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ペダルを踏み間違えないためには

2020年7月号

今月のクイズ

2018年に起きたブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違い事故は4,467件でした。そのうち、29歳以下の若者が起こした事故は1,065件で、全体の約24%を占めました。では、65歳以上の高齢者が起こした事故の件数を、次の中から選んでください。

  • (1)
    1,654件(約37%)
  • (2)
    2,134件(約48%)
  • (3)
    2,634件(約59%)

2019年4月に東京の東池袋において高齢者ドライバーが起こした死傷事故は、皆さんのご記憶に新しいと思います。事故の要因は、ブレーキペダルとアクセルペダルの踏み間違いとされています。
今月は、若者と高齢者を対象とした「間違いを起こした後の対応行動」の実験結果から、危険がせまる状況でアクセルペダルを踏み続けてしまう要因の一端を知り、ペダルを踏み間違えないためにはどうすればよいのかをみてみましょう。

加齢による反応時間の遅れは、危険がせまる状況でアクセルペダルを踏み続ける時間につながる

ペダルの踏み間違い事故の一因に、危険がせまる状況にもかかわらずアクセルペダルを踏み続けてしまうケースがあります。このように人が間違いを起こした後の対応行動について、若者と高齢者を対象に行った実験調査があります。モニターに表示された色を示す漢字と文字の色が、「一致する場合」は右スイッチを2回、「異なる場合」は右スイッチを1回押すという実験です。このとき「作業に間違いがある場合」はブザー音が鳴り、文字が大きく映し出されて間違いを知らせ、被験者は左スイッチを1回押します。この実験から、運転中のドライバーが、目の前の交通状況を認識し適切な運転操作を行うまでの反応時間がわかります。また、ドライバーが運転操作の間違いに気づいたとき、どれだけ早く軌道修正できるかもわかります。
実験の結果、「一致する場合」の反応時間は高齢者の方が長くなりますが、「異なる場合」に間違いを起こす確率は若者の方が多くなります(図1)。若者は作業の速さを重視し、高齢者は作業の正確さを重視していることがわかります。交通場面に置き換えると、若者の作業の速さを重視する傾向は、状況判断が複雑なときに運転操作を誤ることにつながります。
また、高齢者は「作業に間違いがある場合」左スイッチを押すまでの反応時間が長くなります(図2)。これは、認知と判断の間に躊躇する時間が発生し、反応するまでに時間がかかっていることを表しています。交通場面において、高齢者は危険に気づいてもとまどってしまい、その間にアクセルペダルを踏み続けてしまう様子がうかがえます。加齢により徐々に反応が遅くなり、それが危険のせまる状況でアクセルペダルを踏み続ける時間につながると認識しなくてはなりません。

 図1:「異なる場合」に間違って反応する確率と「一致する場合」の反応時間(若者と高齢者)
 図2:「一致する場合」と「作業に間違いがある場合」の反応時間(若者と高齢者)

若者:50名(男性25名・女性25名/平均年齢21.6歳)

高齢者:(認知機能が低下していない)50名(男性25名・女性25名/平均年齢71.6歳)

ペダルを踏み間違えないためには

安全運転のためには、正確なペダル操作を行わなければなりません。では、ペダルを踏み間違えないためにはどうしたらよいのかをみてみましょう。

走行時は、適切な速度で走行しましょう

走行中は、危険を発見し足をブレーキペダルに乗せ換えるための時間的な余裕を持たせる必要があります。法定速度を守り、遅すぎず速すぎず、適切な速度で走行しましょう。

渋滞時にペダル操作をするときは、どのペダルに足があるかを意識するようにしましょう

車が進んだり止まったりを繰り返す渋滞時は、ついボーッとして運転操作から注意が逸れやすくなります。万が一、アクセルペダルに足をかけている際にブレーキペダルと思い込み強く踏み込んでしまうと、急加速して前の車に追突する危険性があります。渋滞時にペダル操作をするときは、どのペダルに足があるかを意識するようにしましょう。

  • 前の車が進み始めたら、前の車との距離が十分に空いてから、クリープ現象(ブレーキペダルから足を上げ車が動き始める)を利用して、ゆっくり進み始めましょう。
  • 前の車が速度を上げ始めてから、足をアクセルペダルに移しゆっくり加速しましょう。
  • 前の車が速度を落としたら、足をブレーキペダルの上に戻し、エンジンブレーキを利用して徐々に減速しましょう。
  • 前の車が停止したら、ブレーキペダルを踏みましょう。

駐車時は、一つ一つの運転操作を確認しながら駐車しましょう

駐車スペースに車を停めるときは、シフトレバーの切り替えや前後左右の安全確認など、運転操作が複雑なためペダル操作への注意がおろそかになりがちです。さらに、歩行者が現れたり、前進したかったのに後退(R)ギアに入れたままにしていたりなど想定外のことが起きれば、対処しようと焦るあまりブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込む危険性があります。複雑な運転操作を行うときこそ、一つ一つの動きを確認して、操作に余裕を持たせなくてはなりません。

  • 1.
    駐車スペースの直前で、ブレーキペダルを踏み込み、車を一旦停止させ周囲の安全確認を行いましょう。
  • 2.
    足はブレーキペダルの上に置いたまま、クリープ現象を利用してゆっくりと車を動かしましょう。
  • 3.
    シフトレバーを操作するときは、ブレーキペダルを踏み込んで、車を一旦停止させましょう。
  • 4.
    目視でギアの位置を確認し、周囲の安全確認を行ってから、ブレーキペダルの踏み込みを緩め、ゆっくりと車を動かしましょう。

今月のクイズの答え