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車が「安全に」止まるには?

2023年11月号

今月のクイズ

危険を感じてブレーキを踏み、実際にブレーキが利き始めるまでには約1秒かかります。
では、時速40kmで走行している場合、1秒間で車は何m進むでしょうか?

  • (1)
    8.3m
  • (2)
    11.1m
  • (3)
    13.9m

「危ない!」と感じてブレーキを踏むと車が止まる。当たり前のことのように思われるかもしれませんが、実際には「危ない!」と感じた瞬間から車が止まるまでには時間と距離が必要なため、必ずしも危険を回避できるとは限りません。また、止まるまでの距離はドライバーや路面の状況、タイヤの状態などによっても異なります。車は『急に』止まることができません。『安全に』止まるにはどうしたら良いかを考えてみましょう。

危ないと感じてから車が止まるまでの間にも、車は進んでいる!

一言で「車が止まる」と言っても、実際に停止するまでには「危険を感じてブレーキをかける必要があると判断する」→「足をアクセルペダルからブレーキペダルへ踏みかえる」→「ブレーキペダルを踏みこむ」→「ブレーキが利き始める」→「車が停止する」といったプロセスがあります。このプロセスの間にも車は進みますので、車は急には止まれないということになります。

車の安全装置 ー 自動ブレーキ/ブレーキアシストって?

2021年11月より、国産の新型車は「自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)」を搭載することが義務づけられています(輸入車における新型車は2024年7月から)。自動ブレーキは主にカメラやセンサーなどを用いて前の車や対象物を検知し、衝突の危険を察知するとドライバーに音で危険を知らせたり、自動でブレーキを操作することで衝突を回避、または被害を軽減したりします。
その他にはブレーキに関する安全装置として、ドライバーのブレーキペダル踏み込みを補助するブレーキアシストがあります。ブレーキアシストは、緊急時の急ブレーキなど、強い力での踏み込みが必要な場合にサポートをしてくれる装置で、力の弱い人でもしっかりと踏み込む力を得ることができます。
ただし、これらの運転支援システムはあくまでもドライバーの補助を担う装置であり、運転操作の主体は運転者とされています。事故を回避したり停止距離を短縮したりするためのものではありません。運転支援システムを過信したことによる事故も増えていますので、装置が搭載されていても安全な運転を心がけましょう。

停止距離はドライバーや路面、タイヤの状態によってさらに長くなる

停止距離には様々な要因が影響します。

ドライバーの状態

通常、人が危険を感じてからブレーキを踏み込み、実際にブレーキが利き始めるまでには1秒ほどかかると言われていますが、疲れや眠気があるときは認知や判断に遅れが生じ、反応時間に影響を及ぼします。

路面の状態

雨や雪、じゃり道などではタイヤと路面との摩擦力が低下して滑りやすくなり、停止距離が長くなります。例えば以下の表を見てみると、コンクリートの乾いた路面が0.5~1.0なのに対し、雨で濡れると0.4~0.9まで下がることがわかります。特に雨の降り始めはホコリや泥などが水滴と混ざって浮き上がることで滑りやすくなりますので、注意が必要です。また、濡れた鉄板やマンホール、雪道などでは0.2~0.5まで下がり、スリップ事故のリスクが高まります。

路面の種類別のすべり摩擦係数の範囲

路面の種類 摩擦係数の範囲
乾燥 湿潤
コンクリート舗装 0.5~1.0 0.4~0.9
アスファルト舗装 0.5~1.0 0.3~0.9
じゃり道 0.4~0.6
鉄板など 0.4~0.8 0.2~0.5
積雪路面 0.2~0.5
氷路面 0.1~0.2
  • 出典:
    警察庁交通局運転免許課監修「安全運転の知識」より弊社作成
  • 摩擦係数とは滑りにくさを数値化したもので、数値が大きいほど滑りにくいことを表しています

タイヤの状態

タイヤの摩耗により摩擦力が低下し、停止距離が長くなります。タイヤの表面にはウェア・インジケータ(スリップ・サイン)という摩耗を知らせる表示がありますので、定期的に点検しましょう。溝の深さが不足しているとタイヤがスリップしやすくなり大変危険です。

安全な速度管理の大切さ

安全に止まるために重要なのが安全な【速度管理】です。空走距離は速度に比例し、制動距離は速度の2乗に比例するため、速度の違いによって大きな差が生じます。たとえドライバーや路面の状態がベストでなくても、速度を落とすことにより、リスクを大幅に回避できるということが分かります。
道路や交通の状況、天候、視界などを考慮し、安全な速度で走行するようにしましょう。

今月のクイズの答え