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走行中に大地震に遭遇したとき、適切な退避行動をとれますか?

2019年3月号

今月のクイズ

走行中に大地震に遭遇し路肩に停車後、退避行動で適切だと思うものを次の中から選んでください。

  • (1)
    エンジンを切ってキーを持ち、ドアロックして車から離れる。
  • (2)
    エンジンをつけたままキーは車内に残し、ドアロックをせずに車から離れる。
  • (3)
    エンジンを切りキーは車内に残し、ドアロックをせずに車から離れる。

2016年熊本地震では、4月14日からの3日間に震度6弱以上の揺れが7回も発生しました。走行中、このような大地震に遭遇したら、あなたはどうしますか?
今月は、2016年熊本地震でのドライバーの運転行動調査を通じ、安全で被害を拡大させない退避行動についてみてみましょう。

災害発生時に適切な退避行動がとれた割合は全体の約4%のみ

2016年熊本地震で震度6弱以上の揺れに遭遇したとき、走行中だったドライバーの運転行動調査をみてみると、地震発生後、約半数はすぐに停車しています(図1)。ある程度走行してから停車したケースと合わせると、約8割が停車していますが、残りは停車せずに走行を続けました。停止した理由の中には「先行車が停止したため」「信号が赤になった」など地震に気付かず停止していたケースが2割強みられましたが、約8割が地震に気付いたり、車両異常と思ったりして停車していました。しかし、停車後の行動をみると、車を離れ退避行動をとったケースは約3割しかなく、車を離れずに再び運転を続けたケースが約7割を占めました(図2)。

図1:地震時の停車行動、図2:車からの退避行動、図3:車から離れる際のエンジンキーとドアロックの状態、図4:災害時の対応に関する知識と、エンジンキーとドアロックの対処
  • 出典:
    自動車安全運転センター 平成28年度調査研究報告書「災害時における緊急脱出の運転者行動に関する調査研究(II)」より弊社作成
  • 構成比は小数点第1位を四捨五入して表示しているため、合計が100%にならない場合があります。

車を離れる際の対処をみると、エンジンキーを付けたままドアロックをせずに退避した人は12人で車を離れた57名のうち約2割に留まります(図3)。災害時は、路上駐車した車が緊急車両通行の支障になる場合を考え、車を円滑に移動できるようエンジンキーは付けたまま、ドアロックをせずに退避する必要があります。調査全体(270人)からみると、地震発生時に適切な退避行動がとれた人は12人と約4%しかいないことになります。
また、災害時に車を離れる際の対処について「知らなかった」と答えた人は、約46%と半数近くを占めていました。「知っていた」人と「知らなかった」人の行動をみると、エンジンキーを付けたまま退避すると「知っていた」にもかかわらず、キーを持って離れた人が半数近くと多く、車を離れる際にエンジンキーを残すことにためらいがある人が多いことがわかります(図4)。ドアロックに関しては「知っていた」人の約6割がドアロックをせずに退避しています。一方、「知らなかった」人はエンジンキーを持って退避した人が65%と多くなっていますが、「覚えていない」と答えた割合もエンジンキーで2割強、ドアロックが約4割と少なくありません。災害時の対応に関する知識が無いため、退避時にエンジンキーとドアロックに意識が向かなかったと考えられます。

大地震発生時に被害を拡大させずに安全な退避行動をとるためには…

大地震が発生したとき「道路は大丈夫そうだから、行けるところまで走ろう」と考えるのは危険です。道路が陥没したり、塀や建物が道路に崩れ落ちたりする危険が発生し、「行けるところ」を的確に予測できないおそれがあります。また、火災などが発生した場合、逃げようとする車や退避時に不適切に路上駐車した車は、緊急車両の通行を妨げ被害を拡大してしまいます。走行中に大きな地震に遭遇したとき、被害を拡大させずに安全な退避行動をとるにはどうしたらよいかをみてみましょう。

Step0:大地震発生

車は路面からの衝撃をサスペンションが和らげているので、運転中のドライバーは地震に気付かないことがあります。それでも「揺れているな」「周囲の様子が変だ」と感じたら、大地震や災害が発生していると認識しましょう。

Step1:車を停車させる

  • (1)
    ハンドルをしっかりと握る
    凸凹道を走るときのように、ハンドルをとられる危険があります。
  • (2)
    ハザードランプを点ける
    後続車や周囲の車に注意を促します。
  • (3)
    減速し、道路の左端に寄って停車します。
    慌てて急ブレーキをかけたり、急ハンドルをきったりすると、追突などの事故を誘発します。冷静にゆっくり行動しましょう。

Step2:情報を入手する

ラジオや携帯電話等で災害情報や交通情報を確認しましょう。
カーナビ等で現在地を確認し、道路外に駐車できる場所と安全な避難先を探しましょう。高速道路や大きな幹線道路は、緊急車両の通行を円滑にさせるため通行禁止になる場合があります。該当の道路を通行している場合は、警察官等の誘導に従い道路外に移動しましょう。

Step3:車を置いて退避する

  • できるだけ、駐車場等道路外の安全な場所に車を移動しましょう。
  • やむを得ず、道路上に車を置いて退避する場合は、次のようにしましょう。
  • (1)
    窓を閉め、エンジンを切りましょう。
  • (2)
    エンジンキーは付けたままにするか運転席などわかりやすい場所に残し、ドアロックをせずに車から離れましょう。
    災害時、幹線道路等で緊急車両や救援車両の通行の際に、ドアロックされエンジンキーが無い車が妨げになった場合、道路管理者は車の所有者の同意無しにやむを得ない限度において、車を破損し移動させることができます。
    (災害対策基本法 第76 条の6 第3 項)

引き続き走行する

「津波警報が出ている」「同乗者が高齢なので、できる限り車で避難したい」などやむを得ず走行を続ける場合は、信号機の停止や道路の破損等、通常の道路から様変わりすることを念頭に、十分に注意しましょう。


今月のクイズの答え