走行中に大地震(マグニチュード7以上の地震)が起きたときの避難行動
2023年9月号
今月のクイズ
マグニチュード7以上の大地震が発生した場合、災害対策基本法などに基づき高速道路や指定の道路に交通規制が実施され、車両の通行が禁止されます。警視庁が行った調査で、この交通規制があることを「知らない」と答えた人の割合を、次の中から選んでください。
- (1)約17%
- (2)約37%
- (3)約57%
1923年9月1日に発生した関東大震災から今年で100年になります。当時とは、建物や道路などの耐震性に違いがありますが、現在でも大きな地震が起きれば道路に亀裂やゆがみが生じます。
走行中に大地震が発生したら、あなたは安全に避難行動をとることができますか?
今月は、走行中に大地震が発生したときの運転行動に関する調査を通し、大地震発生時に安全に避難するにはどうしたらよいかをみてみましょう。
走行中に大地震が起きたとき、あなたは運転を続けますか?
大地震(津波を伴わない)が発生したときの運転継続の判断に関する意識調査をみてみましょう。地震発生時の行動について、自宅からの距離別にみてみると、「すぐに車から離れて避難する」と回答した人は距離に関係なく約15%程度で、それ以外の多くの人が「車を利用し続ける」と回答しました(図1)。自宅まで1km圏内では「そのまま自宅まで車で走り続ける」が51.2%を占めますが、自宅から遠くなるほど「車で行けるところまで行ってから、車から離れる」の回答が徐々に増えています。
また、自宅から遠方の場所で大地震に遭遇した場合の運転継続の判断をみると、人口が密集した市街地では「走り続ける」の回答が約48%と多くを占めますが、「すぐに車から離れて避難する」との回答は他に比べ約3倍になります(図2)。一方、人家がまばらな市街地や山間部などでは「走り続ける」と回答した人の割合が70%を超えています。人口が密集した市街地では、避難できる場所を見つけやすいので、避難行動をとることができると考えられますが、人家がまばらな市街地や山間部では、救助を求めにくいため「車で行けるところまで行こう」と判断して走行を続けると考えられます。
- ※構成比は小数点第2位を四捨五入して表示しているため、合計が100%にならない場合があります。
大地震発生時に車を駐車して避難するとき、あなたはどう対処しますか?
交通の方法に関する教則では『地震などの災害が発生し車を道路上において避難するときは、道路の左側に寄せて駐車し、エンジンを止め、エンジンキーはつけたままとするか運転席などの車内の分かりやすい場所に置き、窓を閉めドアロックをしないこと』とあります。では、路肩に車を停め、避難するときのドライバーの対応をみてみましょう(図3)。自宅周辺でも自宅から離れていても、「エンジンキーをつけたまま、ドアをロックしない」と回答した人は約40%程度でした。次に「エンジンキーを抜き、ドアをロックする」と回答した人が多くなりました。エンジンキーとドアロックの措置が適切ではない人にその理由(複数回答可)を聞くと「車が盗まれると困ると思った」が65.1%で最も多く、「知らなかった」が27.2%と続きました。
- 図1~3出典:交通工学論文集、第6巻、第2号(特集号B)、pp.B_1-B_10、2020.2著:萩田賢司、早川敬一、高嶺一男「大地震発生時の運転行動意識に関するインターネット調査」より弊社作成
走行中に大地震が発生したときの安全な避難行動とは
大地震が発生したとき「車で行けるところまで走ろう」と考えるのは危険です。道路が陥没したり、塀や建物が道路に崩れ落ちたりするおそれがあり、「行けるところ」までを的確に予測することが困難な状況となります。また、火災などが発生した場合、逃げようとする車や、避難のために不適切な状態で路上に駐車された車が、緊急車両の通行を妨げ被害を拡大させるおそれがあります。走行中に大地震が発生したときの安全な避難行動をみてみましょう。
大地震発生
車は路面からの衝撃をサスペンションが和らげているので、運転中のドライバーは地震に気付かないことがあります。それでも「揺れているな」「周囲の様子が変だ」と感じたら、大地震や災害が発生していると認識しましょう。
1. 車を停車しましょう
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(1)
ハンドルをしっかりと握りましょう荒れた路面を走るときのように、ハンドルをとられる危険があります。
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(2)
ハザードランプを点けましょう後続車や周囲の車に注意を促します。
-
(3)
減速し、道路の左端に寄って停車しましょう慌てて急ブレーキをかけたり、急ハンドルをきったりすると、追突などの事故を誘発します。冷静にゆっくり行動しましょう。
2. 情報を入手しましょう
ラジオやスマートフォンなどで災害情報や交通情報を確認しましょう。
カーナビなどで現在地を確認し、道路外に駐車できる場所と安全な避難先を探しましょう。高速道路や大きな幹線道路は、緊急車両の通行を円滑にさせるため通行禁止になる場合があります。該当の道路を走行している場合は、警察官などの誘導に従い道路外に移動しましょう。
3. 車を置いて避難しましょう
- できるだけ、駐車場などの道路外の安全な場所に車を移動しましょう。
- やむを得ず、道路上に車を置いて避難する場合は、次のようにしましょう。
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(1)
窓を閉め、エンジンを切りましょう
- (2)
エンジンキーはつけたままにするか運転席などわかりやすい場所に残し、ドアロックをせずに車から離れましょう
大地震が起きたとき、道路上の車両が避難する人の通行や、緊急車両の通行など災害応急対策の実施の妨げになる場合、道路管理者などは緊急車両の通行を確保するため、妨げになる車両を道路外に移動するよう命ずることができます(災害対策基本法第76条の6)。ドアロックされエンジンキーが無くドライバーもいない車が緊急車両の妨げになった場合、道路管理者などは車の所有者の同意無しにやむを得ない限度において、車を破損し移動させることができます。(災害対策基本法 第76条の6第3項)
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(1)
津波から避難するためにやむを得ず車を使用するときは
「津波警報が出ている」「同乗者が高齢なので、できる限り車で避難したい」などやむを得ず車を使用するときは、信号機の作動停止や道路の破損、道路上の障害物など、通常の交通環境から様変わりすることを念頭に、十分に注意しながら運転しましょう。
大地震が発生したら
- ハンドルをしっかりと握り、ハザードランプを点け、急ブレーキや急ハンドルを避けながら減速し、道路の左端に寄って停車しましょう
- ラジオやスマートフォンなどで災害情報や交通情報を入手しましょう
- 車を駐車場などの道路外の安全な場所に移動しましょう
- 道路上に車を置いて避難する場合は、窓を閉め、エンジンを切り、エンジンキーを付けたままにするか、運転席などわかりやすい場所に残し、ドアロックをせずに車から離れましょう
今月のクイズの答え
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(2)
約37%(警視庁「大震災発生時における交通行動等の調査結果」より)