駐車場内での事故パターンと事故防止のポイント
2024年7月号
今月のクイズ
2023年中に発生した、相手方が駐車している車両との事故は690件でした。そのうち、駐車場等(交差点内・交差点付近・単路・踏切を除く)で起きた交通事故件数を次の中から選んでください。
- (1)165件
- (2)284件
- (3)347件
一般の道路では通行区分や信号機、標識・標示など法的な定めによって車の動きが規制されているのに対し、駐車場内では公道のような交通規制が適用されず、車や自転車、歩行者などの動きが不規則になりがちです。一般の道路とは異なった特有の環境であると言えます。また、低速走行であるがゆえに油断も生じやすく、軽微な接触事故などが起こりやすい場所となっています。しかし、駐車場内での接触事故を小さな事故だと軽く考えてしまうと、後に大きな事故やトラブルにつながる懸念があります。今月は駐車場内での事故パターンを通じて、どのように事故を防ぐことができるのかを考えてみましょう。

- ※本記事内のデータで扱う駐車場等での事故とは、道路の交通に関する統計の道路形状において交差点内・交差点付近・単路・踏切を除く「その他の場所」で発生した事故を想定しています。
- ※「その他の場所」とは、広場等車道幅員が容易に測定できない場所であって、高速道路等に設けられたサービスエリア等を含む。
(引用:警察庁「令和5年中の交通事故の発生状況(表3-6-2 事故類型別・道路形状別交通事故件数)」注釈より)
2023年中に発生した駐車場等での事故
警察庁の発表によると、2023年中に駐車場等で発生した事故は合計14,865件でした*1。事故類型別の割合をみると、車両相互事故が最も多く、61.1%を占めています。次いで、人対車両事故が31.5%、車両単独事故が7.4%となっています(図1)。
それぞれの事故類型を詳しくみると*2、車両相互事故では出会い頭と追突が突出しており、立体駐車場などに多い死角に起因する事故や、駐車スペースを探すことに気を取られ前方不注意に陥っての事故が、多く発生していると考えられます(図2)。人対車両事故では、背面通行中が最も多く、視界の悪さに加えて通常走行時とは異なる後退操作に気を取られるなど、不十分な安全確認が事故の原因となっていることが考えられます(図3)。車両単独事故では駐車車両および工作物への衝突が多く、主に軽微な物損事故が多く起こっています(図4)。
- *1出典:警察庁「令和5年中の交通事故の発生状況」より
- *2事故類型では「その他」が大半を占めるため、ここでは「その他」を除いた上位3項目を扱っています。

事故類型別の割合(2023年中)

車両相互事故の上位3項目

人対車両事故の上位3項目

車両単独事故の上位3項目
- 図1~図4 出典:警察庁「令和5年中の交通事故の発生状況(表3-6-2 事故類型別・道路形状別交通事故件数)」より弊社作成
駐車場内での事故パターン
駐車場内で発生する事故には、道路上や交差点などで発生する事故とは異なる特徴があります。駐車場内での事故にはどのようなパターンがあるのかをみてみましょう。
駐車スペースに入るときの事故
- (1)後退時は後方に注意が向きやすく、前方の安全確認が疎かになり、駐車車両や工作物に接触するリスクがあります。
- (2)右後方は比較的見えやすい箇所ではありますが、「後続車を足止めしている」という焦りを感じながら急いで後退すると、操作を誤るリスクがあります。
- (3)左後方は死角が大きく見えにくいため、ミラーやバックモニターだけに頼ると死角や距離を見誤り、駐車車両などに接触するリスクがあります。
- (4)真後ろは死角が大きく、人や物が隠れていないか細心の注意が必要です。子どもやポール、柵など、低い工作物が隠れてしまい、衝突してしまうリスクがあります。

駐車スペースから出るときの事故
- (1)内輪差やオーバーハング*3の大きい車両では、ハンドルを切りすぎると両側の駐車車両に接触するリスクがあります。
- (2)駐車スペースから出て行くときに、通行している車両や歩行者と衝突するリスクがあります。また、一度駐車スペースに入ったあとに切り返しや前進で駐車位置を修正する際も同様のリスクがあります。
- *3前後のタイヤの中心部から外側へとはみ出した車体部分

駐車場内を通行しているときの事故
- (1)建物内の自走式立体駐車場や地下駐車場では、コンクリートの大きな柱や駐車車両による死角が多いだけでなく、薄暗く見えにくい場所が多いため、柱などのかげから出てきた歩行者と接触するリスクがあります。
- (2)駐車スペースを探しながら走行しているときに、低速走行だからと油断をしていると、わき見運転や前方不注意によって危険の発見が遅れ、追突事故を起こすリスクがあります。

駐車場内での事故を防ぐポイント
- 歩くスピードで走行する
- 駐車場内は車や自転車、歩行者が入り交じっている環境であるため、思わぬ事故が起こる可能性があります。また、死角が多い場所や薄暗く狭い場所もあるので、万が一のときにはすぐに停止できるよう、歩くスピードで走行しましょう。特に柱があるところや店舗の入口付近など、歩行者がいそうな場所では慎重に運転しましょう。
- ラインや矢印などの指示に従う
- 駐車場内に設けられている一時停止のラインや順路を示す矢印、駐車スペースの枠線、歩行者向けの横断ライン、信号や警告音などには必ず従いましょう。特に、空いた駐車スペースを確保しようと順路を無視しての逆走などは大変危険ですから、絶対にやめましょう。
- ヘッドライトやハザードを点灯して意思表示をする
- 駐車場内ではそれぞれが複雑な動きをしながら通行しているため、なるべく周囲に分かりやすく意思表示をしたり、自車の存在をアピールしたりすることが大切です。駐車スペースに入る前にはハザードをつける、駐車スペースから出る時はヘッドライトを点灯するなど、車外から見える装置を活用することで、周囲にその先の行動が伝わりやすくなります。
- まんべんなく注意を向け、落ち着いて行動する
- 駐車スペースを探すことに意識が向いてしまうと、注意が散漫になります。また、後退に不慣れであると、焦りや苦手意識を感じ、心理状態が不安定になることもあります。無理に後退しようとすると操作ミスを起こす可能性もあるので、落ち着いて行動しましょう。
- 目視での安全確認をする
- 後退を始める前に、停止した状態で駐車スペースの安全確認をしましょう。一気に後退せず、後退の途中でも確認をしながら慎重に進みます。後退時の安全確認はバックモニターやバックセンサーだけに頼らず、目視でも行いましょう。また、誘導員がいる場合でも、必要に応じて自分自身でも安全確認をするように心がけましょう。
今月のクイズの答え
-
(3)
347件約半数が駐車場等で起きています。
- 出典:警察庁「令和5年中の交通事故の発生状況(表3-6-2 事故類型別・道路形状別交通事故件数)」より
- 出典: