「だろう運転」のリスク
2025年11月号
今月のクイズ
自動車事故の原因となる「だろう運転」は、日頃の習慣や思い込み、決めつけなど、人間の心理的特性によって引き起こされることがあります。特に日常的に運転をするドライバーや運転に慣れてきた頃において、油断や慢心が生まれた場合、結果として安全確認や危険の予測がおろそかになります。
慣れた道や慣れた車であっても、道路環境や他の交通参加者、車両の状態がいつも同じとは限りません。交通事故を防止するためにどのような運転を心がければ良いのか、考えてみましょう。
思い込みで起きる事故
人間は自分に都合の良い解釈をしてしまう特性などがあります。また、日頃の習慣や先入観などもあり、時に交通の場において事故を引き起こす「だろう運転」が発生します。
例えば、ミラーには何も映っていなかったので「確認しなくても大丈夫だろう」と考え、十分な確認を行わないまま進路変更をしてしまうと、死角にいた車と衝突することがあります。また、優先道路を通行しているときや、交差点での優先関係において優位である場合には「相手が止まるから大丈夫だろう」と考え、他の交通の動静に対する注視を怠り、事故となるケースがあります。
以上の事例のように、思い込みや決めつけは運転における判断を間違える要因となり、安全不確認や一時不停止などの事故につながる危険な行動を起こすことがあります。
「だろう運転」と「かもしれない運転」
自分自身で思い込みに気づき、間違った運転の習慣を変えていくことは容易ではありません。事故を起こしやすい「だろう運転」から脱却するためには、あらゆる危険を疑い、予測する、「かもしれない運転」へと変え、適切な運転行動を実践する必要があります。
ここでは以下(1)~(4)のイラストそれぞれの交通場面において想定される「だろう運転」と「かもしれない運転」が、どのようなものであるかを考えてみましょう。
(1) 前の車に続いて赤信号で止まっていたところ、前方の信号が青信号に変わりました。

(2) 交差点内で右折待ちをしていたところ、対向車線側からは二輪車がきましたが、前方の信号が黄色になりました。

(3) 前方に一時停止の標識・標示がありますが、人通りや車通りの少ない交差点です。

(4) 信号機のない横断歩道に近づいていますが、付近の歩行者はスマホや違う方向を見ていて、横断する気配がありません。

各場面においてどのような事故リスクがあるのかを知り、実際にとるべき運転行動を確認しましょう。
(1) 追突事故

『青信号になったから、前車は発進するだろう』と考えていると、追突する可能性があります。横断歩道上に渡り切れていない歩行者がいたり、交差点の向こう側が混雑していたりすることもあります。『すぐに発進しないかもしれない』と考え、前方の状況や先行車のブレーキランプに注意を向け、車間距離を確保しましょう。
(2) 右直事故

『バイクはまだ遠いし、黄色信号で止まるだろう』と考えていると、直進二輪車と衝突する可能性があります。二輪車は実際よりも遠くに見えやすいことに加え、双方が黄色信号に焦って通過しようとすることもあります。『二輪車が交差点内に入ってくるかもしれない』と考え、減速または停止をして相手車両の動きを確認しましょう。
(3) 出会い頭事故

『いつも車も人もいないから、今日も大丈夫だろう』と考えていると、出会い頭の事故を起こす可能性があります。これまで危険な思いをしたことがなかったとしても、いつも安全であるとは限りません。特に慣れた道である程、慢心が生まれやすくなります。『死角に車や歩行者がいるかもしれない』と考え、必ず一時停止をして安全を確認しましょう。
(4) 人身事故

『渡ろうとする歩行者はいないだろう』と考えていると、人身事故を起こす可能性があります。信号のない横断歩道に近づいたとき、横断する人がいるかどうか明らかでない場合や歩行者が横断歩道を渡るか判断に迷う場合には、いつでも止まれる速度で進行し、歩行者の動向に注意しましょう。
「だろう運転」による交通事故を防ぐためには
事故が起こったときに、「まさか~とは思わなかった」「突然●●が出てきた」「勝手に●●した」というドライバーがいます。このような思考は、自分に都合の良い解釈をして危険への注意を怠ったことの表れともいえます。「思い込み」は、事故につながる「だろう運転」の原因であるということを、しっかりと理解しましょう。日々危険に対する予測を習慣づけることや他者からの指摘を受けるだけではなく、交通参加者への気遣い、思いやりをもって運転をすることは、事故を防ぐ運転行動を身につけるのに効果的です。いま一度、自分自身の運転の仕方や考え方を振り返ってみましょう。
- 「~だろう」との考えに陥っていないか、セルフチェックするようにしましょう
- あらゆる危険を予測し「~かもしれない」と考える習慣を身につけましょう
- 交通参加者への気遣い、思いやりのある運転を心がけましょう
今月のクイズの答え
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(1)
43.0%
- 出典:イタルダ 交通事故統計表データ(令和6年版)「事故類型別・法令違反別 全事故件数(第1当事者)」より
- 出典: