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共同海損

船舶の海難事故と貨物保険のかかわり

(1)共同海損って何?

「共同海損」という言葉をご存じでしょうか。
共同海損とは、海上貿易取引の世界にある独特の制度で、かなり複雑な仕組みのものですが、貿易を営む世界中の人々にとって決して無縁なものではありません。ここではごく簡単に、「共同海損のイロハ」について説明しましょう。

船舶が航海中に座礁・衝突・火災などの危険な海難事故に遭ったとします。この場合、危険な状態にあるのは船舶だけではなく、その船舶に積載された貨物も同じです。
このような状態を「船舶と貨物が共同の危険にさらされた状態」と呼びますが、このような状態から脱出するために、船長の判断で緊急処置をとることがあります。
緊急処置というのは、たとえば座礁した船舶を浮かせるために貨物の一部を海に投げ捨てたり、それでも浮かないときは救助船を呼び寄せるといったようなことです。

このような緊急処置には必ず、何らかの「物の損害」や「費用の支出」を伴います。これらは事故がなかったら発生するはずの無かった損害・費用ですが、これによって船舶と貨物が「共同の危険」から脱出でき、助かったというのも事実です。そこでこのような損害や費用は、無事に助かった船舶と貨物で共同で負担しよう、という制度ができあがりました。この共同負担の制度を「共同海損」と呼びます。

共同海損の起源は、船舶で航海を行うことが非常に危険なこととされていた紀元前の時代にさかのぼります。古い古い昔からの伝統的慣習です。ちなみに、共同海損はその英語の呼び名である"General Average"の頭文字をとってG.A.と呼ばれます。

(2)共同海損が起こったら?

ここでは、「共同海損が起こったら一体どうなるの?」という疑問にお答えするために、共同海損の処理の一般的な流れについて説明しましょう。

船舶が不幸にも海難事故に巻き込まれて、船舶と貨物を「共同の危険にさらされた状態」から脱出させるために船長が緊急処置をとった結果何らかの「損害」や「費用」が発生してしまったとき、船会社は「共同海損の宣言」を行います。共同海損の宣言とは、具体的には「いつ、どこで、こんな事故があったので共同海損を宣言します。」という内容の手紙で、船会社から荷主の手元に送られてきます。もしもこの共同海損宣言状が送られてきた場合は、慌てずにまず保険会社に連絡することが大切です。

船会社は共同海損の宣言を行うとただちに、「共同海損精算人」を指名します。共同海損精算人とは、共同海損の精算を行う専門家で、いろいろな書類をもとに複雑な計算を行い、最終的に「船会社はいくら、荷主はいくら、この共同海損事故に対して支払いなさい」という「共同海損精算書」を作成する人のことです。全世界に、この共同海損の精算を専門に行っている会社がたくさんあります。共同海損の精算が終わるまで、つまり「共同海損精算書」が完成するまでには、事故のあった日から何年もかかることもよくあります。

共同海損精算書が完成すると、そこには荷主が支払わなければならない「共同海損分担金」の金額が書かれています。ただし、貨物海上保険を付けている荷主の場合は、共同海損分担金の支払いは全て保険会社が代行しますので、荷主は何もする必要はありません。こうして保険会社が荷主に代わり共同海損分担額を支払って、共同海損の処理が終わります。海難事故の事後処理は、想像以上に面倒で、時間がかかるものだということがお分かりいただけたでしょうか?

(3)共同海損に必要な書類は何ですか?

以上で、だいぶ共同海損というものについてわかってきました。共同海損というのは結構複雑そうだけれど、ほとんどが保険会社がかわりに処理してくれる、ということもわかりました。しかしながら、荷主自身が行わなければならないことが1つだけあります。それは必要書類の提出です。
共同海損が起こったとき荷主が通常、提出を求められるのは次の3つの書類です。

共同海損の必要書類は、提出が遅れると本船の到着後貨物の引き渡しが受けられないことがありますので、すみやかに提出することが大切です。