車を後退させるときの安全確認
2020年9月号
今月のクイズ
2018年中に車両による後退事故が最も多く発生した場所は「駐車場等」で、約半数を占めていました。では、2番目に多く約3割を占めていた発生場所を、次の中から選んでください。
- (1)交差点
- (2)交差点付近
- (3)単路(直線道路やトンネル、橋、カーブなど)
駐車場などで車を後退させるとき、となりの車との距離や切り返し操作に気をとられ、後方の安全確認を怠っていませんか?
今月は、車の後退事故を通し、車を後退させるときの安全確認についてみてみましょう。
後退による重大事故は、建物や工作物等への衝突や高齢の歩行者との衝突が多くなる
2018年中に四輪車が起こした後退事故は19,675件で、交通事故全体の約5%を占めました。事故の相手は、「四輪車」が約6割と最も多く、続いて「歩行者」が約2割となります。そのうち、死亡事故の相手側の割合をみると、「相手無し・物件等」が約半数となり、後退によりドライバー自身が建物や工作物等に衝突して亡くなるケースが最も多くなっています。続いて、「歩行者」が約4割を占めており、後方確認が不十分なまま後退し歩行者と衝突している様子がうかがえます(図1)。
2008~2016年の9年間で、四輪車の後退事故による歩行者の死亡重傷者数を年齢層別に比べてみると高齢者が多く、50歳を過ぎるあたりから増加し始め75~84歳がピークになります。一方、子どもは1~4歳の未就学児が多くなっています(図2)。高齢になると視機能が低下し周辺視野が狭くなるうえ、歩くときに目線が足元に下がり周囲への注意が届きにくくなるため、後退してくる車に気づかない可能性が高くなります。また、運転席のドライバーからは後方に死角が多いので、背が低い未就学児に気づくことができず衝突する危険性があります。
- 出典:公益財団法人交通事故総合分析センター 平成30年版「当事者別 行動類型相関別 死亡事故件数/全事故件数」より弊社作成
- 出典:公益社団法人自動車技術会 自動車技術会論文集 Vol.50,No.1,January 2019. 木下義彦著「後退四輪車により歩行者と自転車及び二輪車乗員が死傷した事故の分析」より弊社作成
車を後退させるときの安全確認とは
車を後退させるときは、十分な安全確認を行う必要があります。どのような安全確認をすればよいのかをみてみましょう。
駐車場の駐車スペースに後退で入庫するときは
-
1.
入庫の運転操作をする前に、駐車スペースの安全確認を行いましょう
- 両横の車が出ようとしている場合は、出庫するまでしばらく待ちましょう。
- 駐車スペースに歩行者がいる場合も、いなくなるまで待ちましょう。
- 2.
ギアをバックに入れ、後退する間も安全確認を怠らないようにしましょう
- 周囲に後退することを知らせるため、ギアをバックに入れた後、一時停止をしましょう。また、死角の多い場所や暗い場所、導線が入り組んでいる場所などでは、ハザードランプを点滅させて、周りに知らせるという方法もあります。
- 後方を目視しやすいように、運転席の窓を開け、シートベルトを外しましょう。
- ルームミラーやドアミラーでは確認がしにくい後方の低い部分や、駐車スペースの周辺の歩行者や工作物の位置を確かめるため、必ず目視で後方の安全確認を行いながら後退しましょう。
道路に面している駐車スペースから後退で出庫するときは
ギアをバックに入れるとバックライトが点き、車内は警告音が鳴りますが、車外では鳴らない車が多くあります。さらに、前向き駐車の車を歩道から見ると、運転席が遠いうえ背もたれでドライバーを確認しにくいため、歩行者や自転車等は駐車中の車が動くとは思っていない可能性があります。後退して車道に出るときは、安全のため歩道や車道の通行が途切れるまで待つ必要があります。
- 1.歩道と車道の安全確認を行い、歩道と車道の通行が途切れるまで待ちましょう。
- 2.車がこれから後退することを周囲に知らせるため、少しだけ後退しましょう。
- 3.歩道を通行する歩行者や自転車がいないことを再度確認し、ゆっくりと車道の手前まで後退し、停止しましょう。
- 4.車道を通行する車やバイク、自転車がいないことを確認し、ゆっくりと車道に後退し、進む方向へ車体を向けましょう。
道路上で後退するときは
路上駐車場に縦列駐車するときなど、道路上で車を後退させることがあります。ただし、周囲の歩行者や車両は、車が後退してくるとは思っていない可能性が十分にあります。駐車する場合は、ハザードランプを点け、次のように周囲の安全確認を行ってから、ゆっくりと後退しましょう。
- 後続車がいない、または車間を開けて停止している。
- バイクや自転車との距離がある、または停止している。
- 歩行者が車の両横や後方にいない。
後退で駐車するときの適切な安全確認を、VR(仮想現実)を使って体感
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社は、VR 技術を活用した安全運転に関する教育システムを開発し、体験型の安全運転講習会等で提供することを検討しています。VR のヘッドセットを装着し、後退で駐車するときにどこを見ていたのかを可視化することができるようになります。
ご自身の安全確認が十分かどうかをVR で振り返ることができる日も近いですね。
車を後退させるとき、周囲が気づいていない可能性があります。
安全確認を十分に行い、ゆっくりと後退させましょう。
今月のクイズの答え
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(3)
単路(直線道路やトンネル、橋、カーブなど)(それ以外の交差点及び交差点付近では、それぞれ約1割発生していました。一方、死亡事故では単路が約4割と多くなり、駐車場等が約3割に減少しますが、交差点付近が約2割と多くなりました。)
出典:公益財団法人交通事故総合分析センター 平成30年版「地形別 道路形状別・行動類型別 死亡事故件数/全事故件数(第1当事者)」より