低速走行時の事故リスク

2024年10月号

今月のクイズ

2023年中に高速道路で起きた交通事故6,324件のうち、車線停止車に追突した事故の件数を次の中から選んでください。

  • (1)
    452件
  • (2)
    1,034件
  • (3)
    2,037件

交通事故と聞くと、スピードが出ているときに発生しているというイメージがあるかもしれませんが、実際には交通事故の多くが低速で走行しているときに発生しています。「スピードが出ていないから」と油断していると、大きな事故に繋がるリスクがあります。低速走行時にこそ注意が必要です。

交通事故全体の約6割が20km/h以下で発生しています

警察庁の発表によると、2023年中に発生した危険認知速度*1別の交通事故件数のうち、10km/h以下が39.3%、20km/h以下の事故が23.8%となっており、全体の約6割が低速走行時に発生していることがわかります(図1)。また、死亡事故件数の割合においては10km/h以下と20km/h以下の合計が約2割となっています(図2)。スピードが出ていなくても事故が起きやすいこと、死亡事故に繋がる可能性があることがわかります。

図1 危険認知速度別交通事故割合(2023年中) 図2 危険認知速度別交通死亡事故割合(2023年中)

低速走行時の事故はどのように発生しているのか

交差点走行

道路交通法では、交差点を右左折するときは徐行することが義務付けられていますが、車や歩行者がそれぞれの方向に進むため、道路形状別では、交差点等での事故が最も多く発生しています*2。特に右直事故や出会い頭事故、巻き込み事故は交差点事故の代表的なパターンであり、低速で走行していても大きな事故に繋がる可能性があります。

右直事故 出会い頭事故 巻き込み事故

渋滞中の追従走行

渋滞時は低速で進んだり止まったりを繰り返すため、集中力が途切れ漫然運転になりやすく、前方不注意による追突事故を起こすことがあります。また、渋滞によるストレスや前方への割り込みを阻止するために車間距離をつめるなど、通常とは異なる心理が働くことで危険に結びつくリスクが高まります。

発進

路上駐停車からの発進、信号停止後の発進、出庫時の発進等、停止状態から動き出す際に衝突や追突を起こすことがあります。原因としては、発進の合図を出した後や信号が変わった後に、十分な安全確認をしないまま動き出してしまうことが考えられます。また、死角に隠れているこどもに気づかないまま発進し死亡させてしまったという、痛ましい事故も発生しています。交通事故総合分析センターによると、幼児歩行者(3歳以下)は、歩行者が青年および成人(13~64歳)の場合と比べて、車の発進時に事故に遭遇する割合が非常に高くなっています。背の低い幼児歩行者は車の死角に隠れて見落としてしまうことが考えられるため、発進時には車両周囲への注意が必要です。

事故時の相手車の行動類型 歩行者3歳以下 歩行者13~64歳

後退

前進に比べて死角が多く、操作の不慣れや焦りを起因とした事故も発生しています。特に後退することの多い駐車場では、歩行者との接触が多くみられ、安全確認が不十分であることが考えられます。

低速走行時の事故を防ぐためには

低速だからといって油断をしない
速度が出ていないからと油断をしてカーナビを操作したり、目的地を探しながら走行したりしてしまうドライバーがいます。たとえ低速であっても、死亡事故に繋がることもあり、安全な速度というものはありません。速度が出ていなくても危険であることを認識しましょう。
前を見て運転をする
低速走行中はつい、わき見運転、ながら運転をしてしまうドライバーがいます。例えば、時速20kmで2秒間わき見をしていた場合、車は約11m進み、その間に前方の状況が一変している可能性があります。わき見運転、ながら運転は絶対にやめましょう。
安全確認を怠らない
特に右左折、発進、後退では安全不確認による事故が起こりやすいです。死角になる部分を目視する、動き出す前に一呼吸おいて安全を確認する、少しでも不安なときは安全が確認できるまで待つ、などの対応をしましょう。

今月のクイズの答え