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高齢者が自転車に乗っていたら?高齢歩行者を見かけたら?

2022年9月号

今月のクイズ

2021年中の高齢者(65歳以上)の自転車事故(13,971件)は、自転車事故全体(72,662件)の約19%を占めていました。では、同年に起きた高齢歩行者の事故(12,649件)が、歩行者事故全体に占めた割合を次の中から選んでください。

  • (1)
    約14%
  • (2)
    約24%
  • (3)
    約34%

自転車乗車中の高齢者が交差点を安全確認をせずに通過しようとしたり、高齢歩行者が横断歩道以外の道路を渡ろうとしたりして、ヒヤッとしたことはありませんか?
今月は、自転車乗車中及び歩行中の高齢者(65歳以上)の交通事故の状況を通し、事故を防ぐためにはどうすればよいかをみてみましょう。

買物や散歩に出かける昼前後や薄暮時に事故が多くなる

2021年中の交通事故による高齢者(65歳以上)の死傷者数は60,238人で、そのうち自転車乗車中と歩行中が約44%を占めました(図1)。65歳未満と比べ約1.7倍も多くなっています。
事故が起きた時間帯をみると10時から12時が最も多く、歩行中は夕方も増加します(図2)。買物や散歩に出かける日中の事故はもとより、周囲の視認が難しくなる薄暮時から夜にかけての時間帯に高齢歩行者の事故が多くなると思われます。

図1:交通事故時の状態別死傷者数の割合
(65歳以上と65歳未満の比較/2021年中)
図2:時間帯別の死傷者数(65歳以上の自転車乗車中と歩行中/2021年中)

高齢者の自転車乗車中は出会い頭で、歩行者は横断歩道以外で横断し事故に遭う

事故時の行動等(事故類型)をみると、自転車乗車中は車両と衝突する事故が約88%を占め、なかでも出会い頭が約45%と最も多くなっています。一方、歩行中は横断中が約60%を占めていました。
法令違反をみると、自転車乗車中は約66%の割合で自転車側に法令違反があり、その内容は安全不確認と交差点安全進行が多く、法令違反の約49%を占めています(図3)。交差点での安全確認を怠ったり、速度を落とさないまま交差点に進行したりして、出会い頭に事故に遭う様子がうかがえます。歩行中は、歩行者側の法令違反ありが全体の約22%と低いものの、その内容をみると横断歩道以外が最も多く、走行車両の直前後が続いています(図4)。横断歩道まで行かず道路の途中で横断したり、「車が通り過ぎたから渡れる」と道路上の安全確認を行わないまま道路を横断したりして事故に遭遇すると思われます。

図3:法令違反の有無/法令違反別の死傷者数の割合
(65歳以上の自転車乗車中/2021年中)
図4:法令違反の有無/法令違反別の死傷者数の割合
(65歳以上の歩行中/2021年中)

自転車乗車中や歩行中の高齢者に注意を払い、思いやりのある運転を心がけましょう

高齢者は、年を重ねるほど身体能力が低下します。視野が狭くなり、聴力も弱って聞こえにくくなるため、近づいてくる車に気付かないおそれがあります。加えて、目の前を通り過ぎる車に注意が向くあまり、他車への注意がおろそかになり、自分の置かれている状況が「危険な状態」と認識できていない場合があります。
また、高齢者になると筋肉が衰えるため歩幅が狭くなり、歩く速度も遅く疲れやすくなります。足取りが重いため横断歩道までの距離を遠く感じ、横断歩道以外の場所で道路を横断しようとする可能性があります。しかし、道路を横断しはじめたものの、途中で危険に気付いたとき素早い回避行動がとれず事故に遭う危険性があります。ドライバーは、自転車乗車中の高齢者や高齢歩行者の存在に注意を払い、思いやりのある運転を心がけましょう。

自転車乗車中や歩行中の高齢者との事故を防ぐには

自転車乗車中や歩行中の高齢者との事故を防ぐために、ドライバーはどのようなことに注意すればよいのかをみてみましょう。

交差点では、安全確認を十分に行ってから進行しましょう

交差点では、自転車に乗った高齢者が安全確認をせずに、そのままの速度で進入してくる可能性があります。ドライバーは、信号機の無い交差点を通過するときは、徐行または一時停止して交差点内の安全確認を十分に行ってから進行しましょう。信号機のある交差点でも、交差点内の安全確認を十分に行ってから通過しましょう。

歩道を歩く高齢者をみかけたら速度を落として十分注意し、横断しようとしたら車を停止しましょう

高齢になると視野が狭くなり、聴力も弱って聞こえにくくなるため、自車が近づいていることに気付かない場合があります。そのため、歩道を歩く高齢者が道路の安全確認を行わずに横断しようと車道に出てくる可能性があります。歩道の車道寄りを歩く高齢者をみかけた場合は「渡るかもしれない」と考え、車の速度を落とし、高齢者との距離をとって注意しながら通過しましょう。
また、道路を横断しようとしている高齢歩行者は、自車の存在に気付いても「車の方が止まってくれる」と判断し、歩みをやめない可能性があります。高齢歩行者が横断歩道以外の道路を横断しようとしている場合は、車の速度を落とし、徐行で様子をみましょう。
高齢歩行者が横断し始めた場合は、車を停止し、高齢歩行者が横断し終わるのを待ちましょう。このとき、不要なクラクションを鳴らすと高齢歩行者が焦り、危険な状況に至る場合があります。安全を確保するためにやむを得ずクラクションを鳴らす場合は、強く鳴らさず、高齢者に気付かせる程度の音を鳴らすように配慮しましょう。

薄暗くなったら早めにヘッドライトを点けましょう

秋から冬にかけて日が暮れるのが早くなり、薄暗い時間が長くなります。また、秋冬の服装は暗い色が多くなるため、薄暗い状態では歩行者の発見が難しくなります。薄暗くなったら早めにヘッドライトを点け、前方の視界を明るく見やすくしましょう。
ヘッドライトの点灯は、高齢者に自車の存在を気付かせることにもなります。


今月のクイズの答え