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アパレル業界の脱炭素取組動向

二酸化炭素は地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの一つで、温暖化対策として排出量の削減に向けた取り組みが世界で加速しています。
衣食住の一つである衣料品の製造や流通を担うアパレル業界も、その例外ではありません。今回は、私たちの暮らしとも深い関わりをもつアパレル業界の脱炭素に関する動向について解説していきます。

アパレル業界の脱炭素化の現状

ファッション産業は、世界的に見ても環境への影響が非常に大きいといわれていますが、国内のファッション産業から排出される二酸化炭素排出量は約9700万トンで、日本の総排出量の0.8%を占めます。
具体的には、衣類の原材料調達から廃棄までのプロセスのうち、製造や輸送といったアパレル業界による排出量は全体の約47%にも上ります。続いて、利用段階が約33%、廃棄段階が約12%と、衣類に関するあらゆるプロセスで二酸化炭素が排出されています。

参考:環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務「ファッションと環境」調査結果 2020年3月株式会社日本総合研究所

アパレル業界における脱炭素に向けた取り組み

こうした背景から、経済産業省と環境省、消費者庁は2021年8月、「サステナブルファッションの推進に向けた関係省庁連携会議」を開催しました。衣類の生産・流通から廃棄までのプロセス全体で二酸化炭素を削減するには、各省庁が連携し、企業だけでなく消費者にもアクションを促す必要があるとして、制度やアクションの検討・整理に取り組んでいます。

また、民間においては、企業間で連携して持続可能なアパレル業界を目指すための「ジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)」が立ち上げられました。2022年10月現在、アダストリアやアーバンリサーチ、ユナイテッドアローズ、良品計画など50社を超える企業が加盟しています。JSFAでは、2030年に向けて「ファッションロスゼロ」「カーボンニュートラル」の双方において、会員企業はもちろん、ファッション産業全体、日本社会での目標を掲げています。

脱炭素の取り組みにおける課題

ファッション産業で排出される二酸化炭素は、原材料調達や製造などの上流のプロセスだけでなく、使用後の廃棄の段階でも大量に排出されていることが指摘されています。これは家庭から手放された衣類の多くが廃棄され、リサイクルやリユース(再利用)されていないことに原因があると考えられています。実際に、国内でリユース、リサイクル、リペア(修繕)される衣類の割合は、アルミ缶よりも低いとされているのです。

また、衣類を製造する際には、綿花の栽培時に使用される農薬などによる土壌汚染や、染色工程などにおける水質汚染、水資源の大量使用なども問題視されています。アパレル業界においては、脱炭素と同時にサステナビリティに関する課題の解決も迫られているといえます。
この課題解決に向けて生まれたのが、「サステナブルファッション」です。環境省では、サステナブルファッションを「衣服の生産から着用、廃棄に至るプロセスにおいて将来にわたり持続可能であることを目指し、生態系を含む地球環境や関わる人・社会に配慮した取り組みのこと」と定義しています。長く使える製品づくりやリペアなど、企業や消費者の具体的なアクションが推奨されています。

まとめ

アパレル業界では、衣類の原材料の調達から製造、流通といった多くのプロセスを含むことから、個人単位ではなくさまざまな関係者と協力しながら、包括的な脱炭素化の取り組みが求められているといえるでしょう。国内では、省庁や業界を横断した取り組みがスタートしたところであり、他の業界と併せて今後のアクションに期待が寄せられます。

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