横断歩道は歩行者優先

2025年1月号

今月のクイズ

2023年における横断歩行中死者・重傷者数5,445件の内、横断歩道を横断していた割合を次の中から選んでください。

  • (1)
    52.2%
  • (2)
    41.6%
  • (3)
    30.9%

横断歩道とは、交通弱者である歩行者が安全に道路を横断するために設けられた、「歩行者優先」の区域です。しかし、実際には歩行者を優先できていないドライバーが多いため、自動車と歩行者の事故が発生しており、歩行者にとって安全な場所とは言い切れません。特に信号機のない横断歩道における一時停止については、警察が東京オリンピック・パラリンピックを契機に取り締まりの強化や交通マナーの啓発を積極的に行っているものの、未だに半数以上のドライバーが停止しておらず、ルールの周知徹底が課題となっています。今月は横断歩道における歩行者保護について考えてみましょう。

信号機のない横断歩道における一時停止の実態

JAF(一般社団法人日本自動車連盟)が2016年に行った「交通マナーに関するアンケート調査」の結果によると、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしているのに一時停止しない車が多いと感じるかどうかの設問において、43.7%が「とても思う」、42.5%が「やや思う」と回答しており、8割以上の人が止まらない車が多いと感じていることがわかっています(図1)。また、横断歩道を歩行者が渡ろうとしている時には一時停止しなければならないことについては、70.7%が「知っており、行動に移している」、27.8%が「知っているが、たまにしか行動に移せていない」と回答していました(図2)。アンケートの回答を基にJAFが2016年に実施した実態調査では、停止した車はわずか7.6%という結果でした。その後、年々一時停止率は高まり、直近の2023年では45.1%と過去最高となった一方、依然として半数以上の車が停止していないことがわかっています(図3)。また、警察庁によると、信号機のない横断歩道における自動車対横断歩行者の死亡・重傷事故(2019年~2023年合計)では、自動車が横断歩道手前で減速したケースは1割未満で、危険認知速度*1では31~40km/hが最も多くなっています(図4)。死亡・重傷事故にいたったケースにおいては、減速しないで進行してしまった場合が多かったことがわかります。

質問
信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしているのに一時停止しない車が多い。

図1 とても思う43.7% やや思う42.5% あまり思わない13.2% まったく思わない0.6%

質問
信号機のない交差点で、歩行者が横断歩道を渡ろうとしている場合には、車は一時停止しなければなりません。そのことをあなたは知っていますか?

図2 知っており行動に移している70.7% 知っているがたまにしか行動に移せていない27.8% 知らない(「まったく行動に移していない」、「忘れていた」を含む)1.5%%
図3 信号機のない横断歩道における車の一時停止率(全国平均)
図4 自動車運転者の行動類型別件数 自動車運転者の危険認知速度*1別件数

信号機のない横断歩道に近づいたときの対応

道路交通法第38条では、車が横断歩道に近づいたときの対応が定められています。

歩行者が横断しているときや横断しようとしているとき

横断歩道の手前(停止線があるときは、その手前)で一時停止をして歩行者に道を譲らなければなりません。
信号機のない横断歩道は、歩行者が優先です。歩行者が安全に横断し終わるまで待ちましょう。対向車がなかなか止まらず、歩行者が横断できないような状況であっても、必ず停止したまま待つようにしましょう。

横断する人がいないことが明らかでないとき

横断歩道付近に歩行者がいても横断するかどうかがはっきりしない場合や、植え込みや駐停車車両などの死角で歩道側が見えにくい場合など、横断する人がいないことが明らかでないときには、すぐに止まれるような速度で進まなければなりません。「渡るかもしれない」と考え、いつでも止まることができるよう速度を落とし、状況を確認しながら進行しましょう。

横断する人がいないことが明らかなとき

見通しの良い場所などで状況が明らかであればそのまま進むことができますが、死角がある場所や学校・公園の近くなど子どもがいそうな場所では、横断歩道に飛び込んでくる歩行者がいないとも限りません。予めブレーキペダルに足を置いておいたり安全が確認できる速度で進行したりすることで、万が一の際に素早く対応ができます。

横断歩行者との事故を防止するポイント

横断歩道の標識や標示に注意する

前方に横断歩道があることを認識していなければ、歩行者の確認や一時停止、減速・徐行などの対応が難しくなります。「横断歩道」の標識や、横断歩道の手前にある「横断歩道または自転車横断帯あり」の標示(◇マーク)がないか、常に注意しましょう。

「横断歩道」の標識
「横断歩道または自転車
横断帯あり」の標示

前の車や対向車の動きに注意する

横断歩道やその手前で止まっている車があるとき、そのそばを通って前方に出る前に一時停止をしなければなりません*2。また、横断歩道とその手前から30メートル以内の場所では追い越しと追い抜きが禁止されています*3。前の車が横断歩道手前で停止または減速したときは、歩行者に道を譲っている可能性があります。一時停止せずに側方を通過したり、追い越そうとしたりすると、死角に入っていた歩行者と衝突する恐れがあり大変危険です。また、対向車が横断歩道の向こう側で停止しているときも歩行者に道を譲っている可能性があります。標識・標示と併せて、対向車の動きにも注意しておきましょう。

  • *2
    道路交通法 第38条第2項
  • *3
    道路交通法 第38条第3項

夕暮れ・夜間には前照灯やハイビームを活用する

夕暮れや夜間では昼間に比べて見えにくいため、歩行者や横断歩道の標識・標示を見落としてしまう可能性があります。早めに前照灯を点灯させたり、ハイビームを活用したりしましょう。

横断歩道を安全な場所にするためには

今月のクイズの答え