To Be a Good Company

物流業界の脱炭素動向

物流業界では長年人手不足問題が取り上げられていますが、近年では脱炭素の観点からも遅れが見え始め、その解決に向けた動きが加速しています。

脱炭素とは

脱炭素とは、地球温暖化の原因となっている代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出量を「実質ゼロ」にする取り組みのことです。
2015年にパリ協定が採択されて以降、「2050年カーボンニュートラル」という長期目標が掲げられ、脱炭素社会の実現に向けて世界的に取り組まれています。日本国内においても業種にかかわらずよく耳にするキーワードとなっていますが、今回は重要度が高まっている物流業界における脱炭素動向に着目していきます。

物流業界の現状

物流業界では長年人手不足問題が取り上げられていますが、近年では脱炭素の観点からも遅れが見え始め、その解決に向けた動きが加速しています。
はじめに、日本の部門別二酸化炭素排出量のうち、自家用車・営業貨物車などを含めた「運輸部門」からの排出量は1億8,500万トンで、日本全体の17.7%を占め、「産業部門(34.0%)」に次ぐCO2排出量となっています(2020年度のデータ・国土交通省)。2001年度以降徐々に減少傾向に転じているとはいえ、物流業界の脱炭素に向けた取り組みが「2050年カーボンニュートラル」の目標達成に大きく影響するといえます。
また、運輸部門のうち、特に貨物分野において二酸化炭素排出量の削減が遅れているという現状があります。これは、国内のECサイトの拡大に伴い、物流業界における多頻度小口配送化※1が進み、積載効率※2が低下していることに起因しているといえます。

  • ※1
    多頻度小口配送…少量の商品を頻繁に配送すること。必要なときに必要な量を配送できるため、多様化する消費者ニーズに対応が可能
  • ※2
    積載効率…トラックの最大積載量に対する実際に積載した貨物の重量比

参考:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html

物流業界における脱炭素に向けた取り組み

上記の課題を踏まえ、これまでの物流業界では、自社で保有するトラックから専門運送会社のトラック(営業用トラック)へ転換する、「自営転換」が推進されてきました。これにより、空荷状態でのトラック走行が徐々に解消され、大規模輸送も可能となりました。
一方、「2050年カーボンニュートラル」実現のためには、自営転換と合わせてさらに踏み込んだ取り組みが必要とされています。下記では、今後導入が推奨されている主要な取り組みをご紹介します。

(1)連結トラックの導入

1台のキャリアに2つのコンテナを輸送させることより、大規模輸送が可能となる。自営転換と同様に重要視されている。

(2)「置き配」の普及

宅配ボックス等を活用することで、受取人が在宅かどうかに左右されることなく配達が可能。再配達による二酸化炭素排出の削減が期待できる。

(3)EVトラックの導入

ガソリン車と比較して二酸化炭素の排出量を削減することができる。また、長年問題視されてきたトラックの騒音問題についても貢献できる。

脱炭素への取り組みにおける課題

前述した3つの取り組みは今後も推進されることが予想されますが、特に「(3)EVトラックの導入」については、導入における課題も残されています。例えば、トラック走行用バッテリーの充電時間や車両導入コストについては、導入を検討する企業にとって大きな負荷となってしまいます。
まず、バッテリーの充電時間については、自家用車であっても数時間(急速充電であってもおよそ30分)以上の充電時間が必要であるため、トラックの場合はさらに長時間の充電が必要となります。また、EVトラックはバッテリーの搭載によりガソリン車と比較して本体価格が高いため、運送事業者が脱炭素への取り組みとして一歩踏み出す際の大きな負担となっています。

まとめ

冒頭にもあるように、現状として、物流・運輸業界の二酸化炭素排出量は全体の17.7%を占めています。つまり、物流業界の脱炭素に向けた取り組みは、日本全体の脱炭素化に大きく影響するといえるでしょう。「2050年カーボンニュートラル」の目標達成に向けて、物流業界における脱炭素への取り組みのさらなる推進が期待されています。

GXを理解する一覧ページに戻る