【弁護士解説付き】火災保険の申請サポート業者には要注意!被害者の声では高額手数料や違約金がトラブルに
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台風で自宅が被災してしまい、火災保険を請求したいけれど、保険に関する知識もなければ請求方法すら分からない…。そんな時に「あなたの家でも火災保険で保険金が受け取れます」とか「火災保険の申請サポートはプロにお任せください!」なんて書いてある業者の広告を目にしたら、つい連絡したくなりますよね。
なかには「火災保険で平均〇〇〇万円!」などと宣伝している業者もいます。
でも、ちょっと待って!
その業者は大丈夫ですか?
トラブルになったりしませんか?
火災保険申請のサポートや代行をする業者のなかには、違法行為と知りながらも強引に保険金請求を勧めてくるケースも少なくありません。トラブルになる例が後を絶たず、警察や消費者庁等の行政機関をはじめ国民生活センターでも注意喚起を行っています。
じゃあどうすればいいの?
そんな火災保険加入者のために、火災保険の正しい申請方法やトラブルに巻き込まれないための注意点について【弁護士解説付き】で詳しく説明します。
火災保険申請サポート業者とは
火災保険の請求は契約者本人により行う必要がありますが、火災保険の申請サポートを行う業者とは、あなたが火災保険の請求をする際に書類の取り寄せや作成などの手続きの全部または一部を行う業者のことです。
基本的に「着手金ゼロ、成功報酬100%」をうたい文句に、ネット広告を出したり訪問形式で業者が自宅にやってきたりして勧誘します。
ところで、火災保険の請求は、保険契約に基づいて保険金を請求する「法律事務」に該当すると解釈できます。弁護士法では、法律事務において本人の代行が認められるのは弁護士のみと規定されていますから、資格を持たない第三者による代行業務は弁護士法に抵触します。
具体的には、申請書類の取り寄せや申請・請求行為そのものが該当します。
このため、火災保険の申請サポート業者は、契約者が保険金を請求する際に必要とされる書類の書き方の説明など、事務の代行までは行わず手続きの支援・助言等のみを行います。具体的には被害調査や見積書の作成などが該当しますが、保険金を請求するのが契約者本人であれば適法です。しかし、広告表現と異なりほとんど代行に近い申請サポートを行ったり、十分な説明がないまま高額な手数料を請求したりと、火災保険申請サポート業者が絡むトラブルが多いのも事実です。
あたかもプロでなければ火災保険の申請は難しいような説明をしますが、火災保険の請求は決して難しくはありません。火災保険申請サポート業者の勧誘には注意が必要です。
火災保険の申請サポートによるお客様トラブル
近年、火災保険の申請サポート業者による契約者トラブルが絶えません。
「実質ゼロ円で自宅の修理ができると聞いていたが違う」とか「違約金の説明なんてされていない」など、原因は様々です。
トラブルの原因で多いのは、(1)高額な手数料や違約金、(2)支払われる保険金が業者に言われた金額と違って修理ができないケースです。
(1)の場合、特に悪質で問題となるのは違約金です。契約時には詳しく説明せず、複数枚に及ぶ契約書のどこかに小さく書かれている場合も珍しくありません。申請サポート業者は、言葉巧みに契約時に書類を確認しなかった契約者の落ち度を指摘し、契約者が必要以上に高額な違約金の支払いに応じてしまう例もあるようです。
(2)の場合、業者の多くは火災保険の約款などを考慮せずに請求金額を積み上げる事が多く、火災保険でカバーできない被害についてもどんどん請求に盛り込みます。火災保険の支払対象にならない経年劣化等による損害も見積もりに加えていくことで、結果的に修理費の請求金額と支払われる保険金との差が大きくなり、契約者は、業者に手数料を支払ってしまうと修理そのものが難しくなってしまうケースがあります。
弁護士が解説!火災保険申請サポート業者とは?
火災保険申請サポート業者の悪質な事例や手口とは、いったいどのようなものなのでしょうか。火災保険トラブルに対峙している弁護士にインタビューしました。
田治之佳 弁護士
東京弁護士会所属。火災保険申請サポート業者絡みの不正申請に2020年から対峙。
被災して困っている方々に、いち早く保険金を届けるのが保険会社の使命
正しく健全な保険制度を崩そうとするプレイヤーは排除されるべき!
——田治先生は火災保険の不正申請に対応されていますが、スタンダードな事例と最も悪質な事例の詳細からお聞かせいただけますか?
「よくある相談事例は、経年劣化または原因が分からないのに自然災害の損害として保険金請求するケースですね。本来、原因が分からないのであれば請求してはいけません。法的には、いつどのような原因で損害が発生したのか、具体的に立証していただく必要があります。いつ、どのような原因で損傷したのか分からないのであれば、そのことを明確に申告していただく必要があります。悪質な業者に唆されて虚偽の申告をしてはいけません。経年劣化であれば火災保険の支払いの対象外ですし、原因不明のケースや根拠も無く自然災害として請求してくるケースも、不正請求事案になる場合があります。特に酷かった事例は、訪問営業をかけて屋根に登り、屋根材や瓦を工具で割ったり壊したりするケースですね。このように、お客様の重要な資産である建物を壊す行為が、最も悪質かと思います。あとは高齢の認知症の方の家の中に入り込んで、リビングに置いてある印鑑を勝手に保険金請求書に捺印して保険金請求する、極めて悪質な業者もいました」
——ユーザーヒアリングを通して感じたことですが、高額な手数料を請求された方も多かったです。
「支払われた保険金の5割も取る業者がいますからね。やっている業務は1日で終わるような内容ですので、金額にしたら2~4万円といった1日の日当程度で済む話ではないかと思います。事故や災害で困っているお客様の保険金を狙って高額な手数料をとるビジネスモデル自体が悪質だと思います」
——火災保険申請サポート業者の手口が巧妙化していますが、どのような感想をお持ちでしょうか。
「典型的な例としては、架空ないし実態があるかよく分からない業者が見積書を出してくるケースです。どの業者が保険金請求に関与しているのか分からない。影に隠れて不正請求をする、そういった業者も増えています。世の中全体が火災保険申請サポート業者の問題を軽く考えているので、素人のような業者も参加してくるようになってしまいました。そういった事案に触れる度に、火災保険不正請求問題の闇を感じます」
火災保険申請サポートを利用するデメリット
「プロの専門家があなたの保険金を最大化します」等と書いてあるネット広告。果たして本当なのでしょうか?
自分で請求するよりサポート業者に依頼した方が受け取れる保険金が多くなる、と勘違いしてしまう人も多いと思いますが、決してそんなことはありません。
保険金は事故の内容や損害額を踏まえて契約している火災保険の約款に沿って支払われます。仮に、認定金額に納得できない場合、契約者本人の要望があれば保険会社は再調査等の対応を行います。
むしろ、高い手数料を要求するなど悪質な業者に遭遇するリスクを考えれば、火災保険申請サポート業者を利用することには、デメリットの方が多いといえます。
では、具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか。
デメリット1:高額な手数料がかかる
申請サポート業者の手数料は多くが30〜40%(消費税別)とされています。手数料が高額になる原因は報酬分配の仕組みを見れば分かります。
ある申請サポート業者の場合、調査に来る業者の殆どが下請の調査会社です。仮に、成功報酬を30%と仮定した場合、紹介者(=営業)と調査会社(=現場)とサポート業者(=元請)がそれぞれ報酬を分け合います。更には、インターネットで集客をしている場合は、紹介者の報酬を広告費などに振り当てることになります。いずれにしても分業体制で成り立っているのです。
「成功報酬」「無料で調査できる」等とおトク感を強調していますが、高額な手数料をとって初めて成立する仕組みなのです。もちろん、30〜40%という高額な手数料を支払ってしまっては、修繕に必要な修理費が足りなくなってしまいます。
デメリット2:悪質な業者が多い
火災保険申請サポート業者には悪質な業者が多く見られます。成功報酬が大前提ですから、保険金が支払われない場合の業者の売上はゼロになります。逆に、保険金が多ければ多いほど業者の利益も増える仕組みですから、できるだけ請求金額を増やそうとします。
請求金額が増える点において契約者と業者の利害は一致するように見えますが、そうとも限りません。そもそも、申請サポート業者の見積りによる請求金額が、満額そのまま保険金として支払われるケースは多くありません。自らの取り分を多くするため、火災保険では支払われない経年劣化等による損害も請求金額に含めるケースが珍しくないためです。このため、過大な請求をあてにして工事契約をさせられ、あとからトラブルになるケースがよくあります。
そして、契約者にとってもっとも問題なのは請求に至るまでの手法です。
火災保険の支払対象となるのは台風などの自然災害による被害に限られます。明らかに違うと認識できる損害について申請するケースもあれば、もっとも悪質な業者は故意に住宅を破損させてお客様に保険金請求を促すケースもあります。
デメリット3:意図せず違法行為にかかわる懸念がある
契約した火災保険申請サポート業者が悪質かどうかの判断はなかなかできません。サポート業者がまともでも、自宅にきた調査会社が悪質な業者である場合もあります。
気を付けなければならないのは、契約者が知らぬ間に保険金詐欺などの違法行為に巻き込まれてしまうことです。
業者の中には、契約者に黙って作為的に被害を作り出すケースがあります。調査時にまったく損害がなかった場合、このままでは報酬がゼロになってしまうことを危惧した業者が故意にどこかを壊れたように装うことがあります。
被害を偽装して保険金を請求するのですから、これは明らかな詐欺行為です。悪質な業者に依頼してしまった場合、こうした違法行為に契約者が知らぬ間に巻き込まれてしまう懸念があることを頭にいれておくべきです。
もし、火災保険申請サポート業者との契約後にこうした行為を発見したり誘導を受けたりした場合、きっぱりと断わり、その場で契約を解除すべきです。契約者が業者の不正行為を認識している場合は保険金詐欺の共犯となってしまうこともあるからです。
注意すべき火災保険申請サポートの4つの特徴
火災保険申請サポート業者を見極めるうえで注意すべきポイントがいくつかあります。ここでは代表的な4つの特徴について説明します。これらに一つでも当てはまる業者とはかかわりを持たないように注意しましょう。
火災保険の申請を代行してくれる
「保険証券だけ準備していただければ保険金申請の面倒なことはすべて引き受けます」などをうたい文句にしている業者には注意が必要です。
前述のとおり、火災保険の請求は契約者が行わなければなりません。弁護士を除く第三者が契約者に代わって保険会社に連絡を入れて手続きを行うことは非弁行為として弁護士法に抵触する違法行為にあたる可能性があります。契約者がやったように見せかける「なりすまし」も同様です。
悪質な火災保険申請サポート業者に法令順守などは、到底期待することはできません。被害調査などの他の部分でも違法行為をする可能性があると考えましょう。
料金の説明が不十分
業者のなかには料金について詳しく説明をしないまま契約をさせたり、契約者の同意なく強引に調査に入ったりする業者がいます。火災保険申請サポート業者のうち、契約者の自宅を訪問して勧誘する業者によく見られるケースです。
こうした業者の場合、あとで契約書をよく読むと高額な手数料に関する記載があったり、契約時にまったく説明のなかったキャンセル料や違約金を要求する文言が入っていたりすることがよくあります。
後々にトラブルとなる可能性が大きく、契約者を騙そうとする意図が見え隠れしますから、こうした業者は調査など他の部分でも誠実でない可能性があります。
また、成功報酬をうたいながら、保険金請求の成否にかかわらず調査料などを別途請求してくる業者もいますから注意が必要です。
保険金の水増し請求を勧めてくる
事故や自然災害による損害は様々な形態があるため、どこまでが火災保険の適用範囲であるかを明確に区切ることが難しいケースもあります。このことに便乗して水増し請求をする業者もいます。
業者が火災保険について詳しくなく、水増し請求等の意図がないケースもありますが、明らかに請求対象とならない部分を見積りに含めたり、理由もなく数量を増やしたりするなどの過大請求・水増し請求は違法行為です。
例えば、原因となる台風が発生する以前から壊れていた部分をついでに請求する場合などが該当します。「今回の台風までは壊れてなかったことにしておきましょう」などと言ってくる業者は危険です。犯罪に巻き込まれてしまう危険がありますから、そのような場合にはきっぱりと断わり、もし契約を交わしているならすぐに解約すべきです。
不要な修理を勧めてくる
建築の知識がある契約者は全体のごく一部です。中には契約者が素人であることにつけこんで、不必要な修理を勧めてくる業者がいます。
「このまま放置しておくと近い将来、大変なことになりますよ。修理費用も膨大になる!」などと契約者の不安をあおり、無理やり工事契約を結ばせようとします。業者は保険金をあてにするよう誘導してきますが、口車にのってはいけません。
こうした不誠実な業者は工事においても手抜きなどをする可能性がありますから避けるべきです。おかしいな、強引だなと感じたら、その場で契約をしないで保険代理店や保険会社に相談しましょう。
「火災保険金の申請をサポートする」という勧誘にご注意ください!
契約者の火災保険の利用を前提とした営業活動を行う火災保険申請サポート業者が、「火災保険を使って自己負担なく住宅の修理ができる」「保険金が出るようにサポートする」などといった甘い言葉で消費者を誘惑。訪問営業やポスティング、インターネットやSNSを通じた勧誘を行い、消費者トラブルを起こしています。契約者みずから火災保険を請求すれば手数料を支払う必要などありませんが、火災保険申請サポート業者は契約者の無知につけ込み、不正請求に巻き込むケースもあります。このような行為を行っている火災保険申請サポート業者は、少なくとも全国に約2000業者いるようです。
よくある被害事例1 高すぎる報酬
火災保険の請求経験のない人が多いなか、「火災以外でも保険金がもらえる」、「火災保険が使えるか無料で調査する」と営業・集客し、見積書を作成。その後契約者が請求し、火災保険が受け取れた場合は手数料として30~50%を請求します。また、途中で手続きを止める場合は違約金として10万~100万円を請求するケースもあります。本来は負担する必要のない高額な手数料や違約金を契約者から搾取する、火災保険申請サポート業者のビジネスモデルそのものが問題視されています。
保険金の請求は、ご自身で行うことができます!
火災保険の請求は契約者本人が行う必要があり、その方法も決して難しいことはありません。当社のようにWEBで手続き可能な保険会社もあります。火災保険申請サポート業者が行う作業は、通常工務店が無料で行っている修理見積もり作成業務のみです。つまり、火災保険の請求をする際、真っ当な工務店に修理見積りを依頼すれば、高額な手数料や違約金を請求されることはありません。工務店との付き合いがない場合は、保険代理店や保険会社に相談することをお勧めします。
被害者インタビュー
K様(28歳)
居住地:静岡県
住宅情報:築4年持ち家
修理費用が賄えなくなって自己負担に
申請の仕方がそもそも分からなかったですし、目に見える損害以外は素人の自分では気づけないと思い、網羅的に対応してもらうには申請サポート業者の見積りが必要なのかなと思って問い合わせしました。契約時に申請サポート業者から成功報酬で手数料が発生すること、あとは相見積もりができないことは聞きました。結局、保険金は120万円が支払われて、手数料を差し引くと修理費用が賄えなくなって十数万円は自己負担になってしまいましたね。
よくある被害事例2 嘘の理由で請求
契約者が知らぬ間に保険金詐欺などの違法行為に巻き込まれてしまうケースもあります。例えば、経年劣化にも関わらず自然災害と偽って請求したり、火災保険申請サポート業者がわざと屋根を壊したり、作為的に被害を作り出して請求する場合です。被害を偽装して保険金を請求するのですから、明らかな違法行為です。こうした不正請求に契約者が知らずに加担してしまった事例もあるので、注意が必要です。
嘘の理由による保険金請求は違法
悪質な申請サポート業者がよく使うのが「このままではもらえる保険金が少ないので、台風が発生する以前から壊れていた部分もついでに請求しちゃいましょう」という甘い誘惑。経年劣化または原因が不明の損害を、自然災害による損害と偽って保険金請求する行為は犯罪になる可能性がある不正請求です。
被害者インタビュー
F様(50歳)
居住地: 大阪府
住宅情報:築15年持ち家
明らかな経年劣化を画像加⼯して見積もる不正業者!
クーリング・オフ不可というので、弁護⼠を⽴てて解約した
無料調査から契約までめちゃくちゃでした。まず、契約のときにクーリング・オフ使えますよね?と聞くと⼤丈夫ですというから無料調査に来てもらったんです。どこかの⼯務店の⼈を連れてきたけど、その⼯務店がどこの会社かは隠していましたね。名刺も絶対出さないという感じでした。そこから調査をしてもらって申請サポート業者の名前で⾒積りを作ってもらいました。外壁の写真を撮ってくれて説明を受けたのですが、その写真が明らかに実際とは違う偽装で。こんなに壁浮いてないだろう!って。そもそもこの壁は経年劣化だから⽕災保険は使えないわけですし、不正行為に加担するわけにはいかないから解約しようと思ってクーリング・オフしたいと申し出ることにしました。ところが、クーリング・オフは使えないといい出す始末。どういう法的根拠なのか、こちらも弁護⼠を入れて指摘しました。そうしたら3⽇後に連絡してきて、クーリング・オフできますと翻してきました。こんなめちゃくちゃなサービスないですよ。結局、外壁の修繕は自費で実施し、申請サポート業者からもらった⾒積書や書類は着払いで突き返しました。僕は未然に回避できましたが、このような被害に遭っている人は多いと思いますよ。
トラブルに巻き込まれた場合の対処法は?
火災保険申請サポート業者とトラブルになった場合、一人で解決するのは難しいものです。かといって、いきなり弁護士に依頼する人は少ないでしょう。
業者とのトラブルで困った時はまず、保険代理店か保険会社に相談することをお勧めします。トラブルを起こす業者は他の契約者とも同じような問題を起こしている事が多く、保険会社が手口などの詳細を把握していることもあります。
困ったときは一人で悩まずに相談することが大切です。
業者に押し切られるように料金を支払ったりせず、どんな契約を交わしてしまったか、どんな内容でトラブルになっているのかを相談先に伝えましょう。
契約そのものが解除できるケースも少なくありません。
保険金の申請サポート業務委託契約をしたが、解約できるか
火災保険申請サポート業者と契約を結んでしまったことを後悔している契約者が契約を解除したい場合、すぐに解約できるか否かは契約に至るまでの手法やその内容によります。
契約者からの一方的な解約に備え、業者との契約には違約金などの条項が付帯されているケースがほとんどです。当然、業者もすんなりとは解約に応じません。
仮にクーリング・オフの適用期間内であっても業者は言葉巧みに解約を妨害して逃げ切ろうとします。
クーリング・オフについて
クーリング・オフは特定商取引法によって消費者を保護するために設けられている制度です。訪問販売や電話勧誘による契約が該当しますから、火災保険申請サポート業者が自宅を訪問して営業を行った場合や電話で勧誘されて契約した場合はクーリング・オフが可能となり、書面を受け取った日を含めて8日以内であれば契約を撤回できます。
ここで重要な点は、業者が書面を作成した日や書面を送付した日ではなく、契約者が受け取った日であることです。
請求期限が迫っている等の勧誘をうのみにせず、安易に契約しない
業者はあの手この手で巧みに契約をさせようとします。火災保険の請求期限は原則として3年ですが、業者の常套文句の一つに、「請求期限(時効)が迫っている」があります。急がないと時間切れで手遅れになるぞと煽って契約させる手法です。
保険法における請求期限は3年間ですが、災害の規模などによっては期限を超えて支払いをするケースもありますから、業者の言葉をうのみにして安易に契約するのではなく、保険会社または代理店に相談しましょう。
保険金請求に絡むトラブル発生時の相談先
火災保険の請求に関して業者とトラブルになった場合、保険代理店や保険会社の他にも相談窓口がいくつかあります。代表的な窓口としては、消費者庁が各都道府県に設置している消費生活センターです。同センターでは専門の相談員が対応してくれます。
「消費者ホットライン188(いやや!)」消費者庁
消費者庁が令和4年に開設した「消費者ホットライン188」は、全国どこからでも各都道府県の窓口に電話番号188だけで繋がります。どこに相談してよいか分からない場合は、まず188に電話することをお勧めします。
「保険金不正請求ホットライン」日本損害保険協会
保険金の不正請求に関する情報提供を呼びかけるために日本損害保険協会が設置しているホットラインです。専用ダイヤルのほかインターネットによる通報が可能です。寄せられた情報は保険金の不正請求対策に活用されています。
正しく火災保険の請求をするための3つのポイント
ここまでは、火災保険の請求は契約者本人が行わなければならないこと、火災保険申請サポート業者に依頼する場合に発生するトラブルや懸念点について解説しました。
ここでは、契約者が一人で正しく保険金請求するために大事な3つのポイントについて説明します。
この3つのポイントを押えれば、手数料が必要な業者に依頼することなくスムーズに保険金請求を行うことができます。
1.経年劣化ではなく台風などの自然災害が原因の損害であること
火災保険の請求において支払いが認められる大前提は、台風などの自然災害が原因で発生した損害であることです。台風など自然災害が起こる以前からの損害や劣化による損害等、支払対象から除外されてしまう損害はたくさんあります。
例えば、台風で瓦の一部が飛散した場合、瓦の復旧費用は保険対象となりますが、台風とは無関係に経年劣化していた下地材(野地板)の交換費用などは対象外とされることがあります。
経年劣化による建物の損害は、火災保険が補償対象とする原因によって生じる損害ではなく、事故や災害とは別に経年によって生じる損害だからです。
他に、樹脂製の雨樋が太陽熱で変形したり、スレート瓦がひび割れたりすることも経年劣化による損害の一例としてあげられます。
台風により起こりやすい被害の例
火災保険の請求では台風などの自然災害が損害の原因となっている必要があります。では、もっとも身近な自然災害である台風によって起こりやすい被害とはどのような例があるのでしょうか?
台風により発生する被害は強風や豪雨によってもたらされるものが大部分を占めます。また、強風によって物が飛ばされて建物に被害を与えるケースもあります。
台風被害の代表例としては、(1)建物やカーポートの屋根及び屋根材(雨樋など付属物を含む)の剝れや飛散、(2)壁(窓ガラスを含む)の一部が剥がれ落ちる破損、(3)飛来物による外部の破損などが挙げられます。
この他にも、屋根や外壁の損傷による室内の水濡れ、洪水による水災(床上浸水など)が台風によって発生することがあります。
2.リフォームではなく修理、修繕が必要な損害であること
火災保険の対象が自然災害に起因する被害であることは説明したとおりです。一般的なリフォーム工事は火災保険の対象とはなりません。
修理業者は損傷した建物を健全な状態に戻すことが目的ですから、台風などによる被害の他にも修理した方が良いと判断した部分について見積書に反映して提案を行う場合があります。例えば、せっかく外部足場を組むのだから劣化している外壁塗装も同時施工する等のケースが考えられます。
しかし、こうしたケースでは支払われる保険金と業者の見積金額に大きな差が発生します。保険金の対象となるのは台風などで壊れた部分だけですから、外壁塗装などのリフォーム工事の部分については認められません。
火災保険金支払い対象のポイント
火災保険で支払対象となるポイントについて考えてみましょう。
先ほどの瓦の一部が飛散した場合を例とすれば、修理業者は瓦の下地材まで補修すべきと判断することがあるかもしれませんが、火災保険では経年劣化については補償されません。
瓦と下地材が同時に台風による損害を受けていれば下地材も支払対象と考えられますが、下地材が元の状態を維持している場合は瓦の修理費用のみが保険金の対象となります。
火災保険の支払対象となるかどうかは、台風などの自然災害がなければ発生しなかった損害かどうかについて考えるとよく分かります。
一方、経年劣化により弱っていた部材であっても、台風によって損害が生じたと判断される場合は支払対象となるケースもあります。
3.虚偽申請をしない
火災保険の請求で見られる虚偽申請について説明します。
台風などの自然災害が発生した直後、建物のあちらこちらに被害が確認できる場合、それがいつ発生したのかが重要となります。申請できるのは、今回の台風などで発生した被害に限定されるからです。
保険金請求にあたっては、災害発生の前から壊れていた部分については除外しなければなりませんが、いつ壊れたかは誰にも分からないだろうと一緒に申請してしまうケースがあります。
契約者が以前から損害のあったことを知りながら新たな自然災害による被害として請求することは虚偽申請であり、不正請求となりますから注意が必要です。
少しでも不安なときは、弊社・ご契約代理店または行政の相談窓口に相談しましょう
火災保険の請求にあたって、修理業者や火災保険申請サポート業者とのやり取りや契約などについて少しでも不安を感じたなら、一人で悩むのではなく、すぐに保険代理店や保険会社、または消費生活センターなどの行政窓口に相談しましょう。
火災保険の申請手続きは決して難しくありません。分からなければ保険会社や保険代理店が親身になって教えてくれますから、修理業者などへの連絡は保険会社へ相談をした後でも遅くありません。
信頼できる関係者に相談することが危うい契約やトラブルから身を守り、大切な財産を守ることに繋がります。
まとめ
火災保険の請求手続きは決して難しくなく、契約者本人が自ら手続きできる仕組みになっています。分からない時は保険会社や保険代理店に問い合わせればいいのですから、あえてトラブルや犯罪に巻き込まれるリスクを冒し、高額な手数料を支払ってまで火災保険申請サポート業者を利用するメリットはありません。
一方、火災保険が守っているのは契約者の大切な財産なのですから、人任せにすることなく火災保険の契約内容を確認しておくことが必要です。
「分からないから」「面倒だから」といった安易な考えで火災保険申請サポート業者へ依頼して終わりにせず、親身になって耳を傾けてくれる保険会社や保険代理店に相談することがもっとも安全で一番の近道といえます。
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