災害時に車中避難するときは

2020年8月号

今月のクイズ

熊本地震が起きた2016年4月14日から6月13日までの2か月間に、熊本県内でエコノミークラス症候群により入院を必要とした人は51人でした。そのうち車中泊していた人はどれくらいいたか、次の中から選んでください。

  • (1)
    22人(約4割)
  • (2)
    32人(約6割)
  • (3)
    42人(約8割)

もしも、災害が起こり避難生活を余儀なくされたときには、プライバシーに配慮する必要もなく感染症の予防にもなるので車で寝泊まりしよう、などと考えたことはありませんか?
今月は、2016年4月に起きた熊本地震で車を避難場所にしたケースをもとに、災害時に車中避難をするときは何に気を付け、何が必要なのかをみてみましょう。

車中避難で困るのは「健康面」、「トイレや風呂」、「情報の入手」

熊本地震は2016年4月14日に前震、16日に本震が起きました。翌17日の熊本市内の避難者数は110,750人になりましたが、熊本市が想定していた避難者数は58,000人(当時)だったため、大幅に上回る事態になりました*1
熊本県の調査*2によると、「避難した場所」として車の中と答えた県民は約7割いました。そのうちの約7割が「最も長く避難した場所」も車の中と回答しています。
熊本市、益城町、御船町で車中避難した人に行った調査によると、避難場所に車を選んだ理由は「(避難所は)人が多く落ち着かない」が最も多く、「(子どもや高齢者、ペット等が一緒で)避難所では気を遣う」が続きます。車中避難で困ったことは『健康』が最も多く、その詳細をみるとエコノミークラス症候群をうかがわせる内容や、「持病があるが病院と連絡が取れず、薬もあと一週間分しかない」という深刻なケースがありました。また、『トイレ』『お風呂』では、「水洗トイレがない」「夜、一人で仮設トイレに行くのは嫌だ」など衛生面の心配や安全面での不安がみられます(図)。『必要な情報が届かない』『相談先がない』という声もありましたが、そういった中でも外部の情報を入手する際に役に立ったものとして、「インターネット」「テレビ」「ラジオ」など、リアルタイムで情報を得られる媒体があげられました。

 図:車中避難生活で困っていること(複数回答)   n=182人

車中避難時に気を付けること

災害が発生して車中避難をしなくてはならない場合、何に気を付けたらよいのかみてみましょう。

エコノミークラス症候群にならないよう足を動かし、水分を十分にとり、寝るときは手足を伸ばしましょう

十分な水分や食事をとらず、車の座席に長い時間座った状態で足を動かさないと、血行不良により血がかたまりやすくなります。その血のかたまりが血管の中を流れて肺に運ばれて詰まり、静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を起こすと、急に息ができなくなってしまう危険性があります。

エコノミークラス症候群にならないようにするには

エアコンは適宜休ませましょう

エアコンをつけたまま寝ると、ガソリンを消耗しバッテリーが上がるだけでなく、冬に雪が降っているときは、積雪が排気口をふさぎ排気ガスが車内に入ってくる危険性があります。夏場は窓を少し開けて換気し、冬場は寝袋など身体を温めるものを用意し、エアコンは適宜休ませましょう。ただし、夏場に限らず熱中症対策を十分に講じた上で実施してください。

車中避難に必要なものは

災害発生時は人命救助が最優先になるため、避難所へ支援物資が届き始めるまでには時間がかかります。その間、生き延びるために水と食料1人3日分(大規模災害の場合は7日分)の備蓄が必要とされています。その他にもヘルメット、軍手など災害時の「備え」のチェックリストは、自治体などのホームページでも確認することができます。では、車中避難のときに必要なものをみてみましょう。

簡易トイレを用意しましょう

女性や高齢者は、トイレのことが気になって、水分を摂取しない傾向があり、エコノミークラス症候群を発症しやすくなります。しかし、避難所によっては防犯のために夜間のトイレの貸し出しを行っていなかったり、公共のトイレが混雑して使用できなかったりすることがあります。簡易トイレを用意しましょう。

タオルや古着などを用意しましょう

タオルや古着は、車の中で用を足すときに、窓に挟んで目隠しすることができます。また、寝るときは、フラットにした座席と座席の隙間にタオル等を詰め、さらにバスタオルなどを敷き詰めると身体を横にしやすくなります。体を拭いて清潔にすることもできるので、タオルや古着などを用意しましょう。

電池やモバイルバッテリーを用意しましょう

避難時は外部の情報を得るために、ラジオや携帯電話、スマートフォンが必要になります。ただし、ガソリン車でカーナビのテレビなどをつけたままにしたり、車から充電をしたりすると、バッテリーが上がって車が使用できなくなります。ポータブルラジオの電池や携帯電話のモバイルバッテリーを用意しましょう。


今月のクイズの答え