緊急自動車への対応

2025年12月号

今月のクイズ

2024年中における救急出動件数のうち、正しいものを次の中から選んでください。

  • (1)
    約770万件
  • (2)
    約640万件
  • (3)
    約520万件

緊急自動車がより早く、より安全に現場に到着するためには、一般車両の協力が不可欠です。運転者一人ひとりの適切な判断と落ち着いた行動が、人命を救うことにつながっています。しかし、対応を誤ると救命活動に遅れが生じるだけでなく、新たな事故を生む可能性もあります。今月は緊急自動車が接近してきた際の正しい対応について、改めて確認してみましょう。

緊急自動車とは

サイレンを鳴らし、赤色の警光灯をつけ、緊急用務のために走行しているものをいいます。サイレンを鳴らしていないときや、警光灯が青色の車両は緊急自動車に該当しません。多くの場合、急病・事故・火災等、人命にかかわるため、どれだけ早く現場に到着できるかが重要です。道路交通法では緊急自動車の優先通行権が認められており、一般車両はその進路を妨げてはならないと定められています。緊急自動車へ進路をゆずることはマナーではなく義務であり、違反をすると反則金や減点等の罰則の対象にもなります。

一刻を争う救命の場

現場到着所要時間(119番通報を受けてから現場に到着するまでに要した時間)の平均は年々延伸傾向にあり、2022年では約10.3分、2023年では約10.0分と、2年連続で10分台を記録しています(図1)。これには様々な要因が影響していますが、その一因に交通渋滞や緊急自動車の走行への妨害があると考えられます。死亡率は心臓停止後約3分で50%、呼吸停止後約10分で50%、多量出血後約30分で50%に達するといわれており、時間の経過とともに死亡率が高まるため、1分、1秒でも早く救命処置を行うことが重要です(図2)。交通参加者が適切に行動することで、現場到着に要する時間を短縮し、多くの命を救うことができます。

図1 現場到着所要時間の推移
  • 出典:
    消防庁 報道資料「令和6年版 救急・救助の現況」より弊社作成
図2 カーラーの救命曲線
  • 出典:
    M.Cara:1981.「カーラーの曲線」より弊社作成

緊急自動車が接近してきたときの対応

誤った対応

緊急自動車が接近してきたときに誤った対応をすると、緊急自動車のみならず、他の交通参加者に迷惑をかけたり、新たな事故を引き起こしたりするおそれがあります。

サイレンを無視して進路をゆずらない

対応が遅れ、緊急自動車への通行妨害や他の車が避けるためのスペースをなくす可能性があります。

急ブレーキや急ハンドルで対応する

サイレンが聞こえたからといって急ブレーキで停止すると、追突される可能性があります。また、急ハンドルでの進路変更や周囲の状況を確認しないまま片側に寄ると、接触事故を起こしたり、かえって邪魔になったりすることもあります。

道路の中央や追い越し車線で停止する

不適切な場所で停止すると、緊急自動車が通過できなくなったり、他の車が寄せられなくなったりする可能性があります。

緊急自動車通過後、すぐに発進する

本来の走行位置とは異なる場所に停止しているため、安全確認しないまま発進すると他の交通参加者と接触する可能性があります。また、緊急自動車は1台だけでなく、複数台が連続して走行している場合もあります。

正しい対応

近年の車は防音性能が高いことに加え、大きな音で音楽を流していたりエアコンを使用していたりすると、サイレンが聞こえにくいことがあります。なるべく音量は抑えるようにし、少しでもサイレンの音が聞こえたり赤色灯が見えたりしたときは、窓を開ける、音量を下げるなどして、周囲の状況に注意を向けましょう。緊急自動車のサイレンが聞こえたら、まずはどの方向から来ているのか、目視やミラーを活用して確認します。進路をゆずる場合は、無理な動きをして事故を起こすことのないように、落ち着いて行動することが大切です。周囲の状況を確認してから合図を出し、再度確認をした上で減速や停止、進路変更を行います。一時停止中は周囲の車や緊急自動車に伝わるよう、ハザードを付けておくと良いでしょう。

確認 → 合図 → 再確認 → 行動

交差点付近を走行中に緊急自動車が近づいてきたとき

交差点を避け、道路の左側に寄って一時停止し、進路をゆずります。既に交差点内に入っていた場合は、できる限り交差点から出て左側に寄ります。

交差点付近以外を走行中に緊急自動車が近づいてきたとき

基本は道路の左側に寄って、緊急自動車の進路を確保します。一方通行の道路等、左側に寄ることで緊急自動車の走行の邪魔になる場合には右側に寄ります。この時に一時停止の義務はありませんが、緊急自動車を先行させるため、状況に合わせた対応をとりましょう。

高速道路では…
緊急自動車は追越車線を通行することもあれば、路肩を通行することもあります。また、渋滞中には車線と車線の間を通行することもあります。一般道路とは異なり、後方からのみ接近してくるので、ミラーで緊急自動車の動きや距離を把握し、周囲の車の動きを見ながら適切な位置に移動しましょう。救急隊員の誘導・指示がある際は、必ず従いましょう。

緊急自動車を迅速・安全に現場到着させるために

消防庁の統計によると、2024年の全国の救急出動件数は過去最多を更新しました*1。救命の現場では1分、1秒の遅れが生死を左右します。緊急自動車を迅速かつ安全に到着させるために、道路を共用する運転者一人ひとりが担う責任を自覚し、日頃から正しい対応の仕方をイメージするなど、いざというときのために備えておきましょう。

今月のクイズの答え