十分な車間距離をとろう!

2022年8月号

今月のクイズ

2021年中の交通事故件数のうち、追突事故が占める割合は約31%でした。では、高速道路における交通事故件数のうち、追突事故が占める割合を次の中から選んでください。

  • (1)
    約44%
  • (2)
    約55%
  • (3)
    約66%

道路を走行するときは、同じ車線を走る前の車が急停止したときに追突を回避できるよう車間距離を保たなければいけません(道路交通法第26条)。あなたは、十分な車間距離を保っていますか?
今月は、車間距離が短いことにより起きる交通事故やトラブルを通し、十分な車間距離を保つためにはどうすればよいのかをみてみましょう。

短い車間距離は追突事故を起こす危険性と、あおり運転に間違えられる可能性がある

JAFが行った自動車教習所の指導員へのアンケート調査で「路上教習時、もっとも遭遇する一般車両の運転(ルール遵守がおろそかになっているもの)は何ですか?」という質問に、約61.2%が「車間距離が短い」と回答しました(図1)。ルール遵守がおろそかになっている要因について聞くと「慣れ、経験不足から周りに流されている」「みんなやってるし今日だけは、今だけは大丈夫だろうというように安全意識も薄れていく」などの回答がありました。
車間距離が短いと、前の車が急停止したときに追突事故を回避できない危険性があります。2021年に起きた追突事故を年齢層別(免許保有者10万人当たり)にみると、16~29歳の若年層の追突事故が平均の2倍超も多く発生しています。慣れや経験不足から周りに流されたり、今だけは大丈夫と思い込んだりして車間距離が短くなっている様子がうかがえます。30歳以降は大幅に減少しますが、どの年齢層でも追突事故は一定程度発生しています。運転経験が豊富なほど適切な車間距離を忘れ、自分の感覚による車間距離へと置き換わっている可能性があります(図2)。若い世代はもとより中高年層も、運転に慣れ過ぎず安全意識をもって適切な車間距離を把握することが大切です。
また、短い車間距離は、前の車に「あおられてる?」と思わせる可能性があります。警察庁のあおり運転に関するアンケートで回答したドライバーのうち、約35%があおり運転の被害経験があると答えています。その被害内容は「後方からの著しい接近」が約82%と最も多くなりました(図3)。自身にあおる意思が無くても、短い車間距離は前の車に無用な不安やいらだちを与え、場合によってはトラブルに発展する危険性をはらんでいます。

図1:路上教習時、もっとも遭遇する一般車両の運転(ルール遵守がおろそかになっているもの)
  • 出典:
    JAF(一般社団法人 日本自動車連盟)本部広報2019年6月「自動車教習所の指導員がもっとも感じる”おろそかになっているルール”「車間距離が短い」が61.2%」より弊社作成
図2:年齢層別免許保有者10万人当たりの追突事故(2021年中/第1当事者)
  • 出典:
    公益財団法人 交通事故総合分析センター 令和3年版交通事故統計表データ「事故類型別(詳細)・性別 年齢層別 全事故件数(第1当事者)」/警察庁交通局運転免許課 令和3年版「運転免許統計」より弊社作成
図3:あおり運転の被害の内容(複数回答可)
  • 出典:
    警察庁 令和元年10月「あおり運転に関するアンケート」より弊社作成

十分な車間距離をとるためには

適切な車間距離とは、前の車が急停止したときに追突しないよう安全に停止できるだけの距離を保つことをいいます。一般道路では40km/hの速度での停止距離は約22m、高速道路では80km/hの速度での停止距離は約80mが必要とされますが、車を運転しながら距離を測ることは容易ではありません。では、十分な車間距離を把握するためにはどうしたらよいのかをみてみましょう。

「ゼロイチ・ゼロニ」と2秒数える車間時間を利用して車間距離を確認しましょう

日本交通心理学会が行った車間距離測定実験によると、プロドライバーが走行した車間距離を時間に換算して「車間時間」を算出したところ、安全を感じ始める距離が約1.5秒、近すぎるとも遠すぎるとも感じない走りやすい距離が約1.8秒という結果でした。一方、統計的には車間時間が2秒以内での事故は死亡事故等の重大事故が多く、2秒以上離れていると大きな事故となっていないことが示されています。実験結果と統計的事実から、安全で走りやすいと感じる車間時間の1.8秒では実際には安全とは言えず、前の車がある地点を通過してから2秒経った後で、自分の車がその地点を通過する距離が適切な車間距離になると考えられます。

図4:一般道路における車間距離確認方法

一般道路では、前の車が標識等を通過してから自車が通過するまで、ゆっくり2秒数える車間時間を利用して距離を確認します。焦って数えないために「ゼロイチ・ゼロニ」と、“ゼロ”を付けてゆっくり確認するとよいでしょう。

図5:高速道路における車間距離確認方法

高速道路では余裕をもって3秒を「ゼロイチ・ゼロニ・ゼロサン」と数えて距離を確認しましょう。車間距離確認の標識やレーンマーク等がある場合は、それを利用して十分な距離を確認しましょう。

疲れや天候の悪化など運転時の状況によっては、車間距離を長くとるようにしましょう

車が停止するまでには、運転者が危険を感じてからブレーキを踏み、ブレーキが実際に効き始めるまでの間に車が走る距離(空走距離)と、ブレーキが効き始めてから車が停止するまでの距離(制動距離)とを合わせた距離(停止距離)を必要とします。
身体が疲れているときは、危険を感じてブレーキを踏むまでの時間がかかるため空走距離が長くなるおそれがあります。いつもより車間距離を長めにとるようにしましょう。

図6:停止距離と車間距離

雨天で路面が濡れているときやタイヤがすり減っているとき、重い荷物を載せているときや坂道で走行するときは、ブレーキの効きが弱くなり制動距離が長くなることがあるので、道路条件の良いときに比べて2倍の車間距離をとるようにしましょう。
また、前の車がトラックのときは前方の視界が悪くなるので、車間距離を長くとって視界を確保しましょう。


今月のクイズの答え