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高齢ドライバー<75歳以上>の運転免許更新が一部変わります

2022年5月号

今月のクイズ

2020年中に自動車のドライバーが起こした(第1当事者)交通事故件数は276,421件でした。そのうち75歳以上のドライバーが起こした事故件数を次の中から選んでください。

  • (1)
    4,943件(約2%)
  • (2)
    14,943件(約5%)
  • (3)
    24,943件(約9%)

高齢ドライバーの運転操作の誤りなどによる交通事故の報道が減りません。
今月は、一定の違反歴がある75歳以上のドライバーに対し、免許更新時の運転技能検査が新設された背景を通して、高齢ドライバーの方が交通事故を防ぐためにはどうしたらよいのかをみてみましょう。

一定の違反がある75歳以上のドライバーは「運転技能検査」に合格しないと免許更新ができない !!

75歳以上の普通自動車運転免許保有者のうち、過去3年間に一定の違反行為(表1)があったドライバーは7.2%です(図1)。
一方、過去3年間に死亡・重傷事故を起こした75歳以上のドライバー(10万人当たり)のうち、過去3年間に一定の違反行為があったドライバーの人数割合は、全体と比べると約2.1倍も多くなっています(図2)。

図1:75歳以上の普通自動車運転免許保有者数に占める運転技能検査対象ドライバーの割合 図2:死亡・重傷事故を起こしたドライバー(10万人当たり)の比較

表1:一定の違反行為(11項目)

信号無視 赤信号での交差点進入等
通行区分違反 反対車線へのはみ出し、逆走等
通行帯違反等 追越車線の通行、路線バス等が接近してきたときに優先通行帯から出ない行為等
速度超過 最高速度を超える速度で運転
横断等禁止違反 他の車両等の交通を妨害するおそれのあるときに横断、転回、後退等をする行為/道路標識等により横断、転回又は後退が禁止されている場所でのこれらの行為
踏切不停止等・遮断踏切立入り 踏切の直前で停止せずに通過等
遮断機が閉じようとしているとき等に踏切に入る行為
交差点右左折方法違反等 左折時にあらかじめ道路の左側端に寄らない等/環状交差点での右左折時にあらかじめ道路の左側端に寄らない等
交差点安全進行義務違反等 信号機のない交差点で左方から進行してくる車両の進行妨害等/優先道路を通行する車の進行妨害等
交差点進入時・通行時における安全不確認等
環状交差点内を通行する車両の進行妨害等
環状交差点進入時・通行時における安全不確認等
横断歩行者等妨害等 横断歩道を通行している歩行者の通行妨害等
安全運転義務違反 前方不注意、安全不確認等
携帯電話使用等 携帯電話を保持して通話しながらの運転等(交通の危険を生じさせた場合を含む。)

2022年5月13日から、75歳以上のドライバーの方で過去3年間*1に一定の違反行為や交通事故を起こしていた場合は、免許更新時に実車による「運転技能検査」を受けることが義務付けられます。検査では、指示速度による走行、適切な一時停止、安全な信号通過や右・左折、段差に乗り上げたときの適切な運転操作等の課題を実施し、採点されます。免許更新期間の満了までに運転技能検査に合格しない場合は、免許更新ができません。運転技能検査を通して、適切な運転技能を再確認することは、安全運転を続けるためにも重要になります。

図3:75歳以上のドライバー 普通運転免許更新時の概要

高齢ドライバーが関係する交通事故を防ぐためには

免許更新後、常に適切な運転技能を維持し、交通事故を防ぐためにはどうしたらよいのかをみてみましょう。

安全確認を十分に行い、慎重な運転操作を心がけましょう

運転経験が豊富になるほど、自分の運転は「大丈夫」と思い込み、交通環境への油断や習慣化された運転をしがちになります。しかし、若いころよりも確実に身体能力や情報処理能力は低下しています。不意に自転車が現れて慌てたり、交差点を右折するのに焦ったりしたとき、判断や操作を誤る可能性が高くなります。
一時停止の標識があるところでは、停止線で車を止め、安全確認を十分に行いましょう。交差点での右折や車庫入れなど複雑な運転操作を要するときは、一つ一つ順番に安全確認を行い、慎重な運転操作を心がけましょう。

定期的に眼科検診を受けましょう

ご自身に自覚が無くても、加齢とともに視力の低下や視野が狭くなり、さらに眼球を動かす筋肉も衰えて動体視力が低下します。そうなると、運転中に信号や標識を見落としやすくなり、歩行者や車両の動きを的確にとらえることが難しくなるなど、危険の発見に遅れが生じてしまいます。視力検査はもちろんのこと、定期的に眼底検査を含む眼科検診を受け、問題があれば早期に治療を行いましょう。

サポカーSワイド搭載車への買い替えと、サポカー限定免許への切り替えを検討してみましょう

ドライバーの運転をサポートし、安全を支援するシステムを搭載した車が実用化されています。中でも、サポカーSワイドは、事故を未然に防いだり被害を軽減したりすることが可能な先進安全技術搭載車です。登録台数10万台当たりの全車両とサポカーSワイド搭載車の事故件数を比べると、サポカーSワイドは事故件数が約41.6%も減少しました(図4)。
また、今回の法改正では、本人の申請により普通自動車運転免許をサポカー限定条件付き免許へ切り替えることができるようになりました。「運転免許返納を考えているけど、移動に車が必要だ」「運転を続けるために、家族を少しでも安心させたい」という方は、サポカーSワイド搭載車の買い替えと同時に、サポカー限定免許への切り替えも検討してみましょう。ただし、安全装置を頼りすぎず、装置の機能を正確に把握した上で、上手に活用しましょう。

図4:登録台数10万台当たりの第1当事者事故件数の比較(全車両とサポカーSワイド搭載車/2017年5月~2018年12月)
  • 出典:
    警察庁 令和2年3月「高齢運転者交通事故防止対策に関する調査研究報告書」より弊社作成

「セーフティ・サポートカー(サポカー)」とは衝突被害軽減ブレーキを搭載した、全ての運転者に推奨する自動車です。

「セーフティ・サポートカーS(サポカーS)」とは衝突被害軽減ブレーキに加え、ペダル踏み間違い急発進抑制装置等を搭載した、特に高齢運転者に推奨する自動車です。

サポカーSは衝突被害軽減ブレーキの機能に応じて区分が分かれ、そのうちの一つが「サポカーSワイド」です。

ワイド 衝突被害軽減ブレーキ(対歩行者・対車両)、ペダル踏み間違い急発進抑制装置(マニュアル車は除く。)、車線逸脱警報(車線維持支援装置でも可。)、先進ライト(自動切替型前照灯、自動防眩型前照灯又は配光可変型前照灯をいう。)


高齢ドライバーが関係する交通事故を防ぐためには

今月のクイズの答え