ヒヤリハット経験を活かし事故を防ぐ

2026年10月号

今月のクイズ

2025年に発生した交通事故のうち、運転者の認知・判断・操作に起因する事故において、『発見の遅れ』が占める割合を次の中から選んでください。

  • (1)
    65.8%
  • (2)
    72.3%
  • (3)
    79.1%

運転中に「危なかった」「もう少しで事故になるところだった」と感じた経験は、多くのドライバーにあるのではないでしょうか。こうしたヒヤリハットは、一歩間違えれば重大事故につながっていたかもしれない貴重なサインです。なぜ危険な状況になったのか、そしてなぜ事故を回避することができたのかを振り返り、次の運転に活かすことで事故を未然に防ぐことができます。今月は事例を交えながら、ヒヤリハットを活かした事故防止について考えてみましょう。

運転におけるヒヤリハット

ヒヤリハットとは、「ヒヤッとした」「ハッとした」と感じた出来事のことです。「ハインリッヒの法則」では、『1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故と300件のヒヤリハットが存在する』とされています。重大事故は突然発生するものではなく、その前に多くのヒヤリハットや危険な場面が積み重なっています。これは交通事故についても同様です。「事故にならなくて良かった」と安心するだけでなく、なぜ回避できたのかも含めて振り返ることが、重大事故を防ぐヒントになります。ヒヤリハットには、危険な状況になった原因と、事故を回避できた理由という二つの気づきが隠されています。それを丁寧に紐解くことが、安全運転を高める大切な一歩となります。

ハインリッヒの法則

事例から考える原因と対策

次の4つの事例から、「なぜ危険な状況になったのか?」「事故に至らなかった要因は何か?」「次はどうすれば良いのか?」を考えてみましょう。

事例(1)

歩道のある道路を走行していると、突然自転車が車道に出てきて接触しそうになり、ヒヤッとしました。

なぜ危険な状況になったのか?

「車道には出てこないだろう」と思い込み、自転車の動きや歩道の様子への注意が疎かになると、自転車が突然飛び出してきたかのように感じます。

事故に至らなかった要因は何か?

歩道沿いを走行する際に速度を控えめにしていたことで、自転車に気づいた際も余裕をもって減速・回避することができたと考えられます。

次はどうすれば良いのか?

歩道に歩行者がいて自転車が通りづらい状況や、縁石の切れ目など車道に出やすい場所をあらかじめ確認し、「自転車が車道に出てくるかもしれない」と予測しながら走行しましょう。また、歩道沿いを走行する際は速度を控えめにすることで、万が一の際にも余裕をもって対応することができます。

事例(2)

優先道路を走行しているときに、突然路地から車が現れ、衝突しそうになりヒヤッとしました。

なぜ危険な状況になったのか?

優先道路を通行していると、「相手が止まるだろう」と思い込み、安全確認や相手の動きへの注意が疎かになって、出会い頭事故につながる可能性があります。

事故に至らなかった要因は何か?

交差点通過時にブレーキへ足をかけておいたことで、相手の車が出てきた際にすぐブレーキを踏み、衝突を回避できたと考えられます。

次はどうすれば良いのか?

優先道路でも、交差道路から出てくる車両への注意が必要です。特に見通しの悪い交差点では互いに見えづらいため、「もしかしたら車が飛び出してくるかもしれない」と意識しながら、交差道路の奥まで視線を向けて早めに相手の動きを確認しましょう。また、交差点通過時はあらかじめブレーキに足をかけておくことで、相手の動きに応じて素早く対応することができます。

事例(3)

コンビニの駐車場に車を停めようと後退したら、すぐ後ろに自転車が現れて、危うくぶつかりそうでヒヤッとしました。

なぜ危険な状況になったのか?

後方は前方に比べて死角が大きく見落としが起こりやすい上、操作への集中や苦手意識から安全確認が不十分になることがあります。

事故に至らなかった要因は何か?

焦らず慎重に後退していたことで速度が抑えられ、自転車に気づいた際もすぐに停止することができたと考えられます。

次はどうすれば良いのか?

後退する前に歩行者や自転車が後方を通行することを想定し、真後ろだけでなく左右後方まで広く目を向け、ミラーやバックモニターに加えて目視でも安全を確認しましょう。また、後退中も周囲の状況が変化することがあるため、焦らずゆっくりと慎重に操作することが大切です。

事例(4)

雨の日の夜に走行していると、突然横断歩道に歩行者が現れてハッとしました。

なぜ危険な状況になったのか?

雨天や夜間は視界が悪く危険を見落としやすい上、濡れた路面では停止距離が伸びるため、普段と同じ速度や車間距離では対応できない場合があります。

事故に至らなかった要因は何か?

前もって標識・標示で横断歩道の存在を認知していたことや、速度を控えめにして運転していたことで、歩行者を発見した後すぐに停止することができたと考えられます。

次はどうすれば良いのか?

道路状況が悪いときほど、標識・標示から先の情報を早めにとらえるようにしましょう。特に横断歩道付近では、横断しようとする人がいないか確認を徹底し、安全を確かめてから通過するようにしましょう。また、濡れた路面では停止距離が伸びるため、速度を控えめにして車間距離を長めに取ることも重要です。

運転中に「ヒヤッ」「ハッ」とする場面では、「相手が突然現れた」と感じることがあります。しかし、危険の多くは相手の動きだけが原因ではなく、前方への注意不足や思い込み、発見の遅れなど、運転者自身の認知や判断が大きく影響しています。

ヒヤリハットを事故防止に活かすためには

ヒヤリハットには、認知や判断の誤りによって危険な状況に陥ったという側面と、適切な運転行動によって事故を回避できたという側面があります。そのため、一つのヒヤリハットからは、「次回改善すべきポイント」と「今後も続けていくべき正しい運転行動」という、二つの重要な気づきを得ることができます。安全運転を見直す絶好の機会と捉え、日頃から運転を振り返る習慣を身につけましょう。一つひとつのヒヤリハットを教訓とし、『危険な経験』を『安全な運転行動』へと変えていく積み重ねが、自分自身と周囲の安全を守ることにつながります。

今月のクイズの答え