加齢と運転を考える

2024年8月号

今月のクイズ

2023年末時点における運転免許保有者数の中で、75歳以上の高齢運転者の割合を次の中から選んでください。

  • (1)
    16.6%
  • (2)
    8.9%
  • (3)
    3.7%

高齢運転者による交通事故は報道でも大きく取り上げられることが多く、社会的関心が高まっています。警察庁の発表によると、75歳以上の高齢運転者による死亡事故は、2020年に一度減少したものの近年は増加傾向にあり、運転免許保有者10万人当たりでは、75歳未満の運転免許保有者と比べて約2倍の発生件数となっています(図1)。また、75歳以上の高齢運転者による死亡事故の人的要因をみると、操作不適の割合が27.6%(ハンドルの操作不適14.9%、ブレーキとアクセルの踏み間違い6.6%)と高く、75歳未満の運転者の約2.8倍となっていることから、「操作不適」は高齢運転者による死亡事故の特徴的な要因であるとも言えます(図2)。今月は加齢に伴う運転への影響を知り、高齢運転者として事故を防止するために、今後の運転との向き合い方について考えてみましょう。

図1 75歳以上高齢運転者による死亡事故件数の推移
図2 自動車運転者による年齢層別死亡事故の人的要因比較(2023年)

加齢に伴う運転への影響

体力や身体機能の低下

体力や筋力が低下すると疲れやすくなり、ハンドルやペダルを操作する力を保つことが難しくなります。ペダルの踏み込みが甘くなったり、姿勢が崩れやすくなったりすることで、操作ミスを引き起こすリスクが高まります。また、疲労によって集中力や注意力が下がりやすくなります。

認知機能や反応速度の低下

認知機能が低下すると、情報の処理や正常な判断が難しくなり、信号無視や一時不停止、逆走などの違反を起こしやすくなります*1。また、反応や動作の鈍化により、危険への回避や対処が遅れ、パニックに陥る可能性もあります。ブレーキとアクセルの踏み間違いは、焦りやパニックが原因のひとつとも言われています。

<逆走>
<ペダル踏み間違い>

視覚機能の変化

動体視力や眼の追従能力の衰え、夜間の眩惑に対する視力回復の遅れなどの変化が起こりやすくなります。また、白内障による視界のかすみやぼやけ、緑内障による視野狭窄や視野欠損など、視覚障害が自覚のないまま進行している可能性があります。

 <視野狭窄のイメージ>

身体の痛みや疾病、服薬による影響

身体の一部に痛みが出ると、患部をかばおうとして誤った姿勢や所作になりやすく、操作ミスにつながります。また、発作を伴うような疾病を抱えている場合、体調の急変によって運転の継続が難しくなるリスクがあります。併せて、服薬による眠気などの影響にも配慮する必要があります。

今後の運転について考えてみましょう

運転技量や能力の低下を自覚することは難しいですが、以下のような兆候が見られたときは、加齢への対策や今後の運転について考えるべきかもしれません。

サポカーSへの乗り換えを検討しましょう

「衝突被害軽減ブレーキ」や「ペダル踏み間違い急発進抑制装置」など、先進安全技術による運転支援装置を備えた、高齢運転者に推奨する車をサポカーSといいます。交通事故防止のために、先進安全技術のサポートを受けて運転するのも1つの方法です。また、新たな選択肢として「サポートカー限定免許」というものもあります。

<衝突被害軽減ブレーキ>
<ペダル踏み間違い急発進抑制装置>

補償運転を実践しましょう

補償運転とは、「危険を避けるため、運転する時と場所を選択し、運転能力が発揮できるよう心身及び環境を整え、加齢に伴う運転技能の低下を補うような運転方法を採ること」*2をいいます。例えば、夜や雨の日は視界が悪いので運転は昼間や晴れの日だけにする、長距離運転はせずスーパーや病院などの近場だけにする、体調が優れないときや眠気を催す薬を服用したときは運転しない、といったように、運転に対するルールを決めましょう。

定期的に眼科を受診するようにしましょう

視野狭窄や視野欠損などの視覚障害は自覚しにくいと言われています。視野障害の進行に気づかないまま運転を続けることは大変危険です。眼の健康寿命を延ばすには早期発見・適切な治療の継続が大切です。定期的に眼科検診を受けるようにしましょう。

不安を感じたら周りへ相談してみましょう

運転に不安を感じたり周囲から指摘を受けたりしたときは、まず家族や警察庁の安全運転相談窓口などへ相談をしてみることが大切です。また、運転経歴証明書の発行や各種割引特典など、警察庁や各地域の自治体、事業者などが免許の自主返納をサポートしています。


今月のクイズの答え