To Be a Good Company

二輪車乗車中の事故を防ぐ

2022年3月号

今月のクイズ

2020年に発生した交通事故のうち、二輪車が第1当事者(最も重い過失がある)だった事故は12,574件で、全体の約4%を占めていました。では、二輪車が第2当事者(2番目に過失がある若しくは人的被害が最も重い)だった事故の交通事故全体に占める割合を、次の中から選んでください。

  • (1)
    約3%
  • (2)
    約7%
  • (3)
    約11%

「混雑した電車を避けるため、バイクで通勤しようかな」と考えている方や、「あたたかくなってきたらツーリングしたい」と心待ちにしている方もいらっしゃることでしょう。しかし、シートベルトもエアバッグも無い二輪車に乗って事故に遭遇すれば、死傷する危険性が高くなります。
今月は、二輪車の死傷事故を通して、二輪車乗車中の事故を防ぐためにはどうしたらよいのかをみてみましょう。

二輪車の事故は、四輪車との「出会い頭」や「右直」事故が多い

2015~2019年の5年間に起きた交通事故による二輪車運転者の死傷者数は293,298人でした。二輪車側の要因をみると「人的要因なし」が約36%と最も多くなりますが、相手方の発見の遅れにつながる「安全不確認」が約27%、相手の動きを見誤る「動静不注視」も約22%と多くを占めています。
二輪車の死傷者数を事故類型別にみると「車両相互」が95%を占めており、その相手車両の92%は四輪車でした。二輪車の事故の多くは四輪車との衝突事故であることがわかります。事故類型をさらに詳しくみると「出会い頭」が最も多く、信号機の無い交差点等で安全確認を怠ったり、相手の動きを見誤ったりして事故に至る様子がうかがえます(図1)。
一方、交差点での右折車と直進車の事故である「右直」事故の当事者の行動パターンをみると、右折してきた四輪車(第1当事者)と、直進する二輪車(第2当事者)のパターンが最も多く91%を占めています。その右折四輪車側の人的要因の88%が「発見の遅れ」でした。また、「右直」事故時の二輪車側の危険認知速度(危険を認知した時点の速度)をみると、昼夜ともに20km/h超~30km/h以下が最も多くなっています(図2)。二輪車側が適切な速度で通過しようとしていても、右折する四輪車側が二輪車を発見するのが遅れたり、二輪車の動きを見誤ったりして事故を起こしている様子がうかがえます。さらに、この危険認知速度を事故リスク*にしたものをみてみると、速度の上昇に伴い事故のリスクが大きくなります(図3)。とくに夜間は30km/hまで急激に上昇しています。直進二輪車がヘッドライトを点けていても、右折四輪車側の気付きが遅い、あるいは気付いていても二輪車が交差点に入ってくるタイミングを四輪車側が見誤る危険性があるようです。昼夜を問わず、二輪車は交差点に差し掛かる前に、十分に速度を落とし、相手側の動きを見極めて通過する必要があります。

図1:事故類型別二輪車運転者の死傷者数(第1第2当事者合計、2015~2019年)
  • 出典:
    一般社団法人 日本自動車工業会/公益財団法人 交通事故総合分析センター(共同研究報告書 R02-07) 令和3年3月「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究-二輪車の右直事故-」より弊社作成
図2:右直事故時の昼夜別「直進二輪車危険認知速度別二輪運転者の死傷者数」(第1第2当事者合計、2015~2019年) 図3:右直事故時の昼夜別直進二輪車危険認知速度別の事故リスク*(2015~2019年)
  • *
    事故リスク=「直進二輪車危険認知速度別二輪運転者の死傷者数」÷「危険認知速度別第二当事者(直進二輪車)法令違反無し事故件数」

二輪車乗車中の事故を防ぐために

二輪車乗車中の事故を防ぐためにはどうしたらよいのかをみてみましょう。

信号機の無い交差点では、停止できる速度に減速し、十分な安全確認を行って通過しましょう

見通しの良い悪いにかかわらず、信号機の無い交差点では「出会い頭の危険」を考え停止できる速度に減速し、一時停止の標識がある箇所では必ず停止しましょう。
十分な安全確認を行い、車両や歩行者が来る場合は通り過ぎるのを待ってから、ゆっくりとした速度で交差点を通過しましょう。

信号機のある交差点では、十分に速度を落とし右折車の動きに注意を払い、右斜め前や並走する四輪車を追い抜かないようにしましょう

右折車側から直進する車両をみると、四輪車より車体の小さい二輪車は実際の距離より遠くに見えるため、「曲がりきれる」と判断してしまうケースがあります。信号機のある交差点を直進で通過するときは、右折車のドライバーが見誤る可能性も考えて十分に速度を落とし、右折車の動きにも注意を払いましょう。
四輪車が自車の右斜め前や横並びで走行している場合、交差点内の右折車側からは二輪車を確認することが難しくなります。四輪車を追い抜かずに交差点を通過しましょう。また、青信号なのに四輪車が速度を落とし停止した場合は「交差点内で何かあった」と考え、自車も同様に速度を落とし停止して安全確認を行いましょう。

図4:交差点で四輪車と走行する場合の注意点

夜間は速度を落として走行し、ヘッドライトはハイビームにし、ヘルメットや服装は暗闇でも目立つようにしましょう

夜間は速度を落として走行しましょう。
夜間に走行するときは、視界を確保すると同時に、相手側に自車の存在をアピールするため、ヘッドライトはハイビームにしましょう。ただし、対向車や先行車がいる場合はロービームに切り替えましょう。ヘルメットや服装は暗闇に溶け込まない明るい色を選び、反射シールやバンドを身に着けて、夜間でも目立つようにしましょう。

二輪車に乗るときは、ヘルメットは正しく装着し、胸・腹部のプロテクターを着用しましょう

シートベルトもエアバッグも無い二輪車で事故に遭遇し、頭部や胸部、腹部を損傷すれば命に係わる重傷を負いかねません。ヘルメットのあご紐を締めなかったり、手軽な服装で二輪車を運転したりすると死亡事故につながりやすくなります。


二輪車を安全運転するには

今月のクイズの答え