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ニュース&トピックス マリンニュース

お客様にお知らせしたい海事関連情報を集めました。

2023年

No.218(2023年12月19日)
船舶の裁判上の売買の国際的効力に関する国連条約の成立

船舶の裁判上の売買の国際的効力に関する国連条約(以下、本条約)は、万国海法会(Comite Maritime International以下、CMI)及び国連国際商取引法委員会(United Nations Commission on International Trade Law以下、UNCITRAL)での起草作業・審議を経て2022年6月にUNCITRAL第55回総会において条約案が採択され、最終的に同年12月に国連総会において採択されて成立しました。また、2023年9月に北京において署名式が行われました。
本稿では、本条約の成立に至る経緯及び主要な条文についてご紹介いたします。

No.217(2023年11月21日)
船荷証券の共同海損条項の解釈に関するイギリス高等法院判決

イギリス高等法院は、本年11月10日、共同海損法において長年、未解決となっていた問題を解決する判決を下しました。
争点となったのは、1994年Congenbillの共同海損条項の下でヨーク・アントワープ規則(York-Antwerp Rules)のいずれのバージョンが適用されるべきかという問題でした。この船荷証券の共同海損条項には、「共同海損は、1994年ヨーク・アントワープ規則またはその後の修正版に従って精算され、決済される」と規定されていましたが、イギリス高等法院は、この条項の解釈として、最新版である2016年ヨーク・アントワープ規則が適用されるべきとの判断を示しました。
この判決は、共同海損に携わる実務家間におけるこれまでの一般的な理解とは異なるものであり、共同海損実務に及ぼす影響は大きいものと考えますので、本稿にてその概要をご紹介します。

【2024年3月19日追記】
2023年11月21日付マリンニュースNo.217では、「原告側が控訴手続きをとることが予想される」と記述しておりましたが、原告側は控訴を行わず、本件判決は高等法院判決をもって確定しております。

No.216(2023年10月17日)
海難救助事案におけるLOF利用件数の減少とHugh Shaw氏(元英国SOSREP)報告書について

本マリンニュースNo.209「ロイズ海難救助仲裁部門(LSAB)の廃止に向けた動き」においてご紹介したとおり、世界で最も幅広く利用されてきた救助契約書式であるロイズ海難救助契約標準書式(以下、LOF)の利用件数が著しく減少しており、LOF書式そのものを含めてLOFシステムは大きな転換期を迎えています。また、元英国閣僚権限代行者(以下、SOSREP)であるHugh Shaw氏は、LOF利用件数の減少が及ぼす影響、その真因分析、さらにこうした状況を改善するための提案を記した調査報告書を公表しており、現在、ロイズを中心に、Shaw氏の報告書の内容を踏まえてLOFシステムの改革の検討・議論が実施されています。
本稿では、LOF利用実態およびShaw氏報告書の概要をご紹介します。

No.215(2023年9月5日)
船主責任制限条約の留保条項の解釈に関する香港最高裁判所判決について

1976年船主責任制限条約(以下、1976年条約)は、各国が批准するにあたり18条の留保条項に基づいて、2条(「責任の制限の対象とされる債権」)1項(d)号に規定される沈没船舶の引揚げ・除去・破壊・無害化作業に関する債権(以下、船骸除去債権)については、船舶所有者等が責任を制限し得る債権(以下、制限債権)から除外することを認めています。わが国も同条約及びこれに先行する1957年船主責任制限条約(以下、1957年条約)の留保条項の下でこの債権を制限債権から除外していますが、沈没船舶の所有者が負うべき船骸除去費用については責任制限できないものの、沈没船舶の所有者が自身の負担した船骸除去費用を衝突相手船主に賠償請求する(recourse claim)場合、わが国の最高裁判所はこの請求は制限債権であるとの判決を下しています。
香港も1976年条約の留保条項の下で船骸除去債権を制限債権から除外していますが、今般、第一審判決 、控訴審判決に続いて2023年7月26日に最高裁判決において、沈没船舶の所有者から衝突相手船主に対する船骸除去費用に関わる賠償請求についても責任制限をなし得ないとの判断が示されました。
この香港裁判所における一連の判決が1976年条約締約国、特に、留保条項に基づいて船骸除去債権を非制限債権と位置付ける国に及ぼす影響は少なくないものと推察されるため本稿にてその概要をご紹介します。

2022年

No.214(2023年3月22日)
共同海損に関するCMIガイドラインの改訂およびYARの一部改正について

昨年10月にアントワープで開催された万国海法会(以下、CMI)国際会議において「共同海損に関するCMIガイドライン(“CMI Guidelines relating to General Average”)の改訂版が採択され、同時に2016年ヨーク・アントワープ規則(以下、YAR2016)および2004年ヨーク・アントワープ規則(以下、YAR2004)の一部改正が採択されました。今般、これらの内容がCMIのホームページに掲載されましたので、ご紹介致します。

No.213(2023年3月7日)
BIMCO ETS-Emission Trading Scheme Allowance Clause for Time Charter Parties 2022の制定について

No.212(2022年8月16日)
国際船級協会連合策定の「遠隔検査実施ガイドライン」について

国際船級協会連合(International Association of Classification Societies:以下、IACS)は、IACSに所属する各船級協会が、統一した基準に基づいて、情報通信技術を活用した遠隔検査を実施できるように、“Unified Requirement on Remote Classification Surveys UR Z29”(以下、UR Z29)という名称のガイドラインを策定しました。本ガイドラインは、2023年1月1日から施行予定となっており、施行後は、各船級協会が、本ガイドラインに基づいて遠隔検査を実施することになります。
本稿では、主に本ガイドラインの策定経緯と規定内容についてご紹介します。

2021年

No.211(2022年3月3日)
CMA CGM Libra号事件イギリス最高裁判決について

イギリス裁判所でのCMA CGM Libra号共同海損分担金請求訴訟(以下、本件)において、航海開始前に乗組員が策定した航海計画(passage plan)の欠陥は、航海過失免責の適用対象なのか、あるいは、この欠陥によって船舶が不堪航となり、運送人である船主は堪航性担保義務違反を問われるのか、という問題が争われてきました。
高等法院および控訴審では、船主にはヘーグ・ルール(およびヘーグ・ヴィスビー・ルール)の下で「訴訟原因となる過失(actionable fault)」が認められるとして、ヨーク・アントワープ規則(以下、YAR)D条に基づいて荷主側の共同海損分担義務が否定されていましたが、昨年11月10日、最高裁判所は、下級審の判決を基本的に支持し、荷主の共同海損分担義務を否定する判決を下しました。
本件は、イギリスはもとよりわが国においても極めて高い注目を集めていた事案ですので、本稿では、高等法院から最高裁までの一連の判決について簡単に記述した上で、これらの判決から導かれるロジック、今後への影響および留意点についてご紹介します。

No.210(2021年11月5日)
国際海事機関(IMO)第108回法律委員会における審議結果と今後の動向

今年7月26日から30日にかけて、国際海事機関(International Maritime Organization 以下、IMO)の第108回法律委員会がウェブ会議形式で開催されました。本稿では、今回の委員会会合における主要な議題の審議結果についてご紹介します。

No.209(2021年6月3日)
ロイズ海難救助仲裁部門(LSAB)の廃止に向けた動き

【2022年2月13日追記】

2020年

No.208(2021年3月23日)
船舶からの油濁損害に関する賠償および補償制度

昨年夏のモーリシャス諸島における大型ばら積船の座礁・油濁事故は、いまだ記憶に新しいところかと思われます。船舶からの油流出による損害に対する賠償および補償に関する国際的な規律の枠組みは、油濁被害の原因となった船舶(持続性油を積載していたか否か)と流出した油の種類によって大きな違いがあります。
本稿では、船舶からの流出した油による汚染損害に対する賠償・補償に関する国際的な規律の枠組みについてその概要をご紹介します。

No.207(2020年12月3日)
改正船舶油濁損害賠償保障法(船舶油濁等損害賠償保障法)の施行

2001年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(以下、バンカー条約)及び2007年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約(以下、難破物除去ナイロビ条約)の締結に伴い、船舶からの燃料油の流出による汚染等によって生じる損害や難破物の除去等に要する費用の負担によって生じる損害に関して、被害者の保護・救済を図ることを目的として、第198回国会において船舶油濁損害賠償保障法(以下、油濁賠償法)の改正法が可決され、2020年10月1日に施行されました(法律名も船舶油濁等損害賠償保障法に変更されています)。
この主要な改正ポイントについては、本ニュースNo.205(2020年1月)にてご紹介していますが、本号では、その後明らかとなった「保障契約証明書の船内備置」の手続きの変更点などを含めて、改めてご紹介致します。

2019年

No.206(2020年3月24日)
2020年版・ロイズ救助契約書式(“LOF2020”)の制定

No.205(2020年1月21日)
船舶油濁損害賠償保障法の改正

2001年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(以下、バンカー条約)及び2007年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約(以下、難破物除去ナイロビ条約)の締結に伴い、船舶からの燃料油の流出による汚染等によって生じる損害や難破物の除去等に要する費用の負担によって生じる損害に関して、被害者の保護・救済を図ることを目的として、第198回国会において船舶油濁損害賠償保障法(以下、油濁賠償法)の改正法が可決され、2019年5月31日に公布されました(法律名も船舶油濁等損害賠償保障法に変更されています)。
本号では、改正法における主要な改正ポイントについて簡単にご紹介致します。

2018年

No.204(2019年3月14日)
改正商法(「商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律」)の施行

昨年5月18日、第196回国会において「商法及び国際海上物品運送法の一部を改正する法律」(以下、改正商法)が可決、同月25日に公布され、来る4月1日に施行されることになりました。改正商法は、明治32年の商法制定以降、基本的な骨格が維持されてきた運送(第2編 商行為 第8章 運送営業)および海商(第3編 海商)の規定を、大きく変化した海運業界の世界標準や経済・社会情勢に対応させるべく、多くの規定を修正、新設して現代化したものです。
本号では、改正商法における主要な改正ポイントについて簡単にご紹介します。各ポイントの改正理由や背景の詳細についてはマリンニュースNo.200、No.201をご参照ください。

2017年

No.203(2018年2月15日)
海賊との解放金交渉期間中の運航費用等の共同海損認容に関するイギリス最高裁判決

2016年

No.202(2016年6月6日)
共同海損に関わる新規則「2016年ヨーク・アントワープ規則」の成立

万国海法会(以下、CMI)は、本年5月3日から6日までニューヨークにおいて第42回国際会議を開催し、共同海損に関わる新規則である「2016年ヨーク・アントワープ規則(以下、YAR2016)」を採択しました。YAR2016は、従来の規則から、共同海損に認容される救助料の範囲、海損精算人への情報の提供、資金の供給(立替手数料)、共同海損として認容された損失に対する利息、供託金の取扱い等について改定を行っており、改定項目は多岐に亘っています。本号では、精算実務に影響を及ぼす可能性のある改定項目を中心にその概要をご紹介します。

以下に、1994年ヨーク・アントワープ規則、2004年ヨーク・アントワープ規則および2016年ヨーク・アントワープ規則の試訳と今般、新たにCMIで採択された共同海損に関するCMIガイドラインの試訳を掲載します。この日本語訳は公式のものではなく、当社が作成した暫定訳であり、随時、見直しを行い改訂版が掲載されることがある点、ご留意願います。また、東京マリンクレームサービス社のご了解を得て、1994年ヨーク・アントワープ規則および1990年修正1974年ヨーク・アントワープ規則およびその日本語訳を収録した冊子を掲載します。なお、上記いずれについても日本語訳および試訳の一部あるいは全部を弊社に無断で複写すること、転載することは禁止します。

No.201(2016年4月6日)
商法(運送法・海商法)の改正 その2

商法のうち貨物や旅客の運送、海運に関わる規定(第2編第7・8章及び第3編(運送・海商))は1899年に制定されて以降、実質的な改正は実施されておらず、時代遅れの規定も見られました。そのような中、2014年2月に法務大臣から、「(1)商法制定以来の社会・経済情勢の変化への対応、(2)荷主、運送人その他の運送関係者間の合理的な利害の調整、(3)海商法制に関する世界的な動向への対応等の観点から、商法等のうち運送・海商関係を中心とした規定の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい」との諮問が、法制審議会(以下、法制審)に対してなされました。
これを受けて2014年4月以降、法制審・商法(運送・海商関係)部会において審議が続けられてきましたが、2016年2月12日に法制審総会において「改正要綱」(以下、要綱)が承認され、直ちに法務大臣に答申がなされました。
前号につづき、以下、法務大臣の諮問で法制審に示された見直しの観点毎に要綱で示された主要な改正ポイント等についてご紹介します。

2015年

No.200(2016年3月22日)
商法(運送法・海商法)の改正 その1

商法のうち貨物や旅客の運送、海運に関わる規定(第2編第7・8章および第3編(運送・海商))は1899年に制定されて以降、実質的な改正は実施されておらず、時代遅れの規定も見られました。そのような中、2014年2月に法務大臣から、「(1)商法制定以来の社会・経済情勢の変化への対応、(2)荷主、運送人その他の運送関係者間の合理的な利害の調整、(3)海商法制に関する世界的な動向への対応等の観点から、商法等のうち運送・海商関係を中心とした規定の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい」との諮問が、法制審議会(以下、法制審)に対してなされました。
これを受けて2014年4月以降、法制審・商法(運送・海商関係)部会において審議が続けられてきましたが、2016年2月12日に法制審総会において「改正要綱」(以下、要綱)が承認され、直ちに法務大臣に答申がなされました。
以下、法務大臣の諮問で法制審に示された見直しの観点毎に改正要綱で示された主要な改正ポイント等についてご紹介します。

No.199(2015年5月29日)
船主責任制限法の改正(2015年6月8日施行)について

「1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する1996年議定書」(以下、LLMC96年議定書)は、2012年4月に開催された国際海事機関(International Maritime Organization 以下、IMO)第99回法律委員会において現行の責任限度額を51%引上げる改正案が採択され、本年6月8日に発効することが決定されていました。
この条約改正に合わせて、「船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(以下、船主責任制限法)」における責任限度額を51%引き上げるための改正が行われ、本年6月8日に施行されることになりました。

2014年

No.198(2015年3月17日)
イギリス保険法(Insurance Act 2015)の制定

かねてよりイギリス議会で審議が進められていた保険法(Insurance Act 2015:以下、2015年イギリス保険法)がイギリス議会の上下両院を通過、2015年2月12日(木)にRoyal Assent(女王裁可)という手続きを経て成立しました。発効は18ヶ月後の2016年8月12日となっています。
本稿では、2015年イギリス保険法の制定経緯とその特徴、現行のイギリス海上保険法(Marine Insurance Act 1906:以下、1906年イギリス海上保険法)との関係などについてご紹介致します。

No.197(2014年8月15日)
海難残骸物の除去に関する条約の発効

「2007年海難残骸物の除去に関するナイロビ国際条約」(The Nirobi International Convention on the Removal of Wrecks, 2007)は、2007年5月8日にナイロビ(ケニヤ)において開催された、IMO(国際海事機関、本部ロンドン)主催の国際会議にて採択されていましたが、2014年4月14日に10ヶ国目の批准国としてデンマークが批准手続きを完了させたため、2015年4月14日に発効することが決定しました。
7月末時点での批准国は、ブルガリア、コンゴ、デンマーク、ドイツ、インド、イラン、マレーシア、モロッコ、ナイジェリア、パラオ、イギリスの11ヶ国です。
本条約の概要およびその成立の経緯については、既にマリンニュースNo.178(2007年7月1日付)にてご紹介済ではありますが、本稿にてあらためて条約の骨子をご紹介いたします。

2012年

No.195(2013年3月19日)
フランスにおける船主責任制限に関する画期的判決

以下、本判決に至る経緯と意義についてご紹介致します。

2011年

No.193(2011年11月7日)
1999年アレスト条約の発効

1999年アレスト条約(以下、新条約といいます)が今般、発効要件を満たして本年9月14日付けで発効しました。新条約は1952年アレスト条約(以下、旧条約といます)を改正して、その対象となる海事請求権の範囲を拡大しました。
旧条約にはEU諸国など世界の77ヶ国が加盟していますが、新条約の加盟国は発効に必要な最低条件の10ヶ国のみの加盟に留まっています。わが国はこれらの2条約のいずれも批准していません。
新条約の概要と、同条約の与える影響について、とりまとめてみました。

No.192(2011年5月16日)
2011 年版・ロイズ救助契約書式(“LOF2011”)の制定

ロイズ救助契約書式(通称、Lloyd's Open Form (LOF))は船舶、貨物が海難に遭遇したときに、救助業者に救助を依頼する場合、国際的な書式として世界で最も一般的に使用されています。これまでは2000年版の書式(通称、”LOF2000”)が使用されてきましたが、今般、若干の改正が行なわれ、新書式は2011年版書式(”LOF2011”)として、本年5月9日より使用されることになりました。
今回の改正は仲裁裁定の公表やコンテナ船の救助での仲裁の運営など、ロイズ仲裁の運営に関する変更が主な内容となっており、ここにその概要をご紹介します。

2010年

No.191(2011年1月11日)
米国鉄道脱線事故と運送人の責任制限

米国に海上輸送される貨物には、米国国際海上物品運送法(USCOGSA)が適用され、運送人の責任は1梱包あたりUS$500に制限されます。また、通し船荷証券(Through B/L)には、海上輸送だけではなく荷卸し後の陸上輸送にもUSCOGSAが適用される旨の規定があります。このため、Through B/Lの下での鉄道輸送中の事故にもUSCOGSAが適用され運送人の責任が制限されることとなるのか、大きな争いになっていました。
今般、昨年(2010年)6月に、米国の連邦最高裁判所において、B/L上の裁判管轄について、USCOGSAが適用されるとの判決が下されましたので、その概要をご紹介します。

No.190(2010年10月7日)
メキシコ湾・原油流出事故の影響

メキシコ湾で本年4月20日に起きた、石油掘削装置、デイープウオーター・ホライゾン(Deepwater Horizon)の爆発・沈没事故は史上最悪の原油流出事故になりました。油の流出場所が水深1,500メートルの深海であったことから原油を封じ込める作業は難航しましたが、7月15日にキャップをかぶせて、漏れは止まり、その後、9月19日に最終的に封鎖作業が完了しました。
この事故を契機として、アメリカ連邦議会では石油業界、海運業界にとって厳しい新たな立法を求める動きが広がっています。本事故の現状と議会での審議の動向についてまとめてみました。

No.189(2010年6月16日)
HNS条約を改正する議定書の採択

「危険物質および有害物質の海上輸送に関する損害についての責任と補償に関する条約」(HNS条約)は1996年に成立しましたが、未だに発効するに至っておりません。その理由として、今後、本条約を実施するうえでいくつかの障害があることが指摘されてきました。
かかる状況を踏まえ、条約を手直しするための新条約(議定書)がIMO(国際海事機関)にて検討されていましたが(詳細は2009年5月発行のマリンニュース 第185号をご参照ください)、今般、本年4月下旬に開催されたIMOの外交会議で議定書が採択されました。ここに、成立した議定書の概要についてご案内いたします。

2009年

No.188(2009年11月30日)
ロッテルダム条約の成立

新たな国際海上物品運送条約の条約案が国連総会で昨年採択され、本年9月にロッテルダムにおける署名式にて米国など16カ国が署名し「ロッテルダム条約」として成立しました。この条約は20ヶ国が批准してから1年後に発効しますが、署名国は現在21カ国に達していますので、遠くない将来に発効する可能性があります。本件条約の条項の内、特に強化された運送人の責任関係を中心に改正のポイントをご案内いたします。

No.187(2009年6月25日)
イギリスの新しい最高裁判所の設置

イギリスの裁判所の中で、最高裁判所は貴族院(House of Lord)という名称ですが、これは上院議会のことでもあり、「何故、上院議会と最高裁判所が同一なのか」という疑問をもたれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。このような状況を変えるために、今般、司法改革の結果、貴族院から司法機能を分離して、2009年10月から新たに最高裁判所(Supreme Court)が設置されて、発足することになりました。これまでの経緯と新制度の内容についてご紹介します。

No.186(2009年6月16日)
EU(欧州連合)の新たな海上安全対策

EU(欧州連合)は、新たな海上安全の総合的な対策を導入するべく、2004年から審議してきましたが、今般、ようやく結論が出され、2009年3月に欧州議会で”第3次海上安全パッケージ”(通称、”Erika 第IIIパッケージ”)が採択されました。これは7つの安全対策から成るものですが、その中にはわが国海運界にも今後影響を与えるものが含まれています。新パッケージの作成に至る経緯とその概要についてご紹介します。

No.185(2009年5月12日)
HNS 条約を手直しする条約案(議定書)について

HNS条約は1996年にIMO(国際海事機関)で採択され成立しましたが、2009年4月現在、未だ発効していません。それについては、いくつかの理由が指摘されてきました。この問題を克服するために、条約を手直しするための新条約(議定書)を策定する方向で審議され、今般、その原案がまとまりました。2010年の春に開催予定のIMOでの外交会議で結論が出される見込みです。HNS条約の現状と原案の内容についてご紹介します。

2008年

No.184(2008年9月24日)
新しい国際海上物品運送の条約案について-UNCITRAL条約案の採択-

UNCITRAL(国連・国際商取引法委員会)は、新たな国際海上物品運送の条約案を作成する作業を2002年から開始して、6年間にわたって作業部会を設けて検討を行ってきました。今般、2008年6月中旬より開催された同委員会の総会にて審議の結果、最終日(7月3日)に条約案が採択されました。本条約案は2008年、秋の国連総会に提出される予定で、ここで承認される見込みです。本条約案が成立した経緯、その主な内容などについてご紹介します。

No.183(2008年6月16日)
「運輸安全委員会」の発足と海難審判の変革

2008年10月1日より、現行の海難審判庁を「海難審判所」に改組し、現行の航空・鉄道事故調査委員会に新たに船舶事故を含めて「運輸安全委員会」として改組・発足することについては、弊社マリンニュースの第182号(2008年4月4日付)にてご紹介させていただきました。その法律案が2008年4月25日に国会で成立し、5月2日付で公布されました。国会審議の結果、原案について、若干の修正が加えられましたので、その内容についてご紹介します。

No.182(2008年4月4日)
海難事故の調査制度の抜本的な改革-海難審判と新しい「運輸安全委員会」について-

政府は、2008年10月より、現行の海難審判庁を「海難審判所」に改組し、現行の航空・鉄道事故調査委員会に新たに船舶事故を含めて「運輸安全委員会」として改組・発足することを決定し、そのための法律案を今国会に提出しました。国会で承認されれば、10月1日より実施される予定です。この制度改革は船舶事故の事故原因の調査、船員の懲戒に関するもので、今後、関係業界に大きな影響を与えますので、その概要について、ご紹介します。

2007年

No.181(2008年3月11日)
シンガポールにおける法制

International Maritime Centreとして大きく発展しているシンガポールは仲裁などによる紛争解決の場としての地位を高めつつあります。こうした背景をもとにシンガポールの法制を概観します。本号は、シンガポールの大手弁護士事務所であるRajah & Tann のMr. Leong Kah Wah, Partnerからご寄稿いただきました。

No.180(2008年1月23日)
アフリカでの海賊事故が急増しています!

2007年の世界の海賊事件をまとめた報告書が今般、IMB(国際海事局)から発表されました。これによれば、昨年度は海賊の件数が前年より約10%増加し、アフリカでの事件、特にナイジェリアとソマリアでの事件が急増しています。

No.179(2007年8月9日)
STCW条約の見直し

大幅な船腹量増加により深刻な船員不足が懸念されています。こうした状況を背景として、現在、国際海事機関(International Maritime Organization、IMO)でSTCW条約(1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直基準に関する国際条約の1995年改正)の見直しの議論が行われています。

No.178(2007年7月1日)
海難残骸物の除去に関する条約の採択

2007年5月にナイロビ(ケニヤ)において、IMO(国際海事機関)主催の国際会議が開催され、「2007年海難残骸物の除去に関するナイロビ国際条約」(The Nirobi International Convention on the Removal of Wrecks, 2007)が採択されました。従来、領海内の海難残骸物は各国の国内法で対応がなされてきましたが、領海外の海難残骸物の撤去については条約がありませんでした。特に、排他的経済水域(EEZ)内の海難残骸物を沿岸国が正式の権限をもって処置できないとの状況が頻発したため本条約の論議が始まりました。本号ではこの条約の内容を概観します。

No.177(2007年6月1日)
アジア海賊対策地域協力協定

アジアを航行する船舶の安全を確保するために締結されたアジア海賊対策地域協力協定(Regional Cooperation Agreement on Combating Piracy and Armed Robbery against Ships in Asia, 略称ReCAAP)に基づき設立されたアジア海賊対策地域協力協定情報共有センターの事務局長である伊藤嘉章氏よりご寄稿いただきました。

No.176(2007年4月19日)
船客賠償に関する2002年アテネ条約の動向

船客賠償に関するアテネ条約の改定が2002年になされ、賠償額が大幅に引上げられると共に強制保険が導入されました。改定当時、IMO(国際海事機関)の審議の場で、保険者は、「新しい賠償額は保険者の負担能力を超えているので、新スキームは実行不能である」と主張しました。本条約が採択された後も、この問題は未解決のまま残り、将来の発効時に備えてIMOにて解決策が検討されていましたが、IMOの法律委員会は「各国は、本条約を批准する際に同一内容の留保を行うこととする」との決定を行いました。このような留保がなされることは前例がなく、極めて注目されます。

2006年

No.175(2006年12月1日)
事故原因分析手法について

オイルメジャーが中心となっているOCIMF(Oil Companies International Marine Forum)が発表した「Tanker Management and Self Assessment」が海運業界で浸透しつつあります。そこでは、事故原因分析やハザードの認識に関して会社としての確固たる手法を持つことが要求され、そのために外部機関による研修を受けることがベスト・プラクティスとして明示されています。かかる状況下、そうした要求がなされる理由および事故原因分析に関する主な研究内容を概観したいと思います。

No.174(2006年11月9日)
Goal Based New Ship Construction Standardsについて

ナホトカ号、エリカ号、プレスティージ号などの重大事故、海洋汚染事故の発生を契機に船舶の各種規則の見直しが進み、船体関連の基準に関して国際海事機関ではGoal Based New Ship Construction Standardsの審議が進められています。また、これと呼応して国際船級協会では2006年4月に共通構造規則を発効させました。この基準は、本来船体の構造強度だけに関わるものではなく、船体の保守管理なども含めて船体に関する全般的な事項に共通する基準ですが、海運・造船業界に大きな影響を与えるもので、また、そこでとり入れられている「セイフティ・レベル・アプローチ」も安全を達成するための注目すべき手法であり、その動向を概観したいと思います。

No.173(2006年9月1日)
運輸安全マネジメント評価について

本年3月31日に公布された「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律」により、事業者におけるトップから現場まで一丸となった安全マネジメント態勢の構築とその態勢を国が確認する「安全マネジメント評価」の仕組みが導入されました。

No.172(2006年8月3日)
アメリカ油濁法の責任限度額の改正について

「2006年コーストガード及び海上運送法」の成立により、2007年7月11日に1990年アメリカ合衆国油濁法(Oil Pollution Act of 1990, OPA90)の責任限度額に関する規定が改正されました。

No.171(2006年8月3日)
運輸の安全性の向上のための法改正について

国土交通省は、運輸業界でヒューマンエラー等が背景とみられる事故が続発していることから、運輸の安全性の向上をはかるために、鉄道事業法、道路運送法、航空法、海上運送法、内航海運業法等の交通関係12法を改正し、「運輸の安全性の向上のための鉄道事業法等の一部を改正する法律」が2007年3月31日に公布されました。

No.170(2006年6月23日)
海洋汚染防止法の改正について

2000年に成立した有害危険物質(HNS : Hazardous and Noxious Substances)による汚染事故への準備、事故対応と国際協力を内容とする議定書(OPRC-HNS議定書)が近い将来、発効する見込みです。わが国は本議定書に加盟するために、今般、国内法である「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」の改正を行いました。

No.169(2006年5月15日)
国土交通省による「標準内航利用運送約款」の制定について

国土交通省は近年、内航海運事業の透明化および健全な発展を図る目的で各種法改正等を行っており、その一環として昨年、RORO船とコンテナ船による定期航路の内航運送を対象とした「標準内航運送約款」と内航利用運送を対象とした「標準内航利用運送約款」が制定されました。

No.168(2006年5月8日)
船主責任制限法の改正(2006年8月1日施行)について

昨年改正された「船舶の所有者等の責任の制限に関する法律」が2006年8月1日に施行されます。今回の改正は、2004年5月13日に発効した「1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約を改正する1996年議定書」の内容を国内法である船主責任制限法に取り入れるものです。法改正のポイントは「責任限度額が全般的に引き上げられる(約2.4倍)こと」および「旅客の人身損害につき責任の制限を認めない旨の規定が新設されること」です。

No.167(2006年4月21日)
タンカー油濁補償協定(TOPIA 2006)の発効について

2006年2月20日付でタンカー油濁補償協定(TOPIA 2006 : Tanker Oil Pollution Indemnification Agreement 2006)が実施されました。これは、P&Iクラブの中でも有力な13クラブで構成する国際P&Iグループ(IG : International Group)にP&I保険を付保しているタンカー船主相互間の自主協定で、追加基金による補償額の50%を、タンカー船主が負担するものです。

2005年

No.166(2006年2月1日)
"シージャック防止条約"(SUA条約)を改正する議定書の採択について

“シージャック防止条約”の内容を強化するための改正条約案については、IMO(国際海事機関:本部 ロンドン)にて、2002年から審議されていましたが、昨年(2005年)10月に、IMOが主催した外交会議で、新しい議定書が採択されました。この新しい議定書の特徴は、対象とする犯罪に広範な種類のテロ行為が加わったこと、および公海上での臨検が可能になったことです。

No.165(2006年1月16日)
欧州連合(EU)の海上安全パッケージIII(Erika III Package)について

昨年(2005年)11月23日に、EUの欧州委員会は海上安全パッケージIIIの内容を公表しました。海上安全パッケージIIIとは、海上安全に関するEUの法令を補完し、既存の規則を改良するもので、7つの提案から成っています。これはEUとして海上安全のレベルを向上し、船舶による海上汚染事故の発生を防ぐとともに、補償制度を整備したいとの意向があると考えられます。

No.164(2005年12月7日)
(社)日本海運集会所 救助契約書式の改定および「特別補償に関する特約条項」の制定について

今般、社団法人日本海運集会所の救助契約書式が改定され、新たに「特別補償に関する特約条項」が制定されました。また、あわせて本体の救助契約書式も改定されました。

No.163(2005年10月3日)
ソマリア沖での海賊事件に要注意!

アフリカの東部にあるソマリアの沖で、最近、海賊事件が多発しています。IMB(国際海事局)は「ソマリアの東部、北東部を航行する船舶は、海岸から少なくとも150マイル以上離れて航行するよう」勧告しています。同国の現状について、情報をとりまとめました。

No.162(2005年9月5日)
アメリカ油濁法の新たな動向−改正法の制定と新法案の動き−

1989年にアラスカで発生したエクソン・バルデイーズ号油濁事故を契機として制定された1990年アメリカ油濁法は、制定以来、15年が経過しました。その後、昨年8月に、同油濁法を改正する法律が制定されました(同10月に施行)。

No.161(2005年7月21日)
"シージャック防止条約"を強化する新議定書について−その経緯と条約案の概要−

シージャック防止条約を改訂するための議定書の案文が出来ました。IMO(国際海事機関、本部ロンドン)は条約として採択するための外交会議を本年10月に開催する予定です。案文に記載されている主な改訂点は、1)対象とする犯罪に広範な種類のテロ行為を加えること、2)加盟国は対象とする犯罪を行っていると合理的理由がある船舶については、その船舶の旗国の許可を得て、公海上で当該船舶に臨検することが可能になるという二点です。この新議定書が採択されれば、海運界に大きな影響を与えます。

No.160(2005年7月5日)
油濁事故に対する刑事責任の厳格化(EUおよび各国の動向)

今般EU(欧州連合)は大規模な油濁事故が続いたことから、新たに刑事罰を独自に導入する指令を制定して、加盟各国に国内法の制定を指示することとしました。この指令案の内容が船主などの関係者に厳しいものになっていることから、船主業界などは、偶発的な事故による海上汚染の場合にも刑事罰が適用される可能性があり、MARPOL条約(EUの多くの国が加盟している)に違反する、として強く批判しています。

2004年

No.159(2004年12月17日)
タンカー油濁事故の補償に新たに第3層の追加基金

2005年3月3日付で「追加基金の創設についての議定書」が発効し、タンカーの油濁事故による汚染損害の補償については7億5,000万SDR(約12,000億円)の限度額までカバーされることになります。

No.158(2004年11月15日)
外航船へのP&I保険加入の強制化について

2005年3月1日より「船舶油濁損害賠償保障法」によって総トン数100トン以上の国際航海に従事する日本籍船と日本の港に入港する外国籍船に対して、P&I保険の加入が義務付けられることになりました。

No.157(2004年6月18日)
共同海損の新規則「2004年ヨーク・アントワープ規則」の制定

「2004年ヨーク・アントワープ規則」が2004年12月31日以降適用可能となりました。救助料の再清算の廃止、避難港における給食料の除外等といった旧規制からの改正点について紹介しています。

No.156(2004年4月30日)
PRESTIGE号油濁事故の影響「シングル・ハル・タンカーの早期排除へ向けた新たな規制について」

2005年4月5日に発効予定の海洋汚染条約(MARPOL条約)改正規則案の要点であるタンカーへの規制、シングル・ハル・タンカーによる重質油輸送の規則について紹介しています。


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