緑内障が運転に与える影響

2021年1月号

今月のクイズ

普通自動車免許(1種)を取得及び更新の際の視力の合格基準は、両眼で0.7以上、かつ片眼でそれぞれ0.3以上あることです。では、片眼が0.3に満たない場合の合格基準を次の中から選んでください。

  • (1)
    もう一方の片眼の視野が左右120度以上で、視力が0.3以上あること。
  • (2)
    もう一方の片眼の視野が左右150度以上で、視力が0.7以上あること。

「老眼ぎみだけど視力は正常なので、運転には差し支えない」と思っている40歳以上のドライバーの方はいませんか?
今月は、眼の病気の一つである緑内障の症状と、運転に与える影響を通し、運転を続けるためにはどうすればよいかをみてみましょう。

緑内障と白内障は何が違うの?

日本では、40歳以上の20人に1人、70歳以上になると10人に1人が緑内障であるといわれています。病名に色が付いているので「白内障の仲間?」と思われがちですが、白内障は水晶体が濁り視力が低下するので自覚しやすく、手術などである程度視力を回復することが可能です。一方、緑内障の初期は自覚症状がほとんどありません。よって眼科を受診するのが遅れ、気付かないまま病気が進行し(欠損した視野は治療をしても元に戻りません)、最悪の場合は失明するおそれがあります。

図:40代以降に増えてくる目の病気

視野が狭かったり、欠けたりしているとどんな事故が多くなるの?

運転シミュレータを使った運転行動の調査結果で、視野に問題がない人(視野正常者)と、視野に欠損等の問題を抱えている人(視野異常者)を比較したところ、15の危険場面のほとんどで視野異常者の事故・違反率が高くなりました。特に、信号無視や左右からの飛び出しなどの6つの危険場面で、視野異常者の方がはるかに高い事故・違反率になっています(図)。
運転シミュレータを実施した際のアンケート調査で自分の運転について尋ねたところ、「周囲を確認していたが、車などに気付くのが遅れ違反や事故をしてしまった」の回答が最も多く64.6%を占めていました。

図:危険場面別の事故・違反率の比較
(視野異常者の方が倍以上の事故・違反率になっているケースを抜粋)

なぜ緑内障だと周囲の異変に気付くのが遅れるの?

人は、視線が移動しても常に視界の中心部分を注視しており、視力検査ではこの中心部分がどの程度細部まで見分けられているかを測っています。一方、眼で見られる範囲を把握する視野は、視機能が正常な人でも中心部分から外側に離れる程だんだんとぼやけます。しかし、信号機や左右からの飛び出しなどは周辺視野で把握しており、変化があれば視線を移動し中心部分で確認できます。
緑内障は、視神経が傷つくことにより周辺視野に異常が生じ、下図のように視野が徐々に狭くなったり、視野の一部分が欠損したりします。「視野が欠けていれば、気付くだろう」と思われるかもしれませんが、視野が狭くなったりした片眼をもう一方の正常な眼で補い、脳で調整するため気付くのは難しく、また中心部分が見えていると、周辺視野の異常に気付かないおそれがあります。自覚症状のないまま緑内障が進行すれば、信号機や左右からの飛び出しを見落とす危険性が高くなり事故を誘発します。

図:緑内障による周辺視野異常のイメージ

眼に少しでも違和感を覚えたら、眼科で相談しましょう

運転に支障を及ぼす眼の病気は、緑内障のほかにもあります。眼に少しでも違和感を覚えたら、眼科で相談しましょう。
また、40歳を過ぎたら眼底検査などを含む眼科検診を定期的に受け、早期に病気を発見し適切な治療を行って、安全運転を持続するよう心がけましょう。

今月のクイズの答え