損害サービスの流れ
共同海損
共同海損とは
船舶が航海に従事する場合、船体・積荷・定期用船者の所有する燃料・後払い運賃などは海上危険に対してその運命を共にする関係にありますので、衝突・座礁・火災・機関故障等の事故に遭遇した場合に共同の安全を目的として支出した救助費やその他のさまざまな余分に生じた費用、および船体・積荷の一部を故意に犠牲にしたための損害は、これらの行為により利益を受けた船舶・積荷・燃料および運賃などで按分して負担するのが公平であるといえましょう。
このように、船体・積荷および運賃などを共同の海上危険から救うために支出された費用や犠牲となった損害を共同海損費用および共同海損犠牲損害といいます。そして、これら共同海損費用や共同海損犠牲損害を、無事に救助された船体・積荷・燃料および運賃などの価額に応じて公平に分担しようとする制度を共同海損(General Average,略称G.A.)と言います。
共同海損には、ヨーク・アントワープ規則(York-Antwerp Rules)という世界的な取り決めがあり、世界中で殆どの共同海損がこの取り決めによって精算されています。1994年ヨーク・アントワープ規則は添付の通りです。
以下、1994年ヨーク・アントワープ規則に即してご説明します。
共同海損の成立要件と主な共同海損費用および損害
ヨーク・アントワープ規則は1890年に成立して以来、時代の流れとともに幾度となく改定されてきておりますが、1994年ヨーク・アントワープ規則のA条には、共同海損が成立するためには、次の4つの要件が必要であると定められています。
- (1)共同の危険が現実に生じていること。
- (2)共同の安全のために為された行為であること。
- (3)故意かつ合理的な行為であること。
- (4)犠牲および支出された費用は異常なものであること。
また、共同海損に認容されうる費用および損害には次のようなものがあります。
- (1)救助業者へ支払われた救助費および曳航費用。
- (2)投荷または強行荷役による積荷の損害。
- (3)船体の強行曳き卸しによる船体・機関の損害。
- (4)積荷の瀬取り・保管・再積み込み費用。
- (5)避難港へ入港するために要した費用。
- (6)航海延長の間に生じた船員の給食料などの船費。
これらの費用は事故の態様に応じて発生しますが、それぞれヨーク・アントワープ規則に照らして認容されるか否かが決められることになります。
共同海損事故が発生した場合にとるべき措置
- (1)事故の連絡
海難が発生した場合は、船長はすみやかに船主に連絡し、船主は保険会社と相談し必要な措置をとることになりますが、共同海損が成立すると判断される場合には次の手配を行います。 - (2)共同海損精算人の選任
共同海損の精算は非常に複雑であり、また公正な第三者が行う必要がありますので、通常は専門の共同海損精算人を起用して精算を委嘱します。共同海損が絡むケースでは、事故発生直後から常に精算人と連絡を取りながら事故対応を進めていくことが後日の精算の際に問題を生じさせないために必要です。世界的な共同海損精算人としてはRichards Hogg Lindley Ltdが有名であり、東京を含む世界中の主要都市に事務所を置いています。また日本では東京マリンクレームサービス(株)が共同海損の精算を行っております。 - (3)共同海損の宣言と必要書類の取り付け
船主は本船が寄港地もしくは最終仕向地に到着する前に、荷主等の共同海損を分担する他の利益に対し事故発生の事実を告げるとともに共同海損を宣言し、共同海損盟約書(Average Bond)、価額申告書(Valuation Form)および積荷等の他の分担利益の保険者が発行する共同海損分担保証状(Letter of Guarantee)または供託金(Cash Deposit)の提供を要求します。これらの書類または供託金は、後日荷主等他の分担利益から共同海損分担額を確実に回収するための保証として要求するものですから、積荷を受荷主に引き渡す前に取り付ける必要があり、提出がない場合には積荷の引き渡しを拒否することになります。共同海損盟約書 (Average Bond)、価額申告書(Valuation Form)および共同海損分担保証状(Letter of Guarantee)については、添付の例文をご参照ください。 - (4)GAサーベイの実施
共同海損がある程度の規模に達すると見込まれる場合には、本船の事故や救助の事情調査・船舶および積荷の損傷状況・損害の原因・損害額の調査など共同海損の精算に必要な事項の調査のために共同海損検査員(GAサーベイヤー)を起用してサーベイを実施します。
共同海損の精算に必要な書類
共同海損の精算には概ね次のような書類が必要となりますので、事故が発生した場合はこれらの書類を揃えておく必要があります。
- (1)海難報告書
- (2)事故てん末報告書
- (3)航海日誌および機関日誌
- (4)サーベイレポート
- (5)船荷証券(Bill of Lading)および積荷目録
- (6)貨物積付図(Stowage Plan)
- (7)積荷仕切状(Invoice)
- (8)運賃明細表
- (9)船価鑑定書
- (10)用船契約書
- (11)支出した諸費用明細書
- (12)乗組員の給食料、諸手当明細書
- (13)共同海損盟約書
- (14)共同海損分担保証状もしくは供託金領収書
保険金のご請求に必要な書類
(詳細につきましては弊社にご確認ください)
保険金をお支払いする際には下記の書類が必要となります。なお、事案によっては他の書類が必要となる場合があります。
- 保険金請求書
- 共同海損精算書
- 海難報告書
MM00-MG01-09015-2009年6月作成