台風の接近に警戒する

2019年7月号

今月のクイズ

2018年9月に四国から近畿地方にかけて上陸した非常に強い勢力の台風21号は、暴風や高潮などによる甚大な被害をもたらしました。この台風による車両保険の支払件数を、次の中から選んでください。

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(2019年3月末日現在、見込み含む)

夏から秋にかけては、帰省やレジャーなどで車を利用した遠出の機会が多くなる一方、台風が猛威をふるう季節でもあります。ところで、台風が接近していても「速度を落とせば運転できる」と思っていませんか?
今月は、2018年に起きた台風の特徴を通し、台風の接近にドライバーが警戒すべきことをみてみましょう。

台風と離れていても豪雨が発生し、水害や土砂災害が起きることがある

日本の国土は約7割を山地と丘陵地が占めており、標高1千~3千mの山脈が連なっています。同じ標高でも世界の山は山頂から山裾までの距離が長いため、なだらかな傾斜に川が緩やかに流れます。ところが、日本の山は斜面の全長が短く急勾配になるため、川の流れが速く、山頂に大雨が降ると一気に水かさが増すので氾濫しやすい傾向があります。加えて、手入れが行き届かず地面がむき出しになっている山では、土が雨で流れやすくなっています。山に長時間大雨が降り続くと、土砂災害が起きる危険性が高まります。
一方、梅雨の時期は、台風が梅雨前線などを刺激して、台風から離れたところでも豪雨が発生することがあります。2018年7月上旬には台風7号や梅雨前線の影響により、西日本を中心に記録的な大雨(平成30年7月豪雨)になりました。河川の氾濫、土砂災害等の発生により道路の封鎖などの被害はもとより、多数の死者、行方不明者が出る甚大な災害となりました。

  • 出典:
    一般財団法人国土技術研究センター 「国土を知る/意外と知らない日本の国土」、気象庁 平成30年7月13日 報道発表「『平成30年7月豪雨』の大雨の特徴とその要因について(速報)」より弊社作成

進路の予測が難しい台風がある

台風は、多くの積乱雲が集まって巨大な渦を巻き、上空に流れる風の影響をうけて移動します。7月~8月は日本上空の風が弱く、周辺の気圧状況によっては台風の動きが不安定になり、進路の予測が難しくなります。
2018年7月24日に発生した台風12号は、伊豆諸島に接近し東から西へ横断した初めての台風でした。その後、三重県に上陸し九州を抜け、再び九州に上陸するという特異な進路をたどり、各地で冠水や倒木により道路が通行止めになるなどの被害が発生しました。

  • 出典:
    気象庁 平成31年1月 お知らせ「2018年(平成30年)の台風について」より

非常に強い勢力の台風は高潮を発生させ、海辺の道路に海水が流れ込むことがある

台風が接近し気圧が低くなると、海面が台風の中心に向かって上昇します(吸い上げ効果)。さらに、強い風が沖から海岸に向かって吹くと、海水が吹き寄せられて、海岸付近の海面が上昇し(吹き寄せ効果)高潮になります。
2018年9月4日に非常に強い勢力で徳島県に上陸した台風21号は、四国や近畿地方を中心に、暴風による車の横転や高潮による道路の冠水などの被害をもたらしました。特に関西国際空港では、高潮により滑走路や電気設備などが浸水し空港としての機能が停止したうえ、大型の船が風にあおられ関西国際空港と対岸を結ぶ連絡橋に衝突し、利用者らが一時孤立した状態に陥りました。

図1:台風による高潮発生の様子
図1:台風による高潮発生の様子

台風の接近に警戒する

長距離ドライブを楽しんでいるときに「台風の予想進路が変わり接近してきた」ということがあるかもしれません。台風の接近にどのように警戒し、安全に対処するにはどうしたらよいかをみてみましょう。

天気予報や台風情報をこまめにチェックし、台風が接近したら、車の運転をやめましょう

台風接近時は大雨に加え、暴風で車や街路樹などが倒れたり、看板などが飛んできたりするなど、車の走行自体が危険な状態になります。天気予報や台風情報をこまめにチェックし、台風が接近したら、車の運転をやめましょう。
万が一、走行中に台風の接近に気が付いた場合は、すぐに頑丈な建物や安全な場所へ避難し、台風が通り過ぎるまで運転をやめましょう。

台風の接近時は「川沿い」「山や崖のそば」「海岸の近く」の道を避けましょう

「台風から外れているから」「ここは平地だから」大丈夫ということはありません。雨で川の水かさが増しているところにさらに雨が降れば、川から水が溢れ、道路が冠水して車が水没する危険性があります。また、山肌の崩壊や地すべり、土石流などにより、土砂が山裾まで迫り車を飲み込む危険性があります。一方、海岸近くの道路では、高潮や高波が発生する危険性が高まります。
台風が接近したら、「川沿い」「山や崖のそば」「海岸の近く」の道を避けましょう。

高齢者の避難等で車を利用する場合は、警戒レベル3が発表された段階で速やかに避難しましょう

気象庁や市区町村から発表される防災・避難情報により、自身がとるべき行動をわかりやすく分類した、警戒レベルの5段階区分(表1)が運用開始になりました。高齢者の避難等で車を利用する必要がある場合は、警戒レベル3が発表された段階で速やかに避難しましょう。警戒レベル4になったら、市区町村の避難情報に留意し、全員が速やかに避難しましょう。
山や河川の近くの土砂災害にあう可能性が高い区域にいる場合は、車を安全な場所で止め、天気予報に加え気象庁がWebサイトなどで公示する以下の防災情報で、洪水や土砂災害の危険度を確認しましょう。
また、スマートフォンのアプリ等で自身のいる地域の危険度の変化を通知するサービスが7月以降に順次開始されます。とても便利な通知サービスですが、運転中に利用すると注意がそれて事故を起こす危険性があるので、必ず安全を確保した状態で使いましょう。危険度が低い段階で車を安全な場所へ移動し避難の準備をしましょう。

表1:警戒レベル5 段階区分 (大雨/ 土砂/ 洪水/ 高潮)

  
警戒
レベル
自身がとるべき行動 避難行動をとる際の判断となる警戒レベル相当の情報 避難等の行動を促す情報
5 命を守る最善の行動をとる 大雨特別警報(浸水害・土砂災害)
氾濫発生情報(洪水)
災害発生情報
4 全員が緊急に避難する 土砂災害警戒情報
氾濫危険情報(洪水)
洪水警報[危険度/ 非常に危険]
高潮特別警報/ 高潮警報
避難勧告
避難指示(緊急)
3 高齢者等は避難する。その他の人も自主的に避難を始める 大雨警報(土砂災害)[危険度/ 警戒]
氾濫警戒情報(洪水)
洪水警報[危険度/ 警戒]
高潮注意報(警報に切り替える可能性が高いと言及される)
避難準備
高齢者等避難開始
2 避難に備え、避難先やルート等を確認する 土砂災害に関する情報[危険度/ 注意]
氾濫注意情報(洪水)
洪水警報[危険度/ 注意]
洪水注意報
大雨注意報
高潮注意報
1 災害への心構えを高める 早期注意情報
(警報級の大雨になる可能性)
  • 出典:
    気象庁 令和元年5月29日 報道発表「防災気象情報の伝え方改善に向けた当面の取組について」、「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」より弊社作成

今月のクイズの答え