死角にひそむ危険
2024年6月号
今月のクイズ
安全運転をするためには、交通状況における危険をいち早く捉え、適切に対応することが求められますが、危険要因は常に視認できるわけではありません。自動車の構造による死角、交差点での死角、駐車車両がつくる死角、カーブによる死角など、交通状況には多くの死角があります。事故を防ぐには死角にひそむ危険も予測した運転を心がける必要があります。
死角の種類
自動車の構造による死角
<車両の死角>
車両のタイプによって多少の差はありますが、自動車はその構造により、前後左右に必ず死角があります。運転席から見た場合、前方よりも後方、右方よりも左方の死角が大きくなります(図1)。この死角に小さなこどもがいた場合、運転席からは気づくことができず、こどもの存在を見落としたまま車を動かすことで重大事故となるケースもあります。また、前後左右だけでなく、ピラー(窓枠の柱)による死角によって横断歩道などで歩行者や自転車を見落とす恐れもあります(図2)。
<ミラーの死角>
サイドミラーは左右後方の一部しか映らないため、ミラーだけに頼る安全確認は大変危険です。
例えば、図3および図4のB地点にいる二輪車や自動車はしっかりと映っていますが、自車に近いA地点ではミラーの死角に入ってしまい、ミラーを見るだけではその存在を認識することができません。目視での確認をしないまま左寄せや、右左折、進路変更をすると、巻き込み事故や衝突事故につながります。
交差点での死角
<構造物による死角>
いわゆる見通しの悪い交差点は前方の交差道路の状況や左右からの車などが見えにくいだけでなく、自車の存在も認識されにくいため、出会い頭事故が発生しやすい場所です。住宅地や交通量の少ない道路では「いつも車はいないから今日も大丈夫」といった思い込みで、一時不停止や徐行義務違反、安全不確認による事故を起こすケースがあります。
<対向車の死角>
対向車線の車のかげには、直進しようとする二輪車や自転車がいるかもしれません。特に大型車の場合は死角が大きくなります。対向車によって見えなくなっている部分をよく確認しないまま急いで右折をすると、右直事故につながります。
駐車車両がつくる死角
駐車車両がいることによって、普段とは違った場所に死角ができることがあります。駐車車両が両側にある場合や連続している場合には、死角が広範囲に及び、注意を向けるべき箇所も多くなるため、危険性が高くなります。駐車車両の合間を縫って横断しようとする歩行者や、駐車車両を避けようとする自転車が飛び出してくるかもしれません。
カーブによる死角
カーブでは進路の先が見えず、先行車や対向車の様子が確認できません。山道などカーブがきつい形状の道路では、死角はより大きくなります。また、カーブミラーが設置されている場所であっても、過信してはいけません。カーブミラーに映らない死角があることや左右が逆に映ること、車が小さく見えることにも注意が必要です。
死角にひそむ危険による事故を防ぐためには
- 車を動かす前には車の周囲を確認する
- 運転席からは周囲を確認することが難しいため、あらかじめ安全を確認してから乗車するようにしましょう。乗車後、走行ルートの確認や休憩などですぐに発進をしないときには、車を動かす直前に降車して確認をするようにします。
- 目視での確認を徹底する
- サイドミラーやルームミラーに映らない部分は、直接自分の目で確認する必要があります。特に右左折や進路変更を行う際は、巻き込み事故や衝突事故を避けるためにも、必ず左右後方の安全を確認しましょう。後退をする際もミラーやバックモニターだけに頼らず、目視と併せて確認を行うようにします。
- 徐行や一時停止、多段階停止をして通行する
- 信号機のない見通しの悪い交差点では、優先道路を通行している場合を除き、徐行しなければなりません(道路交通法 第42条)。また、一時停止の標識や標示がある場所では必ず停止線の手前で一時停止をしましょう。ただし、停止線の位置からでは見えにくい部分もあるため、安全に通行するためには多段階停止が推奨されています。停止線での停止後、少しずつ進み、車両の先端が交差点にかかるところで再度停止して自車の存在を知らせましょう。その後さらに前進して左右の状況が見えやすい位置でもう一度停止し、安全を確認してから通行します。交差点に限らず、駐車場などから道路へ進入するときにも同様の運転を行いましょう。
- 適切な速度で走行する
- 速度が高いと十分な確認ができません。駐停車車両のそばを通るときやカーブを走行するときなど、特に死角が広範囲に及ぶときには状況に応じて速度を調節しましょう。
- 見えない危険を予測する
- 見えない危険への対応は遅れやすく、重大事故につながる可能性が高まります。どのような場所に死角があるかを理解し、常に死角にひそむ危険を予測しながら運転するように心がけましょう。
- 周囲の安全を確認してから乗車・発進するように心がけましょう。
- ミラーやモニターだけに頼らず、目視での確認を徹底しましょう。
- 見通しの悪い場所では徐行や一時停止、多段階停止をして通行しましょう。
- 状況に応じて適切な速度で走行しましょう。
- どのような場所に死角があるかを理解し、死角にひそむ危険を予測しましょう。
今月のクイズの答え
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(3)
29.4%車両同士の死亡事故では最も高い割合を占めています。
- 出典:警察庁「令和5年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」より
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