マレーシア

マレーシアのボルネオ島サバ州では、国全体の50%弱に相当する面積のマングローブ天然林が分布しており、このうち約93%は保護林に指定されています。

マングローブ植林活動レポート

植林したマングローブの様子

マレーシアでは、2011年からNGO「国際マングローブ生態系協会(ISME)」が、サバ州森林局の協力を得ながら、植林事業を進めています。1990年代にタンニン採取や薪炭材の利用、油ヤシの植栽のために天然のマングローブ林が不法伐採されたため、荒廃したマングローブ林を再生することを目的に植林活動を実施しています。絶滅が危惧されるテングザルなどの野生生物を保護したり、生物多様性を保全したりする観点からも重要な活動です。

  • 2021年度の植林面積 35ヘクタール
  • 累積植林面積 428ヘクタール

マングローブ植林活動状況

新型コロナウイルスの感染に十分注意しながら、4カ所合計35ヘクタールの植林地で、24種類、4万9,689本のマングローブを植えました。

2021年度から、ラブックベイ・テングザル保護区(Labuk Bay Proboscis Monkeys Sanctuary)が植林地に加わりました。ここは、野生のテングザルの保護活動を行う民間施設で、観光地としても国内外から人気が高い場所です。この活動を通じて、地域住民への環境教育に関する普及・啓発活動が広がることも期待されます。

また、2018年度から、植林地の樹種構成を天然のマングローブ林に近づけるため、在来の樹種も併せて植えることを心がけています。ラブックベイ・テングザル保護区でも20種類の樹種の植栽を試みました。

Pulau ISMEでの植林の様子 ⒸSFD-ISME協働マングローブ植林プロジェクト

ラブックベイ・テングザル保護区の植林地 ⒸSFD-ISME協働マングローブ植林プロジェクト

ラブックベイ・テングザル保護区での植林の様子 ⒸSFD-ISME協働マングローブ植林プロジェクト

植林地の様子

2021年7月、ウェストン川の中州であるPulau ISME では初めて、サバ州森林局のタスクチームが絶滅危惧種のテングザル1頭を確認しました。エサであるベニマヤプシキの葉などを求めて、ウェストン川を泳いで渡ったものと考えられます。その後、10月にはテングザルの群れと、同じく絶滅危惧種のカニクイザルの群れも確認できました。Pulau ISMEでテングザルやカニクイザルを確認できたことは、マングローブ植林活動で、新たな生態系が形成され、生物多様性に富んできている証しといえます。

2021年9月、サバ州森林局のジョセフ・タンガー博士とアーサー・チャン博士による「Monyet Bangkatan di Hutan Bakau Sabah(サバ州のマングローブ林のテングザル)」という本が、マレー語で出版されました。この本では、テングザルの生態のほか、その生息域であるマングローブ林や本プロジェクトについても紹介されています。本書は多くの学校や図書館などにも寄贈されました。今後、マレー語だけではなく、英語での出版も予定されています。

また、絶滅のおそれが極めて高いマングローブ樹種、ハイナンヒルギ(Bruguiera hainesii)が、コタキナバルの沖合の観光地マヌカン島でのマングローブ調査で発見されました。現在はその保護と増殖を試みていて、2カ所の植林地で育成しているところです。今後も成長を見守っていきます。

Pulau ISME で確認されたテングザル ⒸSFD-ISME協働マングローブ植林プロジェクト

「Monyet Bangkatan di Hutan Bakau Sabah」の表紙と裏表紙 ⒸSFD-ISME協働マングローブ植林プロジェクト

「Monyet Bangkatan di Hutan Bakau Sabah」に関する記事 ⒸSFD-ISME協働マングローブ植林プロジェクト