薄暮時・夜間の安全な運転方法
2025年9月号
今月のクイズ
秋の交通安全運動では毎年のように「夕暮れ時以降の早めのライト点灯やハイビームの活用促進」「反射材用品等の着用推進」が重点項目として掲げられていますが、依然として17時台~19時台の死亡事故発生件数が多く、特に薄暮時間帯*1における死亡事故は10月~12月にかけて最も多く発生しています*2。日没時間が早まる時期を迎えるにあたり、薄暮時・夜間の運転で注意すべき点を再確認してみましょう。
- *1薄暮時間帯とは、日の入り時刻の前後1時間をいいます。
- *2警察庁「薄暮時間帯における死亡事故に係る分析~死亡事故の当事者別件数(昼間・薄暮時間帯)~」より
薄暮時・夜間特有の危険とは
視界不良・発見の遅れ
暗くなると視界が悪くなり、危険の発見と対応が遅れやすくなります。通常、ロービームは約40m、ハイビームは約100m先までを照らしますが、照射範囲を超えた先にいる歩行者等を発見することは難しいため、特にロービームでは危険の認知が遅れ、回避が間に合わなくなるおそれがあります。歩行者等との事故を避けるためには、どれだけ早く発見できるかが重要です。

げん惑・蒸発現象(グレア現象)
対向車のライトを直接目に受けると、まぶしさで一時的に見えなくなることがあり、これを「げん惑」といいます。回復には数秒かかるため、その間は前方の確認が十分にできず、危険な状態となります。また、自車と対向車のヘッドライトによって、道路の中央付近にいる歩行者等が蒸発したように消えて見えることがあります。「蒸発現象」といい、特に路面が濡れているときは光が乱反射するため、この現象が発生しやすくなります。前方や周囲の状況を広く捉え、慎重に走行する必要があります。

速度超過
夜間は速度感が鈍り、実際の速度よりも遅く感じることがあるため、速度超過になりやすいといわれています。また、昼間に比べて交通量が少ないことも速度を出しやすい要因とされています。夜間は速度超過しやすいことに加えて危険の発見も遅れやすいため、衝突までに十分な減速ができず、重大事故に至っていることが考えられます。ロービームの照射範囲(約40m)は、60km/hで走行しているときの停止距離(約44m)よりも短いため、危険を発見してからブレーキをかけても回避できない可能性があります。路面状態によっては停止距離がさらに延びるため、事故を防ぐには適切な速度管理が大切です。
危険な歩行者・自転車
夜間は酒に酔ってフラフラ歩く人や酔いつぶれて路上で寝てしまう人、無灯火の自転車等、危険な行動をする歩行者や自転車がいることがあり、昼間とは異なった注意を向ける必要があります。薄暮時間帯においては、横断中死亡事故の約8割が「横断歩道以外」で発生しており、その約7割に歩行者の法令違反があることもわかっています*3。
- *3政府広報オンライン「夕暮れ時に歩行者が死亡する交通事故が多発!この時間帯の交通事故を防ぐには?」より
薄暮時・夜間の事故を防止するためには
早めにライトを点灯する
警視庁では「トワイライト・オン運動」と称し、月別の点灯推奨時間を設定しています。これを参考にし、早めにライトを点灯するよう努めましょう。オートライトには頼らず、運転者自身で点灯のタイミングを意識することが大切です。また、危険を少しでも早く発見できるよう、なるべく先の方に目を向けるようにしましょう。
令和7年各月点灯推奨時間 | |
---|---|
9月 | 17:00 |
10月 | 16:30 |
11月 | 16:00 |
12月 | 16:00 |
- ※警視庁「トワイライト・オン運動」より弊社作成
ハイビームとロービームを適切に使い分ける
警察庁は「自動車対歩行者による死亡事故(夜間・自動車直進中)において一定の条件下で発生したものを調査分析した結果、ハイビームを活用していれば、衝突回避できた可能性が高いものが一定数ある*4」と発表しています。また、ハイビームは危険の早期発見だけでなく、遠くの歩行者や見通しの悪い交差点で行き交う車にとっては、接近の手掛かりにもなります。周りの交通に自車の存在を知らせるためにも、前照灯を上向きにしておきましょう。ただし、交通量の多い市街地等での走行や対向車と行き違うとき、他の車の直後を通行するときは、げん惑や蒸発現象を避けるため、前照灯を減光するか下向きに切り替えなければなりません。状況に応じて適切に使い分けましょう。
- *4引用:警察庁「ハイビームの上手な活用で夜間の歩行者事故防止」より

速度を適切に管理し、危険を予測する
人間の感覚は曖昧な上に錯覚を起こすことがあるため、必ず速度計で確認しながら調節をしましょう。夜間は危険の発見が遅れたり見落としたりすることがあります。慌てて減速をしても間に合わない可能性があるため、常に危険を予測しながら慎重に運転するよう心がけましょう。
歩行者や自転車として事故に遭わない行動をする
夜間はドライバーとしてだけでなく、歩行者や自転車の立場になったときも事故に遭わないための行動をしなければなりません。夜間はなるべく暗い色の服装を避けて反射材を使用し、横断歩道以外を横断しない、泥酔状態になるほどの飲酒は控える、無灯火の自転車・電動キックボードでの走行はしないなど、自分自身のためにも安全な行動をとりましょう。
今月のクイズの答え
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(3)
50%車両単独が19%、自動車対自転車が10%と続きます。
- 出典:警察庁「薄暮時間帯における死亡事故に係る分析~死亡事故の当事者別件数(昼間・薄暮時間帯)~」より
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