運転中に起こる錯覚への注意
2026年4月号
今月のクイズ
人の感覚は環境や心理に左右され、見え方・感じ方を誤る(錯覚する)ことがあります。これは誰にでも起こるもので、目や脳のはたらきによる認識のズレが、運転中の事故・違反の要因になることがあります。運転中に起こる錯覚を知り、それによる事故・違反を防ぐためにはどうすれば良いのかを考えてみましょう。
運転中に起こりやすい代表的な錯覚
図1と図2に示した上下の線は、どちらが長く見えますか。実際は同じ長さですが、上の線が長く見えた人もいるはずです。運転中も同じように、錯覚で危険に気づきにくくなることがあります。代表的な錯覚を知り、どのような事故・違反につながるかを確認しましょう。

速度の錯覚
速度の錯覚の例(1)
高速走行を続けると、速さに慣れて体感速度が鈍くなります。これを「速度順応」といいます。高速道路から一般道路に入った直後、スピードメーターを確認したら思っていたよりスピードが出ており、慌てて減速した経験があるかもしれません。速度順応が起こると、感じる速さと実際の速さの差が大きくなります。
- 事故・違反のリスク:
- 高速走行を続けると感覚が鈍くなり、高速道路や降りた直後の運転で速度超過を起こしやすくなります。速度が高いまま走ると、ブレーキが間に合わず追突や衝突を起こしたり、視野が狭くなって見落としが起きたりします。

速度の錯覚の例(2)
先行車と同じ速度で走り続けていると、自車と先行車が止まっているかのように感じることがあります。トンネルや高速道路、夜間等の景色が単調な場所では、周りの景色の変化で速度を感じる仕組み(流体刺激)が弱くなるため、このような錯覚が起こりやすくなります。
- 事故・違反のリスク:
- 先行車につられて加速し、気づいたらかなりの速度になっていることがあります。さらに、車間が変わらないまま速度だけ上がるため、速度に見合った車間距離が取れなくなります。こうなると、先行車のブレーキへの反応が遅れ、追突のリスクが高まります。

速度の錯覚の例(3)
上り坂が下り坂に、下り坂が上り坂に見えるなど、坂の勾配を逆に感じることがあります。たとえば、急な下りが続いたあとに傾斜が変わると、その先が上りに見えてしまい、下りだと気づかず加速してしまう場合があります。反対に、高速道路のサグ部(下り坂から上り坂に切り替わるV字の部分)では、上りに入ったことに気づかず減速し、渋滞が起きやすくなります。
- 事故・違反のリスク:
- 下り坂を上り坂と誤ってアクセルを踏むと、速度が出過ぎたりブレーキが遅れたりして、先行車に追突するおそれがあります。反対に上り坂では、無意識に減速しやすく、後続車との車間が詰まりがちです。

距離の錯覚
人は大きいものを近くに、小さいものを遠くに感じやすく、そのため道路上では車体の大きさで距離の見誤りが起きることがあります。とくに、バスやトラック等の大きい車に比べて、バイクのように小さい車体は実際より遠くにいると判断しがちです。夜間は先行車のテールランプの位置を目安に車間を測ることがありますが、ランプの位置が高い車は、低い車に比べて実際より遠くに感じられることがあります。
- 事故・違反のリスク:
- 交差点では、対向車を実際より遠く感じると、余裕があると判断して右折を開始してしまい、右直事故につながります。二輪車は思っているより近くにいることが多いので注意が必要です。直線道路でも、追い越しや回避で対向車線にはみ出す際に距離を誤ると、正面衝突や接触を起こすおそれがあります。また、車間が詰まりやすく、追突事故につながることもあります。

その他の人の性質
運転中、大きな物や目立つ物、強い光等に、無意識に視線が引き寄せられ、車もその方向へ寄ってしまうことがあります。危ないと分かっていても、気づけば対象物まで接近している場合があります。障害物や事故車両がある場面、夜間のヘッドライトや明るい看板では特に起こりやすいため注意が必要です。
- 事故・違反のリスク:
- 視線につられ無意識にハンドルを向けてしまうため、車線を逸脱したり対象物に衝突したりするおそれがあります。

事故・違反を防ぐためには
錯覚は人間の特性であり、誰にでも起こり得ます。錯覚そのものを避けることはできなくても、注意や備えによって事故・違反を防ぐことは可能です。日頃から次のようなことを心がけましょう。
- 「かもしれない」と想定し、落ち着いて行動しましょう
- 普段から「かもしれない」と考え、自分の感覚や判断を疑うことが大切です。「思っているより速いかも」「近いかも」と考える癖をつけましょう。とくに右折・追い越し・合流では、急がず、状況が良くなるまで待ってから動き出すと安全です。
- こまめにスピードメーターを確認し、十分な車間距離を確保しましょう
- 速度は感覚に頼らず、スピードメーターで確認しましょう。運転中は無意識に加速しているときがあるため、こまめにチェックして速度を管理することが大切です。速度に応じた十分な車間距離を取り、高速道路・トンネル・坂道・夜間ではいつもより長めに確保しましょう。
- 意識的に視線を分散させたり、視界に変化をつけたりしましょう
- 一点を見続けず、左右・ミラー・遠方へ視線を分散させたり、状況に応じて車線変更をしたりして、視線と視界に変化をつけましょう。
- 適度に休息を取りましょう
- 休憩したり運転を中断したりすると、感覚や脳のはたらきをリセットできます。疲れを減らすことは、事故防止に効果的です。少なくとも2時間に1回は、必ず休憩を取りましょう。
今月のクイズの答え
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(3)
約2,000件運転感覚の誤りによる事故は、2,175件ありました。
- 出典:交通事故総合分析センター「交通事故統計表データ(令和6年版)」より
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