雪道での運転

2024年12月号

今月のクイズ

2023年中に発生した凍結・積雪路面での死亡事故32件の内、最も件数が多い月を次の中から選んでください。

  • (1)
    12月
  • (2)
    1月
  • (3)
    2月

これから降雪・積雪が増える時期を迎えますが、12月から2月まではスリップ事故やホワイトアウト現象による視界不良での事故、立ち往生による車内での一酸化炭素中毒など、雪による事故やトラブルが発生する可能性が高まります。今月は雪道での事故防止やトラブル回避のため、どのようなことに注意すれば良いかをみてみましょう。

雪道での事故やトラブル

スリップ事故

積雪のある道路や凍結している道路は、乾燥している道路と比較すると摩擦係数が低いため、スリップやスピンが発生しやすく事故や脱輪のリスクが高くなります。スリップとは雨や雪、ぬかるみなどでグリップ力が失われ、路面に対してタイヤが滑ってしまう状態のことです。積雪のある道路でブレーキを強く掛け過ぎてしまったときや、凍結に気付かずに進行してしまったときに発生します。スリップが発生すると車のコントロールが困難になり、前方車両への追突事故のほか、車線を逸脱して設置物や隣を走行している車両への接触事故の原因になります。

図1 路面別の制動距離

氷盤路面・ブラックアイスバーンについて

JAF(一般社団法人日本自動車連盟)が行った路面別の制動距離に関するテストでは、ウェット路面や圧雪路面に比べ、氷盤路面及びブラックアイスバーンの制動距離が圧倒的に伸びています(図1)。ブラックアイスバーンとは、路面が凍結しているにもかかわらず雨で濡れたアスファルトのように黒く見える状態のことを言い、ウェット路面とブラックアイスバーンでは見た目の違いがほとんどないため、雪で覆われている路面に比べて警戒心が弱まりやすいと言われています。

立ち往生

大雪の影響で断続的な渋滞や立ち往生が発生することがあります。タイヤが雪にはまって空転することや、渋滞・停止状態で積雪が増加して発進できなくなることが、立ち往生の原因と考えられています。長い時間身動きが取れなくなり、狭い場所での長時間の着座による「エコノミークラス症候群」や、次に挙げる「一酸化炭素中毒」を引き起こす恐れがあります。

車内での一酸化炭素中毒

マフラーの排気口が雪に埋もれると、排気ガスが外気導入口や隙間などから車内に入り込み、ガスが充満して一酸化炭素中毒を引き起こす危険があります。JAFの実験では、「一酸化炭素濃度は1分24秒で警報値の50ppmに到達。これは8時間以上その場に滞在すると人体に悪影響を及ぼすレベルとされている。一酸化炭素濃度はそのまま上昇を続け、テスト開始後18~50分の間は測定値上限の300ppmを記録した。*1」とされています。こまめにマフラー周辺の除雪を行い、換気に気をつける必要があります。

ホワイトアウト現象

大雪や吹雪によって、視界一面が真っ白になる「ホワイトアウト現象」が発生することがあります。低温で風の強いときに起こりやすく、周囲の状況が識別できなくなるため、自分の車がどこにいるのか、どの方向に進むことができるのかが分からなくなってしまいます。まずは慌てずにヘッドライトやハザードランプを点灯し、周囲に自車の存在を知らせることが大切です。その後、減速しながら後方の安全を確認し、なるべく路肩や道路の端に寄せるか、道路外の安全な場所に入って停止しましょう。

雪道での事故やトラブルの回避のために

必ずスタッドレスタイヤかタイヤチェーンを装着する

JAFのテスト結果では、圧雪路面ではスタッドレスタイヤが最も短い距離で停止できた一方、ノーマルタイヤは約1.7倍、制動距離が長くなっています。氷盤路面ではタイヤチェーンが最も短い距離で停止できています(図2)。スリップ事故や横滑り、立ち往生などを防止するため、必ずスタッドレスタイヤかタイヤチェーンを装着しましょう。また、雪予報が出てからの交換では間に合わない可能性がありますので、早めに装着するように心がけましょう。大雪に対する特別警報や緊急発表があった際には、チェーン規制が発令されることがあります。対象となる区間には規制標識が設置され、タイヤチェーンを装着していないと走行ができなくなりますので予め車に装備しておき、タイヤチェーンの正しい装着方法についても確認をしておきましょう。

図2 タイヤの種類別制動距離
タイヤチェーンの装着方法
  • 1.
    チェーンの裏表に注意し、タイヤにチェーンを被せます。
  • 2.
    タイヤの裏に手を伸ばして、チェーンの内側のフックを留めます。
  • 3.
    チェーンを均等に整え、外側のフックを留めます。
  • 4.
    金具の連結部を起点に、ゴムバンドあるいはスプリングを均等に掛けます。
  • チェーンの種類によって装着方法は異なります
タイヤチェーンを取り付けていない車両通行止めの規制標識

携行品を準備しておく

万が一に備え、除雪用スコップ、毛布、防寒着、食料や水などを携行しておくと安心です。毛布は寒さを凌ぐだけでなく、タイヤがスリップして発進できないときにすべり止めとしても活用できます。予め、燃料も満タンにしておきましょう。

急な動作はせず、速度を落とし、車間距離を長めに確保する

雪道では通常の運転に比べて路面や視界の状況が悪くなるため、事故に結びつくリスクが高まります。通常よりも速度を控えめにし、前車との車間距離を長めに確保しておきましょう。急ブレーキや急ハンドル、急発進など、「急」がつく動作はスリップや横滑りに繋がりやすく大変危険です。慎重な運転を心がけましょう。

不要な運転での外出を控える

あまり雪の降らない地域では、タイヤや携行品の準備が整っていないことや、ドライバーの経験不足・不慣れなどの要因により、危険な状況に陥るリスクが高いといえます。天候や予報に注意し、無理をせず、場合によっては車での外出を控えることも検討しましょう。

雪道での運転に備えましょう

これからの時期は、冬季特有の事故やトラブルに用心しなければなりません。

今月のクイズの答え