台風や大雨のときの安全行動

2020年6月号

今月のクイズ

冠水でエンジンが停止してしまった車に、水が引いた後やってはいけないことを、次の中から選んでください。

  • (1)
    エンジンをかける
  • (2)
    ボンネットをいきなり開ける

初夏から秋にかけて、短時間のうちに集中的に降る大雨や、猛威をふるう台風の発生が多くなります。車を走行中に雨が強くなり、道路がみるみるうちに冠水し始めたという経験がある方もいらっしゃることでしょう。
今月は、冠水した道路を走行する危険性を通し、ドライバーは大雨や台風のときにどう行動すればよいのかをみてみましょう。

台風や大雨のときは、短時間で道路が冠水し身動きが取れなくなる危険性がある

2019年10月12日に日本に上陸した台風19号では、東海地方から東北地方までの多くの場所で、24時間の雨量が500mmを超える観測史上最も多い降水量を記録し、大規模な河川氾濫も発生しました。さらに、10月25日には、千葉県を中心に東海地方から東北地方までの広範囲で記録的な大雨となりました。2019年10月の台風19号等がもたらした人的被害についての調査*によると、死者および行方不明者は合わせて101人に上り、そのうち車中での犠牲者は36人と全体の4割近くを占めていました。
いずれも発生時には、気象庁防災情報の「大雨・洪水警報の危険度分布」では、「極めて危険」(警戒レベル4相当)が出現していました。とくに台風19号の洪水警報では、河川の氾濫がすでに発生している可能性(警戒レベル5相当)が出現しています(警戒レベルは、2までは気象庁が発表、3以上は市町村が地域住民の避難が必要と判断した段階で発令(図1))。犠牲者の多くが、雨量が多かったり、河川の氾濫や決壊があったりして、短時間のうちに道路の冠水や土砂崩れが発生し、身動きが取れなくなったものと思われます。

 図1:警戒レベル5 段階

水の深さが、30㎝を超えるとエンジンが停止し、50㎝を超えると車が浮いてしまう

道路が冠水した場合、水面から地面までの深さ(浸水深)が10cm未満であれば車の走行に問題はありません。しかし、浸水深が10cmを超えるとブレーキの性能が低下し、30cm(足の向う脛くらい)を超えるとエンジンが停止して立ち往生してしまいます。50cm(膝上くらい)以上になると、水圧でドアが開きにくくなり、パワーウィンドウ車は窓を開けることができなくなるので、車に閉じ込められます。さらに、車が浮く可能性があり、水に流れがあると車が流される危険性があります(表1)。

表1:浸水深別の車の危険性について
浸水深 50cm以上
パワーウィンドウが開かなくなり車に閉じ込められる。車が浮いて、水に流れがあるとそのまま流されるので、非常に危険な状態になる。
浸水深 30~50cm
エンジンが停止する。車から脱出を図らなければならない。
浸水深 10~30cm
ブレーキの性能が低下する。安全な場所に移動する必要がある。
浸水深 10cm未満
走行するのに、とくに問題ない

台風や大雨のときの安全行動

台風や大雨のとき、ドライバーはどのように安全な行動をすればよいかをみてみましょう。

山や河川の近くを走行中に天候が悪くなったら、防災情報で大雨や洪水などの危険度を調べましょう

日頃から、運転前にラジオやインターネットなどで、天候の情報を得るようにしましょう。
山や河川に近い場所を走行中に天候が悪くなった場合は、近くの駐車場などに車を停めて、天気予報に加え、気象庁の防災情報で土砂災害や洪水の危険度を確認しましょう(スマートフォンのアプリ「気象庁天気・川の防災情報」でも確認することができます)。危険度が低い段階で、避難の準備をしましょう。

気象庁防災情報

避難に車を使用するのは、なるべく避けましょう

大雨や台風、それに起因する河川の氾濫などで、道路はあっという間に冠水するおそれがあります。そのまま走行を続けると、車が起こす波で避難している歩行者の足をすくいかねません。さらに、冠水した道路の水の深さは見た目で図ることができないため、エンジンが止まって立ち往生したと思ったときには浸水深が50cmを超えていて、車内に閉じ込められる危険性があります。また、道路上で動けなくなった車は、緊急車両が通行する妨げにもなります。
身体の不自由な人を避難させる等やむを得ない場合を除いて、避難に車を使用するのは危険な行動になりかねないので避けましょう。

エンジンが停止し、ドアが開かなくなったら、シートベルトを外し、脱出用のハンマーで窓を割って避難しましょう

エンジンが停止し、水圧でドアを開けられなくなったら、(1)シートベルトを外し、(2)脱出用のハンマーを使い、窓を割って外に出ましょう。脱出用のハンマーが無い場合は、ヘッドレストを引き抜き金具のとがった部分を使うなどして窓を割りましょう。窓を割ることができなくても、あわてることはありません。車内に入ってきた水と車外の水位が同じになると、水圧が下がりドアが開きやすくなります。
車外に出るときは傘を持ち、たたんだまま杖のように地面を探り、足元の安全を確認しながら避難しましょう。


今月のクイズの答え