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薄暮時間帯の安全走行

2022年10月号

今月のクイズ

夕暮れ時を示す「薄暮時間帯」は、視界が徐々に悪くなるため交通事故が起きやすくなります。交通において、この「薄暮時間帯」とは具体的にどの時間帯をいうか、次の中から選んでください。

  • (1)
    日没時刻前の1時間をいいます
  • (2)
    日没時刻後の1時間をいいます
  • (3)
    日没時刻の前後1時間をいいます

夕暮れ時に「まだ明るい」と感じていても、周囲は徐々に薄暗くなり視界が悪くなります。そのような薄暮時間帯*1を走行中に、歩行者が道路を横断しようと自車の前に出てきたら、あなたは事故を回避できますか?
今月は、薄暮時間帯に多い重大事故を通し、薄暮時間帯に安全走行するためにはどうしたらよいのかをみてみましょう。

夜間の中でも、薄暮時間帯に重大事故が起きやすい

2021年に起きた夜間の事故(76,962件)は、交通事故全体(305,196件)の約25%を占めていました。一方、夜間の死亡事故(1,179件)は、死亡事故全体(2,583件)の約46%を占めており、夜間は重大事故が多くなる傾向があります。
2017~2021年の5年間に起きた時間帯別の死亡事故件数をみると、夜間の中でも暗闇になる20時以降と交通量の違いはありますが、薄暮時間帯の17~19時台に最も多く発生しています(図1)。日没前後の薄暮時間帯は、周囲が見えにくくなったことにドライバーが気付かない状況が生じ、危険の発見が遅れるため、重大事故につながりやすくなります。

図1:時間帯別の死亡事故件数(2017~2021年)

薄暮時間帯は、ドライバーも歩行者も互いの存在に気付くのが遅れ事故が起きる

薄暮時間帯の死亡事故(時間当たり)を当事者別にみると、「自動車対歩行者」が49%を占め、昼間と比べ約2.5倍も多くなります(図2)。事故時の歩行者の行動は「横断中」が86%を占め、そのうち「横断歩道以外の場所を横断」が76%を占めました(図3、4)。さらに、「横断歩道以外の場所を横断」した歩行者の法令違反をみると、「走行車両の直前直後横断」が最も多くを占めています(図5)。薄暮時間帯は、周囲の視界が徐々に悪くなるためドライバーも歩行者も互いの存在に気付くのが遅れたり、距離や速度がわかりにくくなったりするため、歩行者との重大事故を起こす危険性が高まります。

図2:当事者別の時間当たりの死亡事故件数の割合
(2017~2021年)
図3:薄暮時間帯における「自動車対歩行者」の事故類型別死亡事故の割合(2017~2021年)
図4:横断場所の内訳(2017~2021年)
図5:横断中のうち横断歩道以外の横断における歩行者の法令違反件数の内訳(2017~2021年)

薄暮時間帯の安全走行とは

薄暮時間帯は、周囲の危険に気付きにくくなることに加え、一日の疲れでぼんやりしていたり、帰りを急いでいたりして事故を起こす危険性が高まります。さらに、歩行者側は「まだ明るいからドライバーは自分が見えている」と思い込み道路を横断し始める危険があります。薄暮時間帯に、いち早く危険に気付き、安全に走行するためには、どうすればよいかをみてみましょう。

早めにヘッドライトを点け、ハイビームにして走行しましょう

地域によって異なりますが、10月になると16時ごろに薄暗くなり始めます。「まだ明るい」と感じていても視界は徐々に悪くなっており、事故が起きやすい状態に陥ります。いち早く歩行者を発見し事故を回避できるように、早めにヘッドライトを点けましょう。また、視界を十分に確保するために、ヘッドライトはハイビームにして走行しましょう。ただし、先行車や対向車がいる場合には、相手のドライバーが眩しくならないようにロービームに切り替えましょう。

こまめにスピードメーターを確認し、昼間より速度を抑えましょう

周囲が暗くなり、視界を流れる景色がほとんど感じられなくなると、実際の速さより遅く感じてしまう傾向があります。「そんなに速度は出ていない」と思い込まずに、適正なスピードで走行しているか、時々スピードメーターで確認し、昼間より速度を抑えましょう。

横断歩道ありの標識や標示が現れたら、いつでも止まれるようにしましょう

薄暮時間帯に、信号機のない横断歩道で起きた歩行者との死亡事故件数を、自動車側の危険認知速度*2別にみると時速30km超から60km以下が多くなります(図6)。横断歩道手前で自動車が十分に減速していないことが見て取れます。歩行者が横断歩道を横断中、もしくは横断しようとしているときは、その手前で一時停止しなくてはいけません。
また、横断歩道付近に歩行者が確認できなくても、不意に現れる可能性があります。この先に横断歩道があることを示す標識や標示が現れたら、すぐにブレーキの上に足を移動して、いつでも止まれるようにしましょう。

図6:薄暮時間帯の信号機のない横断歩道における自動車の危険認知速度別の歩行者の死亡事故件数(2016~2020年)

横断歩道以外の場所でも、道路の右側から横断する歩行者に注意を払いましょう

夜間は、道路の右側から横断してきた歩行者との死亡事故が多くなります(図7)。夜間に限らず薄暮時間帯も道路右側は視界が悪くなります。また、対向車のヘッドライトに目が眩むと、対向車の後から横断する歩行者を発見することが難しくなります。とくに横断歩道以外の場所で右側から歩行者が横断してきた場合、発見が遅れてしまう可能性があります。薄暮時から夜間は常に「道路の右側から横断する歩行者がいるかもしれない」と考えて、注意を怠らないようにしましょう。

図7:自動車直進時と歩行者横断中の死亡事故における昼夜別の歩行者の横断方向(2009年中)

今月のクイズの答え