自転車を安全に利用するために
2025年5月号
今月のクイズ
2024年中に発生した自転車乗用中の交通事故全体において、自転車が加害者(第1当事者)となった交通事故の割合を次の中から選んでください。
- (1)11.3%
- (2)20.5%
- (3)24.8%
2024年中に発生した自転車関連事故は67,531件で前年より4,808件減少したものの、交通事故件数全体においては依然として2割以上を占めています*1。また、2020年から2023年までは自転車による交通事故の増加傾向が続いていたことから、2024年11月には自転車の運転に関するルールが強化されました。今月は新たな罰則規定を中心に、改めて自転車の交通ルールを確認・理解し、安全に利用するための方法を考えてみましょう。
- *1出典:警察庁「令和6年中の交通事故の発生状況」より
自転車に関する新たな罰則規定
自転車運転中の携帯電話等の使用による交通事故件数が近年増加傾向であること(図1)、酒気帯び状態で運転した場合は飲酒なしと比べて死亡・重傷事故率が高いこと(図2)から、2024年11月に道路交通法が改正され、新たな罰則規定が整備されました。


- 図1~図2 出典:警察庁「交通事故統計」より弊社作成
「ながらスマホ」の罰則強化
携帯電話等使用等(保持) |
---|
自転車運転中にスマホ等で通話や表示された画面を注視した場合(ハンズフリー装置を併用する場合や自転車が停止しているときを除く) 6か月以下の懲役または10万円以下の罰金 |
携帯電話等使用等(交通の危険) |
---|
自転車運転中にスマホ等で通話や表示された画面を注視したことにより交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合 1年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
「酒気帯び運転」の罰則新設
酒気帯び運転 | 車両提供罪 | 酒類提供罪 | 同乗罪 |
---|---|---|---|
酒気を帯びて自転車を運転した場合 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗し、自転車の運転者が酒気帯び運転をした場合 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
酒気帯び運転 | 車両提供罪 |
---|---|
酒気を帯びて自転車を運転した場合 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
酒類提供罪 | 同乗罪 |
---|---|
自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗し、自転車の運転者が酒気帯び運転をした場合 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
「ながらスマホ」については、保持していた場合と、それによって交通の危険を生じさせた場合とでは、罰則が異なります。「酒気帯び運転」に関しては違反者に限らず、車両・酒類の提供者や同乗者にも罰則が課せられます。なお、「ながらスマホ」も「酒気帯び運転」も刑事罰の対象となったことで、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合には、その場での身柄拘束(現行犯逮捕)も可能となっています。
法令違反による事故のリスクと自転車安全利用五則
警察庁の発表によると自転車乗用中に事故に遭った人の約7割が何かしらの法令違反をしていることがわかっています。「安全運転義務違反」が59.3%と最も多く、「交差点安全進行義務違反」が21.5%、「一時不停止」が7.3%、「通行区分違反」が2.4%と続きます*2。事故を防止するためには交通ルールを守ることが大切です。『自転車安全利用五則』の内容を確認し、改めて自転車利用上の注意点と基本的なルールを確認してみましょう。
- *2出典:警察庁「令和6年中の交通事故の発生状況-自転車(第1・第2当事者)の法令違反別交通事故件数」より
自転車安全利用五則 (2022年11月1日改定)
- その1 自転車は車道が原則、左側を通行/歩道は例外、歩行者を優先
- 歩道と車道の区別がある道路では、原則、車道の左側に寄って通行しなければなりません。「自転車及び歩行者専用」の標識・標示がある場合等は歩道を通行できますが、車道寄りの部分を徐行して通行しなければならず、歩行者の通行を妨げる恐れがあるときは、一時停止しなければなりません。

歩行者専用の標識
- その2 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認
- 信号と一時停止を必ず守り、安全を確認してから横断しましょう。車道を通行しているときは自動車と同じ信号に従いますが、歩道を通行しているときや「歩行者・自転車専用」の表示があるときは歩行者用信号に従いましょう。
- その3 夜間はライトを点灯
- 安全を確認し自分の存在を知らせるために、夜間は必ずライトを点灯します。
- その4 飲酒運転は禁止
- 少しでもお酒を飲んだ時は絶対に運転をしないようにしましょう。
- その5 ヘルメットを着用
- 2023年4月から全ての自転車利用者に対しヘルメット着用が努力義務となりました。警察庁によると、自転車乗用中の死者は約5割が頭部に致命傷を負っています。被害を軽減するためにも必ず着用するようにしましょう。
自転車の安全な利用方法
信号無視や一時不停止、ながらスマホ等の一定の違反行為を3年以内に2回以上反復して行った運転者に対しては、自転車運転者講習の受講が命じられます。また、2026年5月23日までには、自転車等の軽車両に対する反則金制度が新設される予定です。今後は自転車運転者に対してもより一層法令を遵守することが求められています。自転車関連事故をなくすためにも、安全運転を心がけましょう。
重大事故につながるリスクがあることを十分に理解しましょう
自転車は、道路交通法では自動車や原動機付自転車と同じ「車」に分類され、交通ルールを守らずに事故を起こした場合は加害者として責任を負わなければなりません。免許が不要であることに加え、身近で便利な乗り物ではありますが、場合によっては被害者に重い後遺症を負わせたり死亡させてしまったりする可能性があります。自転車であっても重大事故につながるリスクがあることを自覚しましょう。
危険な運転は絶対にやめましょう
信号無視等の主な違反や、罰則が強化された「ながらスマホ」「飲酒運転」だけでなく、イヤホンの使用・傘さし等の片手運転・二人乗り・並走等も大変危険です。絶対にやめましょう。
自転車利用者向けの保険に加入しておきましょう
過去には9,000万円を超える高額な損害賠償命令が認められた事例があります。特に歩行者との事故では自転車側の責任割合が大きく、賠償額も高くなります。万が一に備え、保険に加入しておきましょう。
今月のクイズの答え
-
(3)
24.8%計16,776件発生しています。
- 出典:警察庁「令和6年中の交通事故の発生状況-第1当事者別交通事故件数の推移」より
- 出典: