山道での運転
2025年10月号
今月のクイズ
2024年に非市街地の下り坂で発生した死亡事故の内、カーブと直線の割合で正しいものを次の中から選んでください。
- (1)カーブ32.5%・直線67.5%
- (2)カーブ62.7%・直線37.3%
- (3)カーブ49.2%・直線50.8%
日本は山地が多い地形であり、特にこれから始まる秋冬の行楽シーズンには紅葉や温泉、ウィンタースポーツなどを楽しむために、不慣れな山道を運転する機会が増えるかもしれません。日頃走行しているような道路とは異なる特徴やリスクがありますので、山道での安全な運転方法について考えてみましょう。
山道の特徴や運転時のリスク
急カーブ・連続カーブ
山道にはカーブが多くあります。カーブの半径が小さいほど遠心力が大きく働くため、速度が高いと曲がりきることができず、対向車線にはみ出すおそれがあります。また、山道ではカーブがきつい場所や周囲の樹木による死角、樹木の影の切れ目から入る日光による瞬間的な眩しさなどで、先行車や対向車の様子が確認しづらく、急なブレーキに対応できずに追突したり、中央線を越えてくる対向車と衝突を起こしたりする可能性があります。

下り坂
下り坂では重力が働くため速度が出やすく、特に勾配の急な下り坂では加速に伴って停止距離が長くなるため、十分な車間距離を保っていないと追突するリスクが高まります。天候の変わりやすい山間部では雨で路面が濡れていることもあり、さらに停止距離が延びることも考えられます。速度が高いと事故の衝撃力も大きくなるため、適切な速度管理が大切です。ただし、フットブレーキを使いすぎると「フェード現象」や「ベーパーロック現象」が発生することもあるので、減速の方法にも注意が必要です。
フェード現象 | ベーパーロック現象 |
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ブレーキパッドやブレーキシューが加熱し、摩擦力が低下することでブレーキのききが悪くなる現象です。 特にドラムブレーキは内部に熱がこもりやすいため、この現象が発生しやすいです。 |
ブレーキパッドやディスクが加熱し、その熱でブレーキ液が沸騰して気泡が発生することでブレーキのききが悪くなる現象です。 ブレーキをかけても圧力がうまく伝わりません。 |
狭路・未舗装道路
山道には未舗装道路があり、路面の凸凹にハンドルをとられたり脱輪したりする可能性があります。特に夜間では、外灯も少なく路面状態の確認がしづらいため、より危険性が高まります。また、このような道路では道幅が狭いことが多いため、対向車とすれ違う際の速度管理や操作を誤ると衝突や転落等の事故の危険性が高まります。
わき見運転
桜の季節や紅葉の季節、景観地等では、外の景色についつい気を取られ、わき見運転をしてしまうことがあります。山道には死角が多く、他の車や自転車、動物等と接触する危険性があり、前方不注意による事故を起こすリスクが高まります。
心理的な負担
山道には普段走行している道路とは異なった形状や危険があり、多くのことに注意を払わなければならず、精神的な疲労につながります。また、山道の運転に不慣れなドライバーは後続車に追いつかれたときや後方の渋滞にプレッシャーを感じ、焦りから速度を出し過ぎてしまうなど無理な運転をするおそれがあります。
野生動物との衝突
山道では野生動物と遭遇することもあり、車と衝突して野生動物が死亡する事故を「ロードキル」といいます。そのような危険がある道路には「動物が飛び出すおそれあり」の警戒標識が設置されており、地域によってシカ・タヌキ・キツネ・サル・鳥類等、様々な動物の絵柄が標識に描かれています。

山道における安全運転のポイント
先行車・対向車・後続車への注意
カーブでは先行車や対向車が死角に入ってしまうため、あらかじめ十分な車間距離を確保し、減速してから曲がるようにしましょう。わき見運転はせず、前方だけではなく、ミラーなども使い周囲の状況をよく確認してください。後続車に追いつかれたときや後続車の動きが気になる場合は、無理をせず、広い場所に入るなどして進路をゆずりましょう。
エンジンブレーキの活用
長い下り坂ではフットブレーキを使いすぎないようにしなければなりません。ペダルの踏み込み量を少なくするのではなく、全く踏まない時間をつくることが重要です。フットブレーキを使用しない代わりに、シフトレバーを「L」「2」「B」等に切り替え、より強いエンジンブレーキをきかせましょう。
速度管理とスムーズな走行
速度が高いと遠心力が大きく働きます。また、不安定な速度では同乗者が車酔いをしてしまうかもしれません。カーブの手前ではしっかりと減速し、カーブ走行中はブレーキを踏まずに一定の速度を保つようにしましょう。曲がるときには急な動作とならないよう、落ち着いてハンドルを操作します。事故防止と同乗者への配慮のために、安定したアクセル・ブレーキ・ハンドルの操作を心がけましょう。
狭路でのゆずりあい
狭路で対向車とすれ違うときは安全な間隔を保ち、一時停止や徐行をして慎重に進まなければなりません。山道では基本的に登りの車が優先です。しかし、待避所がある場合は登りか下りかに関係なく、待避所がある側の車が進路をゆずりましょう。また、片側が崖になっている道路でも登りか下りかに関係なく、崖側の車が進路をゆずります。


ロードキルへの対処
もし野生動物と衝突してしまった場合は、警察に通報しなければなりません。道路緊急ダイヤル「#9910」にも連絡し、指示に従うようにしましょう。二次的事故を防止するには、なるべく路肩等に移動させておく必要がありますが、感染症等の衛生リスクがありますので、素手で直接触らないよう注意してください。動物の死骸は道路管理者または自治体が処理をします。なお、野生動物との事故は物損事故として扱われるため、自賠責保険では補償されません。万が一に備え、車両保険に加入しておきましょう。
今月のクイズの答え
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(2)
カーブ62.7%・直線37.3%事故件数では直線の方が多いものの、死亡事故ではカーブの方が多くなっています。
- 出典:イタルダ 交通事故統計表データ(令和6年版)「都道府県別・地形別 道路線形別 死亡事故件数」より
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