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食品業界の脱炭素取組動向

脱炭素とは

脱炭素とは、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量を打ち消し合って「実質ゼロ」にすることを目指す取り組みで、「カーボンニュートラル」と呼ばれることもあります。CO2は地球温暖化を引き起こす一因であり、世界各国が温暖化対策としてCO2排出量の削減に取り組んでいます。

私たちの毎日の暮らしを支える食品業界も、気候に影響を与える温暖化と無関係ではいられません。そこで今回は、食品業界がどのような脱炭素の取り組みを行っているのかについて解説します。

食品業界の脱炭素化の現状

世界全体と日本の農林水産分野の温室効果ガス(GHG)の排出
世界の農林業由来のGHG排出量:農業・林業・その他土地利用(AFOLU)約120億t-CO2/年(23%)(2007-2016年平均) 日本の農林水産分野のGJG排出量:5,084万t-CO2(4.4%)(2020年度)

出典:農林水産省

まず、食品業界と関係の深い農林水産分野のCO2排出量をご紹介します。農林水産省によると、日本のCO2総排出量11億5,000万トン(2020年度)のうち、農林水産分野の排出量は約4.4%の5,084万トンです。これに加えて、食品の加工や流通、販売にも多くのエネルギーが使われるため、食品に関連するCO2排出量はさらに膨らむと考えられます。

また、食品業界では、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」が依然として多いことも問題視されています。食品が消費されるまでには原材料の調達や加工、包装、流通といった多くのプロセスでたくさんのエネルギーを使用していますが、食品ロスはそのエネルギーを無駄にしてしまうことに他ならないためです。

2020年度の日本の食品ロスは、年間約522万トン。これを国民一人あたりに換算すると、毎日お茶碗1杯の食品を捨てていることに等しいのです。食品業界の脱炭素を考えるとき、食品ロスも重要なテーマの一つだといえます。

参考:農林水産省

食品業界における脱炭素に向けた取り組み

こうした現状を受け、農林水産省は2021年5月、イノベーションの力によって農林水産業の生産力と持続性を向上させる「みどりの食料システム戦略」を策定しました。

具体的な取り組みとしては、営農型太陽光発電やバイオマス発電など地域の資源を使ってエネルギーを地産地消すること、食品の残渣や廃棄物をリサイクルする技術を開発することなどが挙げられました。営農型太陽光発電とは、畑などに支柱を立てて太陽光パネルを設置し、営農と発電を両立する取り組みのことで、ソーラーシェアリングとも呼ばれます。

一方で、環境省も食品ロスの削減に向けた活動を展開しています。食品リサイクルなどを推進する事業を支援したり、ドギーバッグに「mottECO(モッテコ)」という愛称をつけ、飲食店での食べ残しの持ち帰りを促進する活動を行っています。

『もっとエコ』『持って帰ろう』という意味が込められたmottECO(モッテコ)のロゴマーク

出典:環境省

さらに、民間企業においても、脱炭素の第一歩として事業活動によるCO2排出量の算定に取り組むほか、CO2削減目標を世界に向けてコミットするなど、脱炭素に向けた取り組みが活発化しています。

脱炭素の取り組みにおける課題

食品が私たちの食卓に届くまでには、農産物や水産物の生産、加工、流通、販売など多くのプロセスを経ています。こうした食品に関わるプロセス全体のことを「フードサプライチェーン」と呼びます。このフードサプライチェーンが広範囲であるという食品業界の特性から、どの工程でどれ程のCO2が排出されているのかが見えづらい、ということが課題とされてきました。

そこで、農林水産省は、2020年から「フードサプライチェーンにおける脱炭素化の実践とその可視化の在り方検討会」を開催し、専門的知見から指導・助言を受けることによって、この課題の解決に取り組んできました。検討の結果として、CO2排出量の見える化に役立つ「温室効果ガス簡易算定シート」をホームページで配布したり、CO2の削減努力をラベル化して消費者に伝えたりするなどの支援につながっています。

参考:農林水産省

まとめ

衣食住の一つを担う食品業界は、フードサプライチェーンが広いことからCO2排出量の算定に大きなハードルがあると考えられています。全国のCO2排出量の4%以上を占める食品業界ですが、近年は農林水産省や大手企業などがリーダーシップをとることにより、脱炭素に向けた動きが顕著になっています。今後もこうした取り組みに注目していきましょう。

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