停止させた車が動き出す?~自然発車による事故を防ごう~
2022年1月号
今月のクイズ
2009~2018年までの10年間に、自然発車(停止させた車が、ドライバーの運転行為以外の原因で動き出すこと)による交通事故を起こしたドライバーの最も多かった運転免許取得経過年数を次の中から選んでください。
- (1)5年未満
- (2)5年以上10年未満
- (3)10年以上
「停めた車が勝手に動き出すことはない」と思っていませんか?
今月は、自然発車(停止させた車が、ドライバーの運転行為以外の原因で動き出す)による事故の内容を通し、停止中の車が自然発車しないための方法と、車が動き出してしまったときの対応方法をみてみましょう。
自然発車は、ドライバーの操作上の誤りや勾配の見誤りによって起きる
2009~2018年の10年間に起きた自然発車(停止させた車が、ドライバーの運転行為以外の原因で動き出すこと)による人身事故は、2,352件ありました。そのうち死亡事故(162件)をみると、前半の5年間は47件だったのに対し、後半は115件と約2.5倍に増加しています(図1)。
自然発車による事故の大きな特徴は、死亡した人の82%、重傷者の64%が第一当事者であり、ドライバー本人が巻き込まれる割合が多いということです。車を停め降車したドライバーが、動き始めてしまった車に轢かれたり、車を止めようとして壁等の間に挟まれてしまったりしたのではないかと考えられます。
ドライバーの人的要因をみてみると、不適切なブレーキ操作等を含む操作上の誤りが92%を占めています(図2)。ドライバーが適切な駐車方法を行わなかったため、停止しているはずの車が動き、事故に至るケースが多いことがわかります。
次に、発生場所をみると、死亡・重傷事故は勾配3%以上の場所で多く、軽傷事故は勾配3%未満の緩い場所で多く発生しています(図3)。見た目はほとんど平坦に見えるような道路でも、自然発車する危険性が十分に潜んでいます。車の大きさや道路の見た目で判断せず、車を停める時はしっかりと停止させる必要があります。



- ※勾配3%とは、100mの2地点間の高低差が3mある程度の傾きです。
- 出典:公益財団法人 交通事故総合分析センター イタルダインフォメーションNo.134「自然発車による事故」より弊社作成
自然発車しないための方法
駐停車する際に自然発車しないための方法をみてみましょう。
駐停車するときは、なるべく平坦な場所を選びましょう
勾配が急であるほど、自然発車した車の加速度や衝突したときの衝撃は高まります。駐停車するときは坂道を避け、なるべく平坦な場所を選びましょう。
車が動き出さないように、パーキングブレーキをしっかりかけ、ギアをパーキングに入れましょう
少しの時間でも、車を停め外に出るときは、車が動かないようにしましょう。
ブレーキペダルを踏んだ状態で
-
1.
パーキングブレーキをしっかりかけましょう駐停車中に車輪が回転しないようにパーキングブレーキをかける必要があります。パーキングブレーキには、手動タイプと電動タイプがあります。
手動タイプは、手で引くハンドブレーキや足で踏むパーキングブレーキペダルがあります。しっかりと引く、または踏み込んで車軸を回転させないようにしましょう。パーキングブレーキをかけると、ブレーキ警告灯が点灯しますが、手動タイプの場合は、パーキングブレーキがしっかりかかっていなくても警告灯が点灯する場合があるので注意しましょう。
また、電動タイプのパーキングブレーキの場合は、ボタンを押してブレーキ警告灯が点灯したかどうかを確認しましょう。 -
2.
ギアをパーキングに入れましょうオートマチック車の場合は、ギアをパーキングに入れましょう。
マニュアル車の場合は、平坦な場所や下り坂ではギアをリバースに、上り坂の場合はギアを1速に入れておきましょう。(詳しくは、車の取扱説明書を参照ください。)
エンジンを止め、ブレーキペダルから足を外しましょう
車が動き出してしまったときの対応方法
停止した車が動き出してしまったときの対応方法をみてみましょう。
「動き始めの車は手で止めることができる」と思うかも知れません。しかし、1トン前後の重量がある車を人の力で止めることは難しい上に、加速していくので大変危険です。車が動き出す方向へ回り込まないようにしましょう。車が動き出してしまったら、止めようとせずに周囲にいる人へ大声で危険を知らせましょう。
- 自然発車を避けるため、なるべく平坦な場所に駐停車しましょう。
- 車が動き出さないように、パーキングブレーキをしっかりかけ、ギアをパーキングに入れましょう。
- 車が動き出したら、車を止めようとせずに周囲にいる人へ大声で危険を知らせましょう。
今月のクイズの答え
-
(3)
10年以上
運転に対する慣れにより、パーキングブレーキのかけ忘れ等で事故を引き起こしている様子がうかがえます。
図4:自然発車事故を起こしたドライバーの運転免許取得経過年数の割合(2009~2013年と2014~2018年)
- 出典:公益財団法人 交通事故総合分析センター イタルダインフォメーションNo.134「自然発車による事故」より