パワーウィンドウやスライドドアの挟まり事故に注意!
2023年6月号
今月のクイズ
JAFが行った「閉まりかけたパワーウィンドウを手で止められるか?」(ミニバン/後部座席右側窓)の実験で、50代の男性は両手でも片手でも止めることができました。では、8歳の男児は止めることができたか、次の中から選んでください。
- (1)両手でも、片手でも止められなかった。
- (2)両手では止められたが、片手では止められなかった。
- (3)両手でも、片手でも止めることができた。
スイッチ一つで窓を開閉できるパワーウィンドウや、狭いところでもドアの開閉が可能なスライドドアはとても便利な機能ですが、使用するときに注意を払わないと手指や足、衣服などの挟まり事故を起こす危険性があります。
今月は、パワーウィンドウやスライドドアに手指などを挟まれる事故の危険性を理解し、挟まり事故を防ぐにはどうすればよいかをみてみましょう。
運転席以外のパワーウィンドウを閉めるとき、ドライバーは細心の注意を払う必要がある
ドライバーがパワーウィンドウの操作を誤り、後部座席にいる子どもの手指などが挟まる事故が起きたとき、挟まれた手指にはどれくらいの力がかかるのでしょうか?
JAFの実験によると、パワーウィンドウのスイッチを引き続け窓が閉まるときの力(kgf)を、セダン(挟み込み防止機能*1全席あり)と軽自動車及びミニバン(挟み込み防止機能運転席のみ)で計測したところ、7~34.6kgfの力がありました(図)。別の実験において挟み込み防止機能のない軽自動車では大根、ミニバンではごぼうをパワーウィンドウに挟んでスイッチを引き続けたところ、ともに簡単に切れるほどの力になりました。子どもが窓から顔を出したり、手を出したりしたときに、運転席で窓を閉めようとスイッチを引き続けたら重大事故になりかねません。また、挟み込み防止機能があっても、窓を確実に閉めるため、閉め切る直前には異物の挟み込みを感知しない領域があります。JAFの実験によると、閉め切る直前の部分に割り箸を差し込んだところ、箸は挟まったまま窓は開きませんでした。割り箸ではなく幼児の細い指だったら、重傷を負う危険性があります。挟み込み防止機能が付いているか否かにかかわらず、ドライバーは運転席以外のパワーウィンドウを閉めるときは細心の注意を払う必要があります。
- *1窓が上昇中に異物の挟み込みを感知すると、窓の上昇が止まり下降する安全装置
(車種と挟み込み防止機能あり・なし別)
- 出典:JAF(一般社団法人 日本自動車連盟)ユーザーテスト「ゴボウも大根もばっさり切れるパワーウインドーの挟みこみ」より弊社作成
スライドドアを閉めるときは、挟みそうなものがないか閉め切るまで注意を払う必要がある
消費者庁の「事故情報データバンクシステム」でスライドドアの挟まりによる事故を調べたところ、2021年12月に、自動スライドドアを閉めた際、子どもが指を挟み骨折する事故が発生していました。2022年8月には、10歳代の子どもがスライドドアとボディーの間に頭を挟まれ、レスキュー隊がドアを外して救出する事案も発生しています。2009~2022年の間で車のスライドドアに体や物が挟まれる事故や、挟まれそうになった事案は上記の内容を含めて22件*2ありました。そのうち負傷は19件で、手指の負傷が10件、頭が4件、足が3件と続きます。年齢層をみると子どもが14件と多くを占めています。
挟み込み防止機能が付いているスライドドアもありますが、閉まり切る一瞬に子どもが手指をドアと車体の間に差し込んだ場合、システムが反応しきれずにケガを負う可能性があります。自動や手動にかかわらず、ドライバーはスライドドアを閉め切るまで注意を払う必要があります。
- *2消費者庁「事故情報データバンクシステム」2023年3月30日時点
挟まり事故を防ぐためには
パワーウィンドウやスライドドアでの挟まり事故を防ぐためにはどうすればよいかをみてみましょう。
子どもが乗車するときは、パワーウィンドウやスライドドアのロック機能をONにしましょう
後部座席などで子どもが窓やドアの開閉操作ができないように、パワーウィンドウやスライドドアのロック機能をONにしましょう。
運転席から他の席のパワーウィンドウを操作するときは、声掛けや安全確認を行いましょう
運転席から他の席のパワーウィンドウを操作するときは、「窓を閉めるから手を出さないで」と声掛けをしましょう。さらに、ドライバーは自分の目で、開ける窓に手を付いていないか、閉める窓から手や顔を出していないか安全確認を行ってから、開閉の操作を行いましょう。
スライドドアの開閉操作をする前に、ドアから同乗者が離れているかを確認しましょう
スライドドアを開けるときにスライドドアに手を付けていたり寄りかかったりしていると、スライドしたドアと車体の間に手などが引き込まれる危険があります。スライドドアを閉めるときだけではなく開ける際にも、ドアから同乗者が離れているかを目視で確認しましょう。
スライドドアは全開にし、固定した状態にして乗り降りしましょう
傾斜がある場所で、スライドドアが半開きの状態のまま乗降しようとすると、突然ドアが閉まり体を挟む危険性があります。スライドドアは全開にし、固定した状態を確認してから乗り降りしましょう。
スライドドアを閉めるときは、同乗者に声掛けし、閉め切るまで注意を払いましょう
最近は、半ドア状態のスライドドアを自動的に閉め切る機能や、スライドドアを全自動で開閉させる機能を装備している車がありますが、同乗者がその機能を知らないまま閉じようとしているドアに手をかけると、挟まれる危険があります。自動や手動にかかわらず、スライドドアを閉めるときは「ドアを閉めるから手や足を出さないで」と声掛けし、閉め切るまで注意を払いましょう。
スライドドアが閉まっていることを確認してから出発しましょう
スライドドアを閉め切らないまま出発すると、走行中にドアが開いてしまう危険性があります。必ずスライドドアが閉まっていることを確認してから出発しましょう。
- 子どもが乗車するときは、パワーウィンドウやスライドドアのロック機能をONにしましょう
- 運転席から他の席のパワーウィンドウを操作するときは、声掛けや安全確認を行いましょう
- スライドドアの開閉操作をする前に、ドアから同乗者が離れているかを確認しましょう
- スライドドアは全開にし、固定した状態にして乗り降りしましょう
- スライドドアを閉めるときは、同乗者に声掛けし、閉め切るまで注意を払いましょう
- スライドドアが閉まっていることを確認してから出発しましょう
今月のクイズの答え
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(1)
両手でも、片手でも止められなかった。(他に、30代の女性は両手では止められたが、片手では止められなかった。50代の男性は片手で止められたが「止めるので精一杯」で、窓を下げることまではできなかった。)
- 出典:JAF(一般社団法人 日本自動車連盟)「ゴボウも大根もばっさり切れるパワーウインドーの挟みこみ(JAFユーザーテスト)」より
- 出典: