電動キックボードの適切な利用

2025年2月号

今月のクイズ

警察庁が行った特定小型原動機付自転車の利用者へのアンケート調査において、ヘルメットを持っていると回答した人の割合を次の中から選んでください。

  • (1)
    約25%
  • (2)
    約35%
  • (3)
    約45%

2023年7月1日に施行された改正道路交通法により、一定の基準を満たす電動キックボードは「特定小型原動機付自転車」と定義され、新たな交通ルールのもと、都市部を中心に急速に普及しています。電動キックボードは手軽で利便性が高く魅力的な小型モビリティである一方、その構造や扱いやすさが時には事故や違反のリスクとなってしまうことがあります。いま一度、利用時のルールと注意点を確認し、適切な利用のために知っておくべきことをみてみましょう。

特定小型原動機付自転車とは

下の基準を全て満たすものだけが「特定小型原動機付自転車」に区分されます。基準を満たさないものは「一般原動機付自転車」となり、運転免許の要否や走行可能場所などのルールが変わります。また、利用する際にはイラストの保安基準を満たしている必要があります。車体の大きさや構造だけではなく、必要な部品、装置が備わっているか確認しましょう。

車体の大きさ
長さ:190センチメートル以下 幅: 60センチメートル以下
車体の構造
  • 原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること
  • 時速20キロメートルを超える速度を出すことができないこと
  • 走行中に最高速度の設定を変更することができないこと
  • オートマチック・トランスミッション(AT)であること
  • 最高速度表示灯(灯火が緑色で、点灯又は点滅するもの)が備えられていること

「特定小型」原動機付自転車と「一般」原動機付自転車の主な違い

特定小型原付
(電動キックボード)
一般原付
(原付バイク・モペット)
運転免許 不要
(16歳未満は禁止)
必要
ヘルメット着用 努力義務 必要
最高速度 時速20km以下 時速30km以下
自転車道 走行可 走行不可

電動キックボード利用時の事故・違反状況

手軽で便利な小型モビリティとして注目されている電動キックボードですが、利便性の良さが交通違反などのリスクに繋がる場合があります。
警察庁が発表した道交法改正後1年間における違反別検挙件数の割合をみると「通行区分違反」が55.0%、「信号無視」が30.7%と多くを占めています(図1)。また、事故件数は219件、都道府県別では東京都での発生が7割超、用途別ではレンタルの車両による事故が9割超、運転者の年齢別では20歳代が5割超でした*1。16歳以上であれば免許が不要であり、誰でも簡単にレンタルできるという手軽さがある反面、交通ルールを知らない又は法令を遵守する意識が低下している可能性が考えられます。あるいは電動キックボードの構造として車体が小さく取り扱いしやすいという利点が、時には歩道等の通行禁止場所の走行や、片手運転・ながら運転等を誘発している可能性も考えられます。

  • *1
    警察庁「特定小型原動機付自転車に関する規定の施行後1年間の状況について」より
図1 違反別検挙件数の割合
  • 出典:
    警察庁「特定小型原動機付自転車の検挙件数(違反類型別)令和5年7月~令和6年6月」より弊社作成

電動キックボードの交通ルール

通行する場所

車道と歩道又は路側帯の区別があるところでは、車道を通行しなければなりません。
原則として、道路では左側端に寄って通行しなければならず、右側を通行してはいけません。
自転車道、普通自転車専用通行帯の標識等が設けられたレーンは通行できます。

通行場所のイメージ

本標識・補助標識に注意

自転車が描かれている本標識には、特定小型原動機付自転車が含まれた名称・意味に変わっているものがあります。また、補助標識で普通自転車が対象とされているものについては、特定小型原動機付自転車も対象となります。例えば図2のように「車両通行止め」の標識に「自転車を除く」という補助標識がある場合、電動キックボードは通行することができます。

図2 自転車を除く

二段階右折をする

交差点を右折する際は、二回に分けて進まなければなりません。

<二段階右折の方法>

  • 信号交差点では、青信号で交差点の向こう側まで直進し、その地点で止まって右に向きを変え、前方の信号が青になってから進む。
  • 信号のない交差点では、できるだけ道路の左端に寄って交差点の向こう側まで直進し、十分に速度を落として曲がる。
二段階右折の方法

電動キックボードを安全に利用するために

乗車用ヘルメットを着用しましょう

法令上は努力義務とされていますが、交通事故に遭ったときの被害は着用・非着用で大きく異なります。自転車乗用中に亡くなった人の5割以上が頭部に致命傷を負っており、乗車用ヘルメットを着用していなかった場合の致死率は、着用していた場合に比べて、約2.4倍高くなっています*2

運転する車両の区分とそのルールを確認しましょう

基準を満たさない電動キックボードやモペットは一般原動機付自転車に区分されるため、運転免許が必要となり、交通ルールも異なります。また、特定小型原動機付自転車であっても16歳未満の運転は禁止されています。一見、基準を満たしている電動キックボードや電動アシスト自転車に見えるものもありますので、見た目だけで判断してはいけません。公道を走行する際には道路交通法等の関連法令に準じているか、「性能等確認済」シール等で確認しましょう。

飲酒運転・ながら運転は禁止です

自転車や自動車と同様に飲酒運転・ながら運転は禁止されており、違反すると5年以下の懲役又は100万円以下の罰金等の罰則が科せられます。免許が不要とはいえ、軽い気持ちで運転してはいけません。

自賠責保険に加入しましょう

特定小型原動機付自転車は、自賠責保険への加入が義務付けられています。所有する際は必ず登録の手続きを行い、自賠責保険に加入しましょう。

今月のクイズの答え