To Be a Good Company

企業年金とは?
ゼロからわかる制度のしくみ

転職・独立:企業年金とは 企業年金 いくら

転職・独立

年金は、老後の生活を支える大切な資金です。しかし、人生100年時代と言われる昨今、公的年金だけではリタイア後の資金が不足する可能性があることが問題視されています。公的年金にプラスして給付を受けられる「企業年金」のしくみについて知りましょう。

企業年金は「会社が社員のために年金を支給する」しくみ

一般的に「年金」とは、20歳以上60歳未満の全国民が加入する「国民年金」と、会社員・公務員が加入する「厚生年金」の2種類を指します。これらは公的年金とも呼ばれ、基礎的な年金である国民年金は年金の1階部分、厚生年金は2階部分と呼ばれることがあります。

国民年金
加入者:日本国内在住の20歳以上60歳未満の全員
給付開始:原則として65歳
厚生年金
加入者:厚生年金が適用される事業所などの従業員・公務員
給付開始:原則として65歳

企業年金とは、従業員の退職後の生活のために企業が原資を拠出して給付する年金のことで、年金の3階部分にあたります。公的年金に上乗せして支給されるので、企業年金に加入していれば退職後(老後)の生活費として受け取れる金額が多くなり、公的年金の支給額が足りない場合の不足分を補うことができます。
企業年金は、もともとは退職金を分割で支払うようにしたもので、企業年金の種類や企業が定めるルールによって受け取り方が異なります。企業が福利厚生の一環として設ける任意の年金制度であるため、退職金制度と同様に、導入している企業とそうでない企業があります。

企業年金の種類

企業年金には、以下のような種類があります。

確定給付企業年金(規約型/基金型)
2002年に新設された年金制度で、企業と従業員が規約などであらかじめ給付額を取り決め、従業員が退職後にその給付を受けるものです。
企業が保険会社や信託銀行などと契約を結んで制度を運営するのが規約型、「企業年金基金」という別法人を作って運用するのが基金型です。
確定拠出年金(企業型)
アメリカで普及している企業年金制度をモデルに、2001年に新設された年金制度です。将来受け取る給付額が決まっている「確定給付」とは異なり、支払う掛け金だけを取り決めて従業員の口座に拠出し、従業員が運用指示を行います。
企業側が導入を決める企業型の確定拠出年金のほかに、個人が自分の意思で加入する個人型の確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」もあります。
厚生年金基金
企業が、厚生労働大臣の認可を受けた「厚生年金基金」という別法人を設立して厚生年金の給付を代行し、企業独自の加算分を上乗せして運用するものです。この制度は1966年にスタートしましたが、財政破綻などにより減少し、現在では新規設立は停止となっています。
中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度
中小企業向けの退職金制度です。「中小企業退職金共済制度(中退共)」は、独立行政法人勤労者退職金共済機構が運営しており、「特定退職金制度」は、特定の市町村や商工会議所のような団体が運営しています。設立した特定退職金共済団体が従業員に退職金を給付する制度です。

企業年金を受給する方法

企業を退職して企業年金を受け取るときは、基本的に自分で手続きをする必要があります。退職したら自動的に給付が開始されるわけではないので、手続きを忘れないよう注意しましょう。
企業年金の受け取り方には「年金」と「一時金」があり、給付時期・方法や手続きは、加入する企業年金の種類や企業のルールによって異なります。

確定給付企業年金(規約型)
退職時に、企業を通じて契約する保険会社や信託銀行などに手続きを行い、給付方法(年金・一時金)を選択します。
確定給付企業年金(基金型)
退職時に、自分で企業年金基金に手続きを行い、給付方法(年金・一時金)を選択します。
確定拠出年金(企業型)
原則60歳以降であれば、退職や定年年齢に関係なく給付を受けられます。確定拠出年金では、企業が個人の口座宛に掛金を支払うことになるので、社員が自分で運営管理機関に連絡をして手続きを行います。
厚生年金基金
加入していた厚生年金基金が存続している場合は、その厚生年金基金に連絡をして手続きをします。すでに解散等をしていて、解散時に分配金を受け取った場合は手続きの必要はありません。解散後、他の企業年金に移行した場合は、それぞれの企業年金の窓口に連絡をして手続きを行います。
中小企業退職金共済制度・特定退職金共済制度
退職した本人が直接、中小企業退職金共済事業本部に請求手続きを行います。
加入後1年が経過すれば、定年退職、中途退職を問わず、退職時に退職一時金を受け取れます。また、60歳以上で退職し、条件を満たせば分割で受け取ることもできます。

中途退職した場合の「ポータビリティ制度」とは

企業年金を、その名のとおり年金として受け取れるのは、基本的には定年退職者やその企業に長期で勤めた人です。しかし近年では、かつてのような生涯雇用が望めるとは限りませんし、多様な働き方を選ぶ人も増えてきました。そのため、中途退職した場合でも企業年金の給付を受けられるしくみがあります。

転職時に脱退一時金として受け取る場合

企業年金を受給する前に退職し、脱退一時金として受け取る場合には、各企業年金の運営窓口に問い合わせて手続きを行ってください。ただし、加入期間が規定に満たない場合、脱退一時金の対象外となり、給付を受けられないので注意しましょう。

脱退一時金相当額を持ち運ぶ場合

企業年金の通算制度(ポータビリティ制度)を利用すれば、退職前の企業で積み立てていた年金資産を、転職先の企業年金に移換して継続することができます。すべての企業年金が持ち運べるわけではなく、さらに法的には可能でも企業や基金のルールによっては持ち運べないこともありますので、勤務先や転職先の窓口に確認してください。

なお、確定拠出年金(企業型)の場合、転職先が確定拠出年金を導入していなければ、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換することができます。資格を喪失した月の翌月から数えて6カ月以内の手続きが必要なので、忘れないようにしましょう。


リタイア後の資金をどのように用意するかは多くの人が悩むポイントです。企業年金は、公的年金にプラスして給付を受けられる力強い味方。自分が勤めている企業が企業年金を導入しているのか、どんな種類の企業年金に加入しているのかを確認し、必要な手続きについて理解しておきましょう。

監修者

ファイナンシャル・プランナー 伊藤 亮太さん

証券会社時代には、営業や経営企画、社長秘書等として勤務するかたわら、投資銀行業務にも携わる。2007年にスキラージャパン株式会社を設立。資産運用と社会保障(特に年金)に強いファイナンシャルプランナーとして相談・執筆・講演を行っている。
関連記事

FFFF-EK04-B22214-202303