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世田谷区粕谷会の取り組み

都心住宅エリアでの防災・防火活動

東京都世田谷区は、86万5,000人以上(2013年6月1日現在)の方が住む、都内でも指折りの住宅エリアです。その世田谷区に196(2012年5月現在)ある町会・自治会の中でも、区の北西部・粕谷地区にある粕谷会は、普段から防災・防火 活動を実施して災害に備えています。今回はその粕谷会(町内会)・会長の本橋俊夫氏、副会長・防火防災部長の山本忠史氏、広報・親睦部 部長の宮澤茂氏に、粕谷会における防災・減災の取り組みについてお話を伺いました。
取材日:2013年6月11日

より実践に近い形で防災・防火活動に取り組む

世田谷区粕谷会
会長
本橋 俊夫氏

世田谷区粕谷会
副会長・防火防災部長
山本 忠史氏

私たち粕谷会は、世田谷区の烏山地域・上祖師谷地区に属していて、粕谷1丁目・3丁目・4丁目の全域、粕谷2丁目と八幡山2丁目の一部に住んでいる約1,200世帯が入会しています。普段は、回覧板による行政諸機関や関係諸団体から連絡のある生活関連情報の伝達、高齢者クラブの支援、登下校の見守り活動など幅広い活動を行なっています。また近年は、東京都や世田谷区から防災に関する要請も強くなっていますが、私たちはそれ以前から、防災・防火活動に力を入れてきました。2012年度には27回の防災・防火活動を実施し、祖師谷地区の町会が合同で行った防災訓練では、約860人の住民が参加しました。

その活動内容はさまざまです。避難訓練や通報訓練、初期消火訓練や心肺蘇生訓練。ほかにも起震車で大地震を体験したり、仮設トイレを組み立てたり、炊き出しをしたり、煙中での避難や介護擁護者を連れての避難なども訓練しています。地元の消防署・警察署をはじめ、消防団や防災士会とも連携しながら、より実践に近い形で防災・防火活動に取り組んでいます。やはり、やるからには真剣にやらないと意味がありませんからね。

そうした姿勢は着実に実を結んでいます。2011年9月に、世田谷区烏山地域に属する町会・自治会が集まり、初期消火活動で効果を発揮する小型の消防ポンプ「D型ポンプ」の操法発表会が開催されたのですが、そこで粕谷会防災部が優秀賞を受賞しました。これは防災部長の統率のもと、時間をやりくりしながら練習に励んできた成果だと考えています。

2011年3月の東日本大震災の際には、粕谷会の防災部のメンバーで世田谷区地域防災リ-ダ-の3名が、4月末から5月にかけての3日間、宮城県亘理町で、ボランティア活動に参加してきました。そして、被災地での活動を通じて得た、避難体制、避難所での生活について、これからの防災・防火活動にも役立てていきたいと考えています。

マンションならではの防災・防火活動も実施

粕谷地域には、20戸前後の小規模マンションから100戸を超す大規模マンションまで、さまざまな規模のマンションがあり、その数は次々に増えています。こうしたマンションにおける防災・防火活動についても、粕谷会では以前から行なっています。

比較的新しく建てられたマンションには、屋内消火栓やスプリンクラー、備蓄倉庫など立派な防災・防火設備が竣工時から備わっていることが多いのですが、肝心の住民がその使い方や存在を知らないということも少なくありません。粕谷会では、こうした設備の利用方法や、マンションならではの防災・防火活動(初期消火やエレベーターを使わない階段での避難など)について、住民と一緒に取り組んでいます。

世田谷区粕谷会
広報・親睦部 部長
宮澤 茂氏

こうした粕谷会の考え方に賛同してくれるマンションも増えています。このようなマンションの1つの例として、ビラカ-サ蘆花恒春園壱番館では全58世帯が町会に加入して、粕谷会と連携して年1回防火・防災訓練を実施しています。また簡易トイレの購入や長期間の保存が可能なアルファ米の、管理組合での備蓄について検討を進めています。さらに避難所となっている小中学校の避難所運営組織に小中学校のPTAも組み込まれており、入居者もPTAの委員として避難所運営に参画しています。

防災・防火活動への住民参加率が課題

このように防災・防火活動に力を入れてきた粕谷会ですが、課題がないわけではありません。目下、取り組むべき課題は、今よりもっと多くの住民を防災・防火活動に参加してもらえるようにすることです。

粕谷地区は昔から人気の住宅エリアです。そのため、戦前から住んでいらっしゃる住民も数多くいるのですが、その一方で別の土地から移ってきた住民も増えています。どんどん新しい住宅やマンションが建ち、顔を知らない住民も数多くいるのです。そうした住民はまだ「地縁」の意識が薄いため、町会への入会はもちろん、防災活動への参加を勧めてもなかなか反応がない、という現状があります。

しかし、災害時には主要道路が建物や電柱などの障害物で進行できないことが想像できます。行政からの指示系統も混乱してしまうでしょうし、消防署の初期活動も対象範囲が広いため期待する速さでの対応は難しいと思います。そうしたとき必要になるのは町会です。ライフラインが途絶えるような状況で「自助」「共助」を実践していくためにも、より多くの住民に町会に加入していただき、防災・防火活動に参加していただきたいと考えています。

「共助」意識向上のため、学校と連携

より多くの住民に、防災・防火活動に参加していただくため、粕谷会では普段からのコミュニケーションを大切に考えています。例えば、町内の親睦をはかるお祭りやイベントの開催です。粕谷八幡神社の祭事のときにはお神輿の担ぎ手として多くの住民が参加してくれます。そうした機会を通じ、お互いが何気なく会話をしたり顔見知りになったりすることで、いざというときに「共助」が実践しやすくなると考えています。

また、首都直下地震などの大災害が発生した場合、避難場所や地域の支援拠点になるのは学校です。そこで、粕谷地区にある学校とも連携し、学校に関する人々を巻き込んだ活動も実施しています。例えば小学校・中学校では合同防災訓練を実施しました。高校では教室や体育館に泊まり込む防災訓練を実施し、被災生活を模擬体験するとともに救護法などを学んでもらいました。こうした活動を通じて、子どもたちが積極的に防災について考え、「共助」の意識を高めてもらいたいと願っています。

今後の防災・防火活動について

いざ災害が起きたとき、行政区が違うからという理由で、困っている人を受け入れないということはありません。こうした状況を想定し、住民の頻繁な行き来が想定される近隣の自治体とも、合同で訓練を行なっています。以前に隣の調布市と合同で行った訓練では、約2,300人もの住民が参加してくれました。今後はこうした動きが活発化するでしょうね。

また、粕谷会では特別養護老人ホームと協定を結び、介護が必要な入所者が災害時に速やかな避難ができるように、年1回防災訓練を行なっています。粕谷地区では高齢者向けの施設が増えていますので、今後はこうした活動も増えていくと予想しています。

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