安全運転のための心と身体の健康管理

2026年2月号

今月のクイズ

2024年中に「居眠り運転」によって発生した事故件数を次の中から選んでください。

  • (1)
    約500件
  • (2)
    約1,000件
  • (3)
    約1,500件

自動車の安全な運転には法令順守や安全確認等の基本動作だけではなく、運転者の健康管理が欠かせません。心や身体の調子が悪いときの運転は、事故を起こすリスクが高まります。忙しいとき等は自身の健康状態について深く考える機会が少なくなりがちです。調子の悪いときに無理をして運転をすることによって発生する事故や違反等を防ぐために、今月は運転における心と身体の健康管理について確認しましょう。

心と身体の不調がもたらす事故リスク

道路交通法 第66条では、過労、病気、薬物の影響等で正常な運転ができないおそれがある状態での運転を禁じています。違反をした場合は、免許の取消(違反点数25点)、拘禁刑3年以下または50万円以下の罰金といった罰則が科せられます。また、たとえ罰則の対象とならなくても不調時の運転は事故のリスクが高まります。心と身体の不調が運転に及ぼす影響を理解し、健康管理の重要性を確認していきましょう。

運転に影響を及ぼす心の不調

  • ストレス、悩み
  • イライラ
  • 急ぎ、焦り など

ストレスが蓄積すると心の疲労を加速させ、集中力や注意力の低下を招きます。仕事や私生活での悩みがあると、視線は前方にあっても運転以外のことに意識が向いている状態になりがちです。このようなときには信号や標識の見落とし、漫然運転、安全不確認等による事故を起こす可能性が高まります。また、日常生活に限らず運転中にも無意識にストレスや緊張感による心理的な負荷がかかります。
運転し始めたときは穏やかであっても、渋滞や他の車の挙動にイライラを募らせたり、時間がないときに焦りやプレッシャーを感じたりと、走行の途中で気持ちに変化が生まれることがあります。イライラが急操作や幅寄せ、車間距離を詰めるなどの行動に表れたり、先を急ぐ気持ちがスピード超過や信号無視等の違反を引き起こしたりすることがあります。心理的な不調のきっかけは1つとは限らず、様々な要因が重なることで危険な運転につながることがあります。

運転に影響を及ぼす身体の不調

  • 疲労、過労
  • 睡眠不足、居眠り
  • 体調の急変
  • 服薬の影響 など

疲労が重なると注意力や判断力が鈍り、正常な運転ができなくなるおそれがあります。過労運転と見なされた場合は、たとえ事故を起こしていなくても罰則の対象となります。十分な睡眠を取らずに運転をすると、居眠り運転につながるだけでなく、ウトウトした状態での走行になることでブレーキやハンドル操作がワンテンポ遅れ、追突や車線逸脱による接触のリスクが高くなります。体調の急変では、心筋梗塞・心不全等の心臓疾患と、くも膜下出血・脳内出血等の脳疾患が特に危険な症状です。健康起因事故*1の疾病別内訳では、心臓疾患が14%、 脳疾患が13%となっていますが、運転者が死亡した場合に絞ると心臓疾患が55%、脳疾患が10%と、半数以上を占めています*2。体調の急変は車の制御が難しくなるため、重大な事故となる可能性が高くなります。その他にも風邪や病気の治療のために薬を服用している場合には、眠気や倦怠感、胃の不快感等の副作用が出ることで、運転に影響が生じるおそれがあります。

  • *1
    健康起因事故とは、運転者の疾病により事業用自動車の運転を継続できなくなったものを指します。
  • *2
    出典:国土交通省「事業用自動車における健康起因事故対策について」より

心と身体の健康管理

2025年5月には労働安全衛生法改正により従業員50人未満の企業にもストレスチェックが義務付けられるようになるなど、メンタルヘルスは近年、より重要視されています。特に心の不調は目に見えないため、日頃から小さなサインを見逃さず、早めに対処することが大切です。一方、身体においては肥満・高血圧・高血糖・喫煙・過度な飲酒・慢性的な睡眠不足が、生活習慣病のリスク増加や免疫力低下による不調をきたす原因になります。

このようなサインはありませんか?

心身の健康を保ち安全な運転をするために、次のような習慣づくりと対処をしましょう。

バランスのとれた食事・ 質の高い睡眠・適度な運動
炭水化物・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラルをバランス良く摂取できるよう、一汁三菜を意識した献立を考えましょう。なるべく毎日同じ時間に就寝・起床し、6~8時間の睡眠を取りましょう。眠る前はカフェインやアルコールの摂取を避け、ブルーライトを浴びないようにします。「適度な運動」として、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行うこと、息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上行うこと、座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないように注意すること等が推奨されています*3
  • *3
    出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」より
定期的なストレスチェックや健康診断、医療機関の受診
健康管理を行う上で、まずは自分自身の状態を正しく理解する必要があります。調子が悪くても受診を後回しにしたり、症状から自己判断したりすることは危険です。場合によっては自覚症状がないこともありますので、定期的に健診を受けましょう。また、健診で指摘があった場合は放置せずに、適切な治療や生活習慣の改善に努めましょう。
適切な服薬と運転中止
持病や風邪で服薬するときは、医師や薬剤師の指示に従って用法・用量を守りましょう。眠気やふらつき等の副作用がある薬を服用するときは、運転を控えてください。運転中は血圧が上がるため、体調の急変は年齢や基礎疾患の有無にかかわらず、誰にでも起こる可能性があります。運転中に異常を感じたときは、すぐに安全な場所へ移動して休憩をとりましょう。回復しない場合や悪化する場合は運転を中止し、助けを呼びましょう。

運転をサポートする安全運転支援システム

先進技術により、運転者の状態をモニタリングするシステムが普及してきています。例えば、前方の危険を検知して警報を発したり、自動的にブレーキを作動させたりして衝突回避や被害軽減を支援する「衝突被害軽減ブレーキ」、車線から逸脱しそうな場合に警告を発したり、操作を支援したりする「レーンキープアシスト」、AIカメラが運転者の状態を認識し、居眠りや脇見運転を検知すると警告音で注意喚起する「アラート機能」等があります。これらの機能は、万が一運転者の体調に急変があったときや、居眠りをしてしまったときの手助けとなるかもしれません。
ただし、これらの技術は運転の補助に限定されています。運転責任は運転者自身にあり、心身不調時はシステムからの警告に対しても反応が遅れたり、「まだ大丈夫だろう」と誤った判断をしたりする可能性もありますので過信・油断は禁物です。

心身の不調による交通事故を防ぐために

今月のクイズの答え