車を適切で安全な状態に保つための点検整備
2021年8月号
今月のクイズ
2020年中に起きた車の整備不良による交通事故は250件で、そのうち「タイヤ不良」による事故は85件(34%)でした。では、ブレーキ等の「制動装置不良」による事故は何件発生したか次の中から選んでください。
- (1)68件(約27%)
- (2)88件(約35%)
- (3)108件(約43%)
「ブレーキペダルを踏めば車は止まる」と思っていませんか?車以外でも同じですが、手入れを怠った道具は、機能を十分に発揮することができません。車も日頃から点検整備を行い、適切で安全な状態に保つことが大切です。
今月は、車の『定期点検整備』と『日常点検』の実施状況を踏まえ、安全運転に欠かせない車の点検整備についてみてみましょう。
『定期点検整備』と『日常点検』を実施していますか?
特徴 | 頻度 | 備考 | |
---|---|---|---|
車検 | 車が安全・環境基準に適合しているか、国から認可された整備工場などでチェックしているもので、車検証の有効期間内の安全性を保証するものではありません。 | 2年に1回行います。 (新車は初回のみ3年) |
道路運送車両法第62条 |
定期点検整備 | 車の構造や装置が正常に機能しているか、整備工場などで点検し整備を行い、車の故障を防ぎます。 | 1年ごとに26項目、2年ごとに1年ごとの点検項目を含む56項目の点検整備を行います。 | 道路運送車両法第48条 |
日常点検 | ドライバーが目視などにより、エンジンルーム、車体の周り、運転席に座って点検し事故を防ぎます。 | 走行距離や運行時の状態などから、適切な時期(1か月に1回以上)に15項目の点検を行います。 | 道路運送車両法第47条の2 |
- ※2020年4月から、車検の際に『定期点検整備』の実施を確認することができなかった場合には、フロントガラスに貼る車検のステッカー(検査標章)の裏面に「法定点検未実施(車検時)」と記載されるようになりました。
車の点検整備の調査によると、『定期点検整備』の実施状況で一定期間ごとに「必ず実施している」と回答した人は約47%でした(図1)。一方、「車検の時に実施している」「全く実施していない」の回答は約53%を占め、その理由をみると「車検を受けているから」が最も多く、「面倒だから」「お金がかかるから」という理由も目立ちます(図2)。走行中に「ブレーキが効かない」ということが無いように、ディーラーや整備工場で『定期点検整備』(自家用乗用車は年1回)を行い、車を適切で安全な状態に保つ必要があります。
また、車の『日常点検』では、「全くしない」と回答した人は約40%と多く、その理由は「知識がないから」「面倒だから」が目立ちます(図3、4)。また、「定期点検をしているから」や「車の性能がよく、トラブルが起きないと思うから」も一定数あります。性能のよい車を運転していても、日常点検を怠りタイヤがすり減っていることに気付かなければ、危険を察知したとき停止しきれず衝突する可能性があります。
- 図1、2、3、4の出典:自動車点検整備推進協議会 2020年12月「2020年度 自動車点検整備推進運動調査」より弊社作成
日常点検を行おう
車の使用頻度によって違いがありますが、少なくとも月に1回は『日常点検』を行いましょう。また、長距離走行をするときは、出発前に『日常点検』を行いましょう。点検中に不具合などを発見した場合は、車のディーラーや整備工場へ相談しましょう。
エンジンルームの中を点検
- エンジンオイルの点検
- オイルレベルゲージを引き出し、乾いたタオルなどでオイルをふき取ります。ゲージをいっぱいに差し込んで引き出し、オイルの量がゲージに示された範囲内(LとH、もしくはFの間)にあるかどうかを確認しましょう。
- 冷却水の点検(ラジエータ・リザーバ・タンク)
- 冷却水の量が上限(MAX)と下限(MIN)との間にあるかを点検し、下限に近い場合は冷却水を補充しましょう。
- ウィンド・ウォッシャ液の点検
- ウィンド・ウォッシャ液の量が十分にあるかを点検し、少ない場合は補充しましょう。
- バッテリ液の点検
- 車を揺らすなどして、バッテリ液の量が上限(UPPER)と下限(LOWER)の間にあるかを点検し、少ない場合は交換しましょう。
- ブレーキ液の点検(ブレーキ・リザーバ・タンク)
- ブレーキ液の量が上限(MAX)と下限(MIN)との間にあるかを点検しましょう。
液量が下限より低くなるとブレーキの効きが甘くなり、事故を誘発します。また、液量が下限より低く異常な減りがみられる場合は、液漏れやブレーキパッドの摩耗等が考えられますので、安易に液を補充せず、ディーラーや整備工場へ相談しましょう。
- ハイブリッド車・EV車(電気自動車)点検時の注意
ハイブリッド車やEV車は、高電圧のケーブルやバッテリを搭載していますので、不用意に触れると感電や火傷を負う恐れがあります。触れてはいけない箇所には、オレンジ色や黄色で「警告」や「注意」と書かれたシール等が貼られていますので、十分注意して点検しましょう。
車の周囲を点検
- ランプ類の点検
- ヘッドライト、スモールランプ、ブレーキランプ、テールランプ、ウィンカーなどが正常に点灯・点滅しているか、ランプ類に汚れや破損がないかを点検しましょう。
- タイヤの空気圧の点検
- タイヤの接地部分のたわみ具合を点検し、たわんでいると感じたときは、エアーゲージを使ってタイヤの空気圧が規定の範囲内にあるか測りましょう。たわみがなくても、1か月に1回以上は空気圧の点検をしましょう。
タイヤがたわんでいると接地部分が広くなるため、縁石などにこすれ傷つくなどして、タイヤが破裂する要因になります。空気圧が不足している場合は、指定空気圧まで補充しましょう。
- タイヤの亀裂や破損の点検
- タイヤの亀裂や破損が無いか、溝に石などが挟まっていないか、目視で確認したうえ手で触って点検しましょう。
タイヤに亀裂や破損があると走行中にパンクや破裂して、ハンドルをとられる危険性があります。
- タイヤの溝の点検
- タイヤの溝の深さが1.6mm以下になるとスリップ・サインが現れます。タイヤの溝が十分あるかを点検しましょう。
タイヤの溝が浅いと、路面が濡れている時にスリップする危険性があるので、早めにタイヤを交換しましょう。
運転席に座って点検
- エンジンのかかり具合や異音の点検
- エンジンをかけたとき速やかに始動し、スムーズに回転するか、異音がないかを点検しましょう。
走行中にエンジンが不具合によって停止してしまうと、ブレーキやハンドルの機能が低下し、適切な運転操作ができなくなる危険性があります。
- ウィンド・ウォッシャ液の噴射状態の点検
- ウィンド・ウォッシャ液を噴射させ、向きや高さが適当かどうかを点検しましょう。
- ブレーキペダルの踏み残りしろと効き具合の点検
- エンジンがかかった状態でブレーキペダルを強く踏み込み、床板との間に適当な隙間(踏み残りしろ)があるか、ブレーキの効き具合が適当かを点検しましょう。
ブレーキペダルの踏み応えに違和感がある状態で走行すると、ブレーキの効きが悪くなる可能性があるので危険です。
- ワイパーのふき取り能力の点検
- ワイパーを作動させ、低速および高速に切り替えて正常に作動しているか、ウィンド・ウォッシャ液がきれいにふき取れているかを点検しましょう。
- パーキング・ブレーキの引きしろ(踏みしろ)の点検
- パーキング・ブレーキ・レバー(ペダル)をいっぱいに引いた(踏んだ)とき、引きしろ(踏みしろ)が多すぎたり少なすぎたりしていないかを点検しましょう。
- エンジンの低速・加速状態の点検
- エンジンが温まった状態で、アイドリング時の回転がスムーズに続いているかを点検しましょう。次に、車を始動させエンジンが徐々に加速したとき、アクセルペダルに引っ掛かりがないか、エンストやノッキング(エンジンから異音が聞こえてきたり、車が大きく揺れたりする状態)を起こさずにエンジンの回転がスムーズに上がるかを点検しましょう。
- 参考:国土交通省「クルマの点検は、日々劣化するクルマを維持していくのに必要な措置です!」、一般社団法人日本自動車整備振興会連合会「知って納得!クルマの点検・整備 My Car Hand Book」を参考に弊社作成
安全運転のため、1年に1回の定期点検整備と、1か月に1回以上の日常点検を必ず行って、車を適切で安全な状態に保ちましょう。
今月のクイズの答え
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(3)
108件(約43%)整備不良による事故のうち、「タイヤ不良」と「制動装置不良」を合わせると、正常に停止できない状態だった事故は約77%になります。
「タイヤ不良」は乗車前の日常点検で、「制動装置不良」は定期点検整備と日常点検をしっかり行うことで、車を適切で安全な状態に保つことができます。- 出典:公益財団法人交通事故総合分析センター 2021年4月集計「人的要因 車両的要因別・当事者別 全事故件数(1当)‐車両」より
- 出典: