飲酒運転の根絶に向けて
2023年12月号
今月のクイズ
酔いの段階には、ほろ酔い・酩酊・泥酔・昏睡の4つがありますが、「ほろ酔い」に当たる血中濃度と呼気濃度は下記のうちどれでしょうか。
- (1)血中濃度0.2~1.0mg/ml,呼気濃度0.1~0.5mg/l
- (2)血中濃度1.0~2.0mg/ml,呼気濃度0.5~1.0mg/l
- (3)血中濃度2.0~3.0mg/ml,呼気濃度1.0~1.5mg/l
飲酒運転による悲惨な交通事故が起こる度に飲酒運転に対する罰則強化や道路交通法の改正が行われてきました。2021年6月に千葉県の八街市で起きた下校中の児童5人が飲酒運転のトラックにはねられ死傷した事故を契機に、運送業などの緑ナンバー事業者に義務付けられていたアルコールチェックが、いわゆる白ナンバー事業者にも拡大されました。2023年12月からアルコール検知器を用いての酒気帯びの有無の確認が義務化されます。
特に12月は飲酒運転による死亡事故が増える傾向にあり、飲酒運転をさせない取り組みがすすんでいるにも関わらず未だに悲惨な事故は後を絶ちません。コロナ禍も一先ずの落ち着きをみせ、忘年会や新年会などでお酒を飲む機会が増えてくる時期に改めて飲酒運転について理解を深め、飲酒運転を減らすために何ができるのか考えてみましょう。
- 出典:警察庁「原付以上運転者(第1当事者)の発生時間帯別飲酒死亡事故件数・構成率(平成30~令和4年)」より弊社作成
- 出典:警察庁「みんなで守る『飲酒運転を絶対にしない、させない』」より弊社作成
白ナンバー事業者のアルコールチェック義務化
白ナンバー事業者へのアルコールチェックの義務化は、2022年4月と2023年12月に段階的に実施されました。
原則として安全運転管理者などが、運転前・運転後の計2回、ドライバーに対してアルコール検知器(自動車に備え付けられた「アルコールインターロック装置」を含む)を用いて確認・記録し、その記録を1年間保存します。直行直帰などで対面の実施が難しい場合には、ドライバーに携帯型アルコール検知器を携行させるなどした上で、携帯電話やカメラでの対話によって報告を義務づけるなど、目視と同等の方法で行わなければなりません。
2022年04月 |
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2023年12月 |
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体内のアルコールが分解されるまで
アルコールには、その影響や分解時間の目安などを示すための基準となる単位があります。「1単位(約20g前後の純アルコール)」はお酒の種類により異なり、例えば、ビールなら中ビン1本またはロング缶1本、ワインであればグラス2杯分となります。
一般的にアルコールが分解されるまでには、1単位あたり、4~5時間程かかると言われていますが、アルコールの分解にかかる時間は体調・体質・年齢・性別・体重などによる個人差が大きく、●時間あけたから安心、というものではありません。特に睡眠時は分解力が下がりますので、寝酒は大変危険です。飲酒運転をしないために、運転前は断酒するようにしましょう。
また、厚生労働省が推進している「健康日本21」では、1単位をリスクの低い飲酒の目安としています。
いま一度、日頃のお酒との付き合い方も見直してみましょう。
ビール | 500ml 中ビン1本またはロング缶1本 |
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日本酒 | 180ml 1合 |
ウィスキー | 60ml ダブル1杯 |
ワイン | 200ml グラス2杯 |
チューハイ | 350ml 7%のもの |
焼酎 | 100ml 25度のもの |
飲酒運転の背景
なぜ未だに飲酒運転はなくならないのでしょうか。その背景を探ってみましょう。
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1.
コミュニケーションツールとしての「酒のつきあい」日本社会では、飲酒をコミュニケーションツールとして活用していることが多々あり、「一杯くらい…」や「運転するのに、つい…」といった状況になりがちです。
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2.
「自分は大丈夫」という思い込みお酒が強い人の中には「酔っていない!」「これぐらいなら大丈夫!」と思い込んでいる人もいます。
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3.
職場での「かばいあい」の構造職場では互いのミスをかばいあう構造が生まれやすく、この事自体が飲酒問題を隠す温床になってしまいます。
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4.
アルコールの作用・害に関する無知アルコールの作用や害について正しい知識を持っておらず、誤解をしている場合もあります。
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5.
寝酒の習慣化眠るために飲酒をするという人が、しだいにアルコールがないと眠れなくなるばかりか量が増え、アルコール依存へと進んでしまうケースがあります。
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6.
多量飲酒・アルコール依存症3単位以上の飲酒を多量飲酒と言い、多量飲酒を習慣としている人はアルコール依存症につながりやすいとされています。
きちんとしたプログラムに基づいた節酒指導が必要とされます。
- 出典:一般社団法人日本損害保険協会「飲酒運転防止マニュアル」より弊社作成
このように、飲酒運転はアルコールそのものの作用だけでなく、人間の心理状態や社会の構造など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。管理と処罰だけを続けていては、「処罰を恐れて巧妙に隠す」、「チェックがマンネリ化し緊張感が薄れる」といったことが起こりやすく、限界があります。飲酒運転根絶に向けては啓発および予防が求められています。
飲酒運転をしない、させない
飲酒運転は「過失」ではなく「故意」です。また、飲酒運転を「する」人だけでなく「させる」人も同罪です。
自分がしないことはもちろん、相手にもさせないという意識が大切です。交通社会において、一人ひとりの意識が飲酒運転根絶に繋がっています。たとえ一口であっても、お酒を飲んだら絶対に運転をしないようにしましょう!
しない | させない |
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運転前最低8時間以内の飲酒禁止 ※たとえ8時間以上あけても、飲みすぎは禁物です。 1単位以内にしましょう。 |
お酒を勧めない、強要しない (乾杯の挨拶では、飲まない人に無理に飲ませないように注意喚起をする) |
宴会での断り方を見つける (車で来ていると伝える、飲めない体質だということをアピールする、会計を引き受けて場を離れる、など) |
見て見ぬふりをしない (飲酒運転しようとしている人がいたら、飲酒または運転を止める) |
アルコールの作用や害、飲酒運転の恐ろしさを知る | 抜き打ちによるアルコールの検知 |
お酒以外の趣味を持つ | ルールの周知徹底と違反時の処分規定の明示 |
ストレスをためない | 飲酒運転予防教育プログラムや研修を実施する |
- 出典:一般社団法人日本損害保険協会「飲酒運転防止マニュアル」より弊社作成
今月のクイズの答え
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(1)
血中濃度0.2~1.0mg/ml,呼気濃度0.1~0.5mg/lほろ酔い状態では、「自分はまだ酔っていない」と感じることが多く、飲酒運転をしやすい状態でもあります。少量であっても、確実にアルコールの影響を受けていることを認識しましょう。