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子どもの行動特性を知り事故を防止する

2024年5月号

今月のクイズ

小学生の交通事故による死亡・重傷者の法令違反別の割合の1位は飛び出しですが、その割合は何%でしょうか?

  • (1)
    24.5%
  • (2)
    37.7%
  • (3)
    49.2%

5月は新学期が始まったばかりの4月に比べ、子どもたちが新しい環境や登下校で使用する通学路に慣れ始める時期です。また、5月から7月にかけてレジャーなどによる外出機会の増加に伴い、子どもの交通事故は増える傾向にあります。
子どもには大人と異なる特性があり、それによって事故に遭いやすくなる可能性が考えられます。今月は子どもの行動特性を知り、事故を防止するためにはどのような運転を心がければ良いのか、考えてみましょう。

子どもが交通事故に遭いやすい状況とは

子どもの交通事故には、年齢や性別、活動時間帯、季節性など、事故に遭いやすくなる、大人とは違う要因がいくつかあります。
学齢別での発生件数は小学生が61.6%を占めています。保護者が付き添うことの多い幼児期に対し、小学校に上がると登下校や放課後に子どもだけで出歩く機会が増えることに加え、低学年の児童は交通ルールの理解や危険への認識が不足していることが要因として考えられます。また、小学生の事故発生件数1,109件のうち、男子の事故件数が804件と、女子の約2.6倍となっています(図1)。時間帯別での発生件数では16時~18時が最も多く、全体として下校時間や放課後、塾の帰り、夕暮れ時といった条件下で事故に遭いやすいと考えられます(図2)。
月別発生状況では、6月が183件、7月が180件と、2ヶ月連続で多発しています(図3)。登下校に慣れてきた子どもたちにも油断が生じることや、放課後の行動範囲が広がること、レジャーなどによる外出機会の増加、梅雨の時期における雨天時の視界の悪さなどが考えられます。

図1 男女別発生件数
図2 時間帯別発生状況
図3 月別発生状況

子どもの行動特性と事故防止

衝動的な行動をする

子どもは注意の配分がうまくできず、一点に集中してしまう傾向があります。突然道路の反対側にいる友達に向かって走り出したり、ボールを追いかけて飛び出したり、周囲の状況を確認しないまま行動してしまうことがあります。また、気まぐれな行動や突然予期しない行動をとることがあり、いつ道路に飛び出すか分かりません。

事故を防止するには…

近くに保護者などがいないひとり歩きの子ども*1のそばを通るときは、一時停止か徐行をしなければなりません*2。近くに学校・幼稚園・保育所などの施設や道路標識がある場所、通学路、公園の出入り口付近など、子どもがいそうな場所や時間帯に運転しているときは、子どもの飛び出しを警戒しましょう。

「学校、幼稚園、保育所等あり」の標識
  • *1
    子どもが複数いる場合でも、近くに保護者などがいないときは「ひとり歩きの子ども」として考えます。
  • *2
    道路交通法第71条第2号

ルールの理解が曖昧である

親子で通学の練習をしたり、小学校や中学校でも交通安全教室が開かれたりと、交通ルールを学ぶ機会が増えてきていますが、低学年の児童は言葉の意味をそのまま受け取ってしまい、危険性を十分に理解できていないことがあります。
「止まって周囲を確認する訓練を受けた子ども(小学校第1学年)の行動について調査したところ、眼を左右後ろに向ける回数は増加するが、いずれかの方向に眼を向けて確認している時間(一回の停留時間)には、訓練前後に大きな変化が認められないことが示された。車が接近しているか否かを判断するために、子どもでは約2秒以上の時間を必要とするといった報告 (中略) を考えると、この調査で子どもが示した一回の停留時間では周囲の状況を十分に把握しているとは言い難く、顔は動かすがしっかり確認していない様子がみて取れる。」*3「 (前略) 確認行動を繰り返し訓練することで、顔を動かすといった行動が(悪い意味で)自動化され、それが正しいと認識してしまい、車がいないことを確認するという本来の目的が失われてしまった可能性がある」*4というように、「横断するときは左右を見る」を言葉通りにだけ理解している可能性が考えられます。また、単純に「道路を横断するときは手を挙げる」とだけ認識し、手を挙げていれば車が止まるものだと思い込み、急な横断をする可能性もあります。

事故を防止するには…

横断歩道で一時停止した後はすぐに発進せず、続けて渡る子どもがいないか確認をしましょう。手を挙げながら横断歩道へ飛び込む子どもや既に横断した子どもを追いかけて走ってくる子どもがいるかもしれません。
また、ふざけながら歩いている子どもなどを見かけたときは、安全な間隔を保ち、徐行するなどして危険を回避します。下校時間と重なる場合にはルートを変更するなど、通学路を避けることも検討しましょう。

身体が発育途上である

子どもは身体が小さく死角に入りやすいということだけでなく、自身も高い目線や広い視野を持っていないため、周囲の情報を収集する能力に制限があります。6歳児の視力は大人と同程度であるのに対し、視野は水平方向が大人約150度に対して約90度、垂直方向が大人約120度に対して約70度*5と狭い範囲しか見えていないため、近づいてくる車や自転車を大人と同じように認識することができません。運転者が子どもに気づいていたとしても、子どもからは自分の車が見えていない可能性があります。

事故を防止するには…

駐停車車両のかげなどの死角から、子どもが飛び出してくるかもしれないことを予測しましょう。右左折の際に死角に入った子どもを巻き込む事故も起きています。しっかりと安全確認をし、徐行して曲がりましょう。
公園や団地の近くなど、子どもがいそうな場所で駐車をしたときは、乗車前に必ず車体まわりの安全を確認します。特に大型車は前後左右に死角が多く、運転席からは十分な確認ができませんので、乗車前の確認を徹底しましょう。

子どもを交通事故から守るためには

子どもは身体的にも精神的にも未成熟であり、交通の場では弱者であると言えます。運転者や周りの大人が子どもを守るためにできることを考え、行動していくことが大切です。


今月のクイズの答え