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睡眠時無呼吸症候群(SAS)が運転に与える影響

2022年4月号

今月のクイズ

一般のドライバーに比べ睡眠時無呼吸症候群(SAS)患者が交通事故を起こす確率を、次の中から選んでください。

  • (1)
    ほぼ変わらない
  • (2)
    一般ドライバーよりSAS患者の方が1.5倍多い
  • (3)
    一般ドライバーよりSAS患者の方が2.5倍多い

会議中に眠気が強くなって「ハッと気付いたら話が先に進んでいた」という経験はありませんか?「疲れのせい」かもしれませんが、もしかしたら日中に「瞬間的に睡眠状態に陥る」症状の病気が潜んでいる可能性もあります。運転中に「瞬間的に睡眠状態に陥る」ことがあったら、重大事故につながりかねません。
今月は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病気が運転に与える影響を通して、健康起因に関する事故をなくすためにはどうしたらよいのかをみてみましょう。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とはどんな病気で何が怖いの?

人は眠りにつくと筋肉が緩むため、仰向けで寝ているときに舌の奥などが重力に従って喉の奥に沈み気道が狭くなります。その狭い気道を空気が通るときに発生する振動音が“いびき”です。さらに、舌の奥などが完全に沈み込み気道が塞がれてしまうと、呼吸が停止し無呼吸の状態が発生します。睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に呼吸が停止、または浅く・弱くなる状態が頻繁に起きる病気です。SASに罹患すると質の良い睡眠がとれなくなるため、日中に強い眠気や疲労等を伴い、運転中に突然意識を失うような眠りに陥る危険性があります。

図1:睡眠時の気道の様子

また、SASにより一時的な酸欠状態になると、心臓は酸素を取り込もうと心拍数を上げるため大きな負担がかかり、さらに血圧を押し上げます。この状態が一晩に何回も起き、治療せずに繰り返されると、高くなった血圧は動脈を傷つけ脳卒中や虚血性心疾患などの病気を発症し、運転中の突然死につながる危険性が高まります。
2013年~2019年の7年間に、脳・心臓疾患や体調不良等により、運転操作に支障を及ぼす健康起因事故を起こして死亡した事業用自動車のドライバーは327人でした。その疾病の内訳をみると「心臓疾患」「脳疾患」、さらに高血圧が関連する「大動脈瘤及び解離」を合わせると、全体の約79%を占めていました。この全てがSAS患者では無かったとしても、健康起因による事故は恐ろしいことがわかります(図2)。

図2:健康起因により死亡した事業用自動車のドライバーの疾病別内訳(2013年~2019年)
  • 出典:
    国土交通省 自動車局 安全政策課 2020年2月「健康起因事故の現状と国の取組について」より弊社作成

SASの主な症状は?

次の症状がある場合は、まずは病院で診察を受けましょう。

周りからこう言われたことはありませんか?
  • いびきがしばらく止まったあと「ガガッ」という音とともにいびきが再開する
  • いびきが朝まで続く
  • 最近急にいびきが大きくなり、音も変わってきた
  • 仰向けに寝るといびきが大きくなる
  • いびきの強弱がある

こんな自覚症状はありませんか?
  • 息が苦しくて目が覚める
  • 朝起きたときに頭が痛い、頭が重い
  • 日中に強い眠気を感じる

    • 注)
      日中に眠気を感じない場合があります。疲れや倦怠感が続くと「仕事が忙しく疲れてる」と捉えてしまいがちになるので、SASの症状として自覚しない場合があり注意が必要です。

早めの発見・適切な治療が大切!

SASは、高血圧などの生活習慣病を併発する可能性が高いので、早めの発見、適切な治療が大切です。しかし、睡眠中に呼吸が止まっているかどうかは自分では分かりません。では、どうしたらSASの症状を発見できるのでしょうか。

1. 専門病院に相談しましょう

SASの診療を行っている病院に相談しましょう。
(無呼吸ラボ:https://mukokyu-lab.jp/でSASを扱う全国診療施設の検索ができます。)

2. スクリーニング検査・簡易検査(簡易式PSG検査)をしましょう

SASかどうかを判別するために、パルスオキシメーターを使ったスクリーニング検査をします。さらに、重症度を判定するために簡易検査をします。病院によっては機器の貸出しがあり、自宅で睡眠時に検査を行うこともできます。

  • ご注意ください
    重症度や病状によっては、すぐ治療へ

3. 精密検査(PSG検査)を受けましょう

スクリーニング検査・簡易検査で精密検査が必要だと判断された場合は、脳波や心電図などの検査も加えて病院で一泊し詳しく検査します。

SASと診断されたら、必ず治療しましょう

症状に応じて、生活習慣の改善や減量、マウスピース(口腔内装置)、CPAP療法(睡眠時に機器を装着する治療)など日常生活の中で治療を行うことができます。
早めの発見、早めの治療が健康な体をつくり、ひいては生活習慣病の予防や交通事故の防止につながります。
(お子様や痩せている成人の方は、喉の奥にあるリンパ腺の拡大や扁桃腺、鼻の奥にあるアデノイドの肥大により気道が塞がりSASになることがあります。その場合は外科手術が必要となることもあります。)


睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、質の良い睡眠がとれないことにより、日中に強い眠気や疲労等を伴い、運転中に突然意識を失うような眠りに陥り事故につながる危険性があります。健康起因に関する事故をなくすためには、SASの早めの発見、適切な治療が大切です。

今月のクイズの答え