温室効果ガスインベントリオフィス「日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2019年度)確報値」より国交省環境政策課作成。
  • 二輪車は2015年度確報値までは「業務その他部門」に含まれていたが、2016年度確報値から独立項目として運輸部門に算定。

出典:国土交通省 「運輸部門における二酸化炭素排出量」より作成

日本全体の二酸化炭素排出量における16%を占めるため、こちらも集中的に改善へ取り組むべき領域だといえます。

家庭部門や運輸部門における二酸化炭素排出量を減らすため、私たちにはどのような対応が求められるのでしょうか。政府が掲げる3つの方向性「エネルギー消費量の削減・エネルギーの低炭素化・利用エネルギーの転換」をもとに、個人の取り組みへ当てはめて考えてみましょう。

(1) エネルギー消費量の削減「ZEHの導入」

世帯当たりの二酸化炭素排出量における主な排出理由は、全体の65.6%を占める「電気の使用」です。その電気を自ら生み出し、さらに電力消費量を抑える構造となった住宅をZEH(ゼッチ)といいます。

簡単に説明すると、つぎの条件を満たした省エネかつエネルギーの自給自足を可能とした住宅がZEHです。

  • 太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入している
  • 断熱材・断熱窓などの使用により断熱性能を高めている
  • HEMS・省エネ家電などにより20%以上の省エネルギーを実現している

ZEHに該当する住宅を新築・購入したり、改修したりする人を対象として補助金が設けられているため、マイホームの所有やリフォームを検討している場合には有力な選択肢となります。

(2) エネルギーの低炭素化「再生可能エネルギー設備の導入」

ZEHの導入は、住宅の新築・購入・改修をともなう取り組みであるため、費用やタイミングによっては実現が難しいケースも想定されます。一方、再生可能エネルギー設備のうち、とくに太陽光発電設備の設置はZEH導入と比較して容易に実現できます。

2020年に設置された住宅用太陽光発電の場合、設備費・工事費を含む平均的なシステム費用はつぎの通りです。

住宅用太陽光発電のシステム費用
全体の平均 29.6万円/kW
新築の平均 28.6万円/kW
既築の平均 32.7万円/kW

参考:調達価格等算定委員会「令和3年度以降の調達価格等に関する意見」

住宅の屋根に設置する太陽光発電設備が、一般的に4~5kW程度の規模であることを考慮すると、設備導入にかかる費用は120万~150万円前後。平均的な1年あたりの運転維持費が約3,490円/kWであるため、ランニングコストは4~5kW換算で年間1~2万円程度となる計算です。

太陽光発電設備の導入後は発電した電力を自家消費したり、固定価格買取制度(FIT制度)の認定を受けて電力会社へ一定の価格で売電したり、エネルギーの低炭素化につながる運用ができます。

③利用エネルギーの転換「EV(電気自動車)の導入」

運輸部門による二酸化炭素の半分程度は自家用乗用車が担っているため、ZEHや再エネ設備導入による家庭部門の排出削減と同様、ガソリン車からEVへの乗り換えは個人が実践できる取り組みとして影響度の大きい選択肢だといえます。

インフラの整備状況に対して不安を抱く意見もありますが、日本の省庁が策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置し、遅くとも2030年までにガソリン車と同等の利便性を実現すると目標を掲げています。また同戦略では、2035年までに乗用車新車販売のすべてを電動車にできるよう措置を講じると公表しました。

政府により補助金も設けられているため、自家用乗用車の買い替えを検討している場合には、EV導入もカーボンニュートラル実現に向けた有力なアプローチとなります。

おわりに

カーボンニュートラルの実現は、私たち人類を含むすべての生物や地球を危険にさらす「地球温暖化」を食い止めるうえで急務です。ここまでにご説明した通り、家庭・自家用乗用車から排出される二酸化炭素は決して少なくないため、カーボンニュートラルは政府や企業の努力だけでは達成できません。

ZEHや再エネ設備の導入、ガソリン車からEVへの乗り換えなど、ライフイベントの節目に選択肢としてあらわれる「より地球に優しい行動」の実践を頭の片隅に置いていただければ幸いです。

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