火山噴火によって起きる被害
火山が噴火すると、小さな石や巨大な岩石、溶岩や灰、ガスなど、さまざまなものを噴き出します。総じて火山噴出物と呼ばれるこれらの物質は、建物や人に害を及ぼします。どのような現象が発生し、どのような害をもたらすのか、紹介していきます。
噴石
大きさが直径2mm以上の岩石片(火山れき、火山岩塊)を噴石といいます。中でも概ね20~30cm以上のものは「大きな噴石」、2mm以上50㎝以下のものは「小さな噴石」と定義されています。大きな噴石は火口から2~4km先まで飛ぶこともあり、風に流されると10km以上離れた地点に落下することも。建物を破壊し、人を殺傷する恐れがあります。
火山灰
直径2mm以下の噴石は、火山灰と定義されます。火山灰は、火口から数十km~数百km先の地点まで飛散し、広域に降下・堆積します。火山灰を吸い込むと、せきや息苦しさ、のどが痛くなるなどの症状が出てきます。数mm積もっただけで、自動車のスリップ事故が発生しやすくなり、鉄道・航空などの交通網も麻痺します。また、農作物の被害、家屋倒壊など、社会生活に深刻な影響を及ぼします。
溶岩流
マグマが火口から噴出して、冷えて固まらず地表に流れ出る現象を溶岩流といいます。その温度は1000度を超えるため、通過したエリアに火災を引き起こすだけではなく、鉄筋の建物さえも破壊します。ただ、流れる速度は非常に遅いため、基本的に歩いて避難できます。
火砕流
数百度の非常に高温な溶岩片、火山灰、火山ガスなどが、斜面を急速に流れる現象のことを火砕流といいます。その速度は時速数十kmから数百kmを超え、通過したエリアを焼失、埋没させるなど、大きな破壊力を持っています。火砕流から身を守ることは、非常に困難とされています。
火山泥流・融雪型火山泥流
火山泥流とは、噴出された岩石や火山灰が堆積しているところに大雨が降り、周辺の土砂や岩石を巻き込みながら、高速で流れ下りる現象のことです。また、積雪がある冬季に火山が噴火した場合、熱によって雪が水になり火山泥流が発生します。この現象を融雪型火山泥流といいます。その速度は時速60kmを超えることがあり、広範囲の建物、道路、農耕地を破壊するなど、大規模な災害を引き起こします。
火山ガス
火山の近くでは、マグマに溶けていた二酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素などのさまざまな成分が、ガス(気体)となって外に放出されます。噴火がなくてもガスだけが放出される可能性があり、過去にガス中毒による死者も出ています。空気より重いため、谷筋や窪地に溜まりやすいので注意しましょう。
2014年御嶽山噴火
2014年9月27日、長野県と岐阜県の県境にある御嶽山が噴火しました。2015年11月6日現在の消防庁の資料によると、この噴火による死者は58人、行方不明者5人。日本における戦後最悪の火山災害となりました。
噴出物量は50万トン、飛散した大きな噴石も火口から1.5kmの範囲内に収まるなど、爆発力は大きくありませんでした。しかし、近年の登山人気もあり、噴火の現場近くに多くの人がいたことで、被害が大きくなったと考えられています。
消防庁ホームページより弊社作成
口永良部島(新岳)噴火
(出典:海上保安庁)
2015年5月29日午前9時59分、新岳(標高626メートル)で爆発的噴火が発生し、噴煙が高さ9,000m以上まであがり、火砕流が海まで流れました。屋久島町は避難指示を出し、住民ら137人は約12km離れた屋久島に全員避難しました。気象庁は噴火警戒レベルを3(入山規制)から5(避難)に引きあげ、避難指示は同年12月末に一部地域を除いて解除、翌2016年10月に全島で解除されました。
小笠原の海底火山(福徳岡ノ場)噴火
沖縄県国頭村伊部海岸
(2021年10月19日)
(出典:産総研地質調査総合センター)
東京都の中心部から南方に約1,000km以上離れた小笠原諸島。その付近の海底にある火山「福徳岡ノ場」が2021年8月13日に噴火しました。噴煙の高さは約1万6,000mにも及び、この噴火で発生した多量の軽石は海流にのり、約2ヶ月かけて1,300kmほど離れた南西諸島に漂着し始めました。これらの軽石により、漁船やフェリーが出港できない、また、生簀(いけす)で魚が餌と間違って飲み込み大量死するなど、漁業や観光業に影響を及ぼしました。
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